でんぱ組.inc 相沢梨紗&成瀬瑛美が語る、グループの成長とこれから「何かをつなげていける存在に」

でんぱ組.inc、グループの成長とこれから

 でんぱ組.incがニューアルバム『ワレワレハデンパグミインクダ』を1月1日にリリースした。

 同作には浅野いにお×H ZETT Mによる「おやすみポラリスさよならパラレルワールド」から、玉屋2060%による夏の新アンセム「プレシャスサマー!」までのシングル曲に加え、H ZETT Mと再びタッグを組んだ「太陽系観察中生命体」、原田茂幸(Shiggy Jr.)による詞曲にShiggy Jr.メンバーが演奏した「世界が私の味方ならば...」、畑亜貴×小池雅也×ヒャダインで制作された「FD3, DEMPA ROCKET GO!!」、玉屋2060%による「絢爛マイユース」など、今のでんぱ組.incだからこそ表現できる魅力の詰まった12曲が収録されている。

 根本凪(虹のコンキスタドール)と鹿目凛(ex.ベボガ!)加入後の新体制での活動や夢眠ねむの卒業発表など、グループとしても大きな岐路に立った2018年。でんぱ組.incは2019年、どのような思いを持って歩みを進めていくのか。相沢梨紗と成瀬瑛美に話を聞いた。(編集部)

“1年間の宇宙の旅”の報告書みたいなアルバム

ーーでんぱ組.incのニューアルバム『ワレワレハデンパグミインクダ』の、全体のコンセプトから聞かせてください。

成瀬瑛美(以下、成瀬):コンセプトは、2017年の12月30日の大阪城ホールのライブ(『ねぇもう一回きいて?宇宙を救うのはやっぱり、でんぱ組.inc!』)から1年間宇宙の旅に出て、地球に帰って来ましたって報告書みたいなアルバムなんです。その間にリリースした、シングルもいっぱい入ってます。

相沢梨紗(以下、相沢):今回、ジャケットのアートワークをいつもMVを撮ってくださってる志賀匠監督が手がけてくれたんですよ。ジャケットで、(古川)未鈴ちゃんが持ってる缶みたいなのが、アルバムのマスターテープだってことを言ってました。

成瀬:地球に不時着してマスターを守り抜いたみたいな。あと、衣装なんですけど、通称アルティメットセーラー服って呼んでるんです。修行を積んで最強になったものしか着られないってコンセプトで、ついにここでねもちゃん(根本凪)とぺろちゃん(鹿目凛)もアルティメットセーラー服に身を包めたって感動もあります。

ーー1曲目の「ワレワレハデンパグミインクダ」から壮大なオーケストラで幕を開けて、墜落音から2曲目の「ギラメタスでんぱスターズ」が始まるという、ジャケットと音がつながっていてドラマ感がありますね。

成瀬:ハイ。聴いてて、すごく世界観を想像しやすいと思います。

相沢:このジャケット撮影のときに、アルバムタイトルを決める会議になったんですよ。みんなからいろんな案が出て、私の中で、実は宇宙に行ったでんぱ組.incが宇宙人と交代して、宇宙人のでんぱ組.incが帰ってきてるのかも? ってわけわからないって考えが浮かんで、「宇宙人ってワレワレハっていうから、“ワレワレハデンパグミインクダ”ってどうですか?」ってさらっと言ったんです。そしたら、みんないいかもって言ってくれて決まったんです。貢献できてすごくうれしいです。

成瀬:すごくいい!

相沢:あと、でんぱ組.incって、曲の中でも自分たちを主張してきたし、これがでんぱ組.incだ! ってわざわざ言う感じも我々っぽいなと!

ーー確かにそうですね。では、新曲の中から特に気に入ってる曲を挙げてもらえますか。

成瀬:「FD3, DEMPA ROCKET GO!!」(作詞:畑 亜貴/作曲:小池雅也/編曲:前山田健一)ですね。私は秋葉原の音楽文化がすごく好きなんです。サウンド的にも歌詞的にも響くFD(「Future Diver」)シリーズって最初は5人時代、次は(最上)もがちゃん、ピンちゃん(藤咲彩音)が入った6人時代に出して(「FD2〜レゾンデートル大冒険〜」)、今回7人でも出せてうれしいです。

相沢:畑さんの歌詞が、うちらに伝えたいことをさらっと入れてくれるんですよ。

成瀬:好きなフレーズがありすぎる。自分のパートだと、〈「愛だよ!」宇宙では 当たり前だよ〉ってフレーズがすごく好きで、気合いを入れてるので聴いて欲しいです。

相沢:私は、「太陽系観察中生命体」(作詞・前山田健一/作曲・編曲:H ZETT M)がめちゃくちゃ好きです。音もだし、歌詞がめちゃめちゃ好きで最初に聴いたときに泣いちゃったんです。自分が活動していく中で楽しいことが多いんですけど、たまに全然理解できないことが起きたりして、「え?!」ってなる気持ちをすごく代弁してくれてるんです。一番最初のみんなのAメロが、怖いんだけどめちゃよくて。〈歌ったり踊ったりするんだって〉から、〈いじわるとかもするんだって〉〈たくさん嘘もつくんだって〉とか、人間の核心をついてるところをポップに言ってる感じがよくて泣けてきちゃって。でも、自分が泣いてると、〈何故泣いているの?〉って問いが来るから、自分に語りかけちゃうような曲で、ヒャダインさんすごいなって思いました。

ーー「太陽系観察中生命体」は、人とのコミュニケーションの難しさや複雑な感情をソフトに訴えかけるトリッキーなポップさがありますよね。

成瀬:そうなんです。私も、不思議と涙が出てきたんですよ。

相沢:理由がないこととか、きっと世の中にたくさんあると思うんです。SNSとかで発信していくと、それに全部理由をつけなきゃいけない気がしてくるんですよね。でも、別に理由なんてなくていいじゃないかって思える、ちょっとだけ気が楽になれるような曲でめちゃくちゃ好きです。あと私、H ZETT Mさんの音楽がすごく好きで、「おやすみポラリスさよならパラレルワールド」に続いて、また作っていただけたうれしさもありますね。対バンツアーでH ZETTRIOさんと2マンやらせてもらって、でんぱ組.incのライブを知ってもらえたあとに作っていただいた曲というのもあって大好きです。

ーー「太陽系観察中生命体」のMVが、時空が歪んでるような不思議なイメージの作品になりましたが、どんな感想がありますか。

成瀬:私たちが映ってるのに、別の何かに見えました。今までのでんぱ組.incのMVと違うし、面白いかわいい&ちょっと恐怖感を覚えたというか。私は何者ででんぱ組.incは何なんだって深く考え始めてます。

相沢:映画とかドラマとか、何かが始まりそうなワクワク感を感じました。昔の衣装を着てたり、昔の映像が入り込んできたりするんですよ。(夢眠)ねむちゃんが髪が長いのは、ディアステージに入った頃の髪型なんです。

でんぱ組.inc「太陽系観察中生命体」MV

(ここで、でんぱ組.incの音楽ディレクター、映像監督のYGQが説明の補足で登場)

YGQ:ちょっと補足をすると、でんぱ組.incは、今のでんぱ組.incもあるし、宇宙にはそれ以外のいろんなパラレルワールドがあるって発想なんです。ねむちゃんがボブじゃなく髪が長かったかもしれないし、ぺろりんがベボガ!の衣装を着てるけど、でんぱ組.incに入らずずっとベボガ!だった将来もあったかもしれない。逆にえいたそ(成瀬)がボブになってたかもしれないし、未鈴ちゃんが市議会議員になったかもしれないし。そういういろんなパラレルワールドがある中で、今こうして7人でいるでんぱ組.incが一番正解だよねって言いたいなって。ねむちゃんが卒業して、これから先に行くってこととかも全て肯定したいって思いが込められたMVなんです。

相沢:エモい。

成瀬:震える。

ーーいろんな選択肢もあるし、ここから先も変わって行くかもしれないけど、今の全てを肯定するというのはすごいポジティブさがありますね。全ての出来事があって、今があるみたいな。

相沢:うんうん。今まででんぱ組.incのライブを1回しか見たことないって人もいっぱいいると思うけど、でも、そういう人がいなかったら今がないと思うんですよ。それくらい、人の関わり方ってすごいものだと思うんです。でんぱ組.incを作ってきたのは、1分1秒でもでんぱ組.incのことを考えてくれた人全員なので、ほんとに全ての人にありがとうって気持ちしかないんです。

成瀬:今このインタビューを読んでくれてる君もだー! 世の中の全てにありがとうですよ。

(再びYGQが登場)

YGQ:もう1個言うと、このMVは「ギラメタスでんぱスターズ」の歌詞からつながってるんですよ。「ギラメタスでんぱスターズ」の1番の〈バタフライエフェクトの ミルフィーユで いま今 行けやしない パラレルワールド って意味ないし〉ってところなんですけど、バタフライエフェクトって些細なひとつひとつの積み重ねが大きな出来事につながるって言葉で、これまでの積み重ねで今でんぱ組.incができてるっていうMVでもあるんです。

ーー2人の話とつながりましたね。

相沢:お〜!

成瀬:うわーゾクゾクする。

感情を“歌”に引っ張り出された

相沢梨紗

ーーでは、他の新曲にも触れていきましょう。「世界が私の味方ならば…」は、Shiggy Jr.の原田茂幸さんが作詞作曲、釣 俊輔さんが編曲したキラキラしたピアノポップチューンです。

成瀬:これ、歌っててちょー気持ちいいです。

相沢:キュンとしますね。Shiggy Jr.のボーカルの池田智子さんが、でんぱ組.inc大好きで、噂によるとねむきゅん推しらしいんですよ。ハッピーな曲で、歌詞がいつもよりもナチュラルな感じなんです。私、歌詞を見ると、最初の武道館をやったあとに、帰って家でひとりでカップラーメンを食べてたのを思い出すんです(笑)。

ーー歌詞には、武道館もカップラーメンも1ミリも出てこないですが、なぜですかね?

相沢:すごいことができたけど、やっぱ家に帰るとカップラーメン食べてるっていう、ホッとしてじわっとした感じが歌詞の雰囲気と近いものを感じたのかもしれないです(笑)。

成瀬:私もあのとき、家に帰ってカップラーメン食べました(笑)。あと、この歌詞のリンクがすごくて、〈好きな漫画を大人買いしてみたり それなりに日々を楽しんでいるけど 気付いたらうつむいたり〉って、これ私かなって思いました(笑)。なので、この曲はキャラを作らずに素の感じで歌いました。

ーーそして、アルバムのラストチューン「絢爛マイユース」は、玉屋2060%さんの手によるシンセポップナンバーです。

成瀬:これは、卒業がテーマになってるんです。新しい道に向かう人たちに、ハッピーな未来をどうぞって明るく送り出す曲ですね。しんみりじゃなく、ハッピーって感じです。

相沢:もちろん、ねむの卒業とか頭ではわかってるけど、こんなにどストレートに歌詞で言われると改めて思い出します。でんぱ組.incは素直じゃない人が多いので、悲しいことを悲しいと言えない人たちだけど感情を歌で引っ張り出されるなって。

成瀬:ずっとアルバムも、“ハッピーでんぱ組!”って感じだけど、この曲の最後の6行で素の本音がそっと出てアルバムが閉まるってところもニクいですね。

ーー〈今まで過ごした全部が 私の宝〉で終わるわけですからね。

成瀬:もー、そんなストレートな言葉、涙を流すことしかできない。

相沢:卒業ソングとしてみなさんが歌うには少し難しい曲かもしれないけど、でんぱ組.incのファンなら大丈夫かもしれないし(笑)。みんなの大事なときの1曲になったらいいなと思いますね。

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