安室奈美恵、平成とともに歩んだ音楽活動を語る 引退の理由にも言及したドキュメンタリーを見て
平成15年以降、音楽配信サービスや無料動画サービスが増え、インターネットが音楽活動の主要となっていく。しかし、安室は“コンサートをしてる自分がいちばん楽しそうだった”とし、インターネットに背を向けてコンサートに専念することに。またMCがないことについて「おしゃべりも苦手だしうまく表現できないので、だったらそこを克服するよりもやめてしまって、コンサートの演出に集中して、“MCなかったね”じゃなくて“楽しかったね”っていう内容のコンサートをすれば、ファンの皆さんは納得してくれるんじゃないか」と明言した。
時代の流れに無理して合わせることなく自分が納得する道を選んだ安室。そんな彼女の背中を押したのは小室だったという。安室は「久しぶりにお会いすることがあったので楽屋にご挨拶したときに“すごいね。がんばってるね”って。“奈美恵ちゃんは今の奈美恵ちゃんのままで”“君にしかできないことを”ってさらっと言ってくださった言葉はすごく嬉しかった。これで間違ってないかもしれないなっていう勇気が湧いたかなって思います」と語った。
そして、平成最後の10年。音楽業界は新たな流れが生まれる。CDの売り上げが落ち込む一方で、現場でしか味わえない“生の音楽”を求める人が増え、コンサートの売り上げが上昇。コンサートに軸足を置いていた安室の活動が、時代の大きな流れとなったのだ。
しかし、安室は2018年に引退。安室は「ファンの皆さんのなかに“いい状態の安室奈美恵”を思い出として残してほしいなって。ひとつのゴール地点はそこだったりしてたので」と引退について話す。さらに「声帯も壊してしまって、不安もあったりはしていたので」と7年前に声帯を壊していたことも明かした。
安室が引退前のコンサートで最後に歌ったのは、小室が16年ぶりに楽曲提供した「How do you feel now?」。同曲を歌った理由について「新しい自分で終わりたかった」と話した。また、これまでの音楽活動について安室は「いろんなことが目まぐるしく流れていった時間を濃厚に過ごして、いろんなことを勉強させてもらって。25年間をやりきったっていうのはありますね、悔いなく。デビューできたことも奇跡だったので、14歳の女の子がグループでデビューして、40歳になるまで歌に携われるなんて本当に思ってなかったので。奇跡だなって、よかったなって、頑張って本当によかったんだなって」と語った。
平成という時代とともに激動の音楽人生を歩んだ安室奈美恵。時代の変化や困難を乗り越えブレることなくステージに立ち続ける姿勢は、多くの女性たちを勇気付けた。同放送は、安室の音楽活動だけでなく、彼女の存在が平成を生きる女性たちにとっての支えであったことも気づかせてくれるものになっていた。
(文=北村奈都樹)