はるまきごはんが語る、表現活動で大事なこと「自分を好きな人にどれだけいいものを伝えられるか」

はるまきごはんが語る、表現への思い

世界観を表現するための音楽

ーーそしていよいよ、2年ぶりのアルバム作品『ネオドリームトラベラー』が完成しました。

はるまき: 1stアルバムのテーマは“宇宙”で、今回は“夢”でいこうと決めていました。流れとしては、1stアルバムと2ndアルバムの間にアコースティックアルバム『SLEEP SHEEP SUNROOM』を出していて。あれが“眠る”っていうテーマだったんです。眠ったあとに夢を見るっていう繋がりがいいなって。

ーーはるまきさんにとって、ボーカロイドってどんな存在となるのですか? 

はるまき:家にいるアンドロイドみたいな感覚ですかね。

ーーなるほど。作品世界観への影響もありそうですよね。そして、1曲目が再生回数が伸びまくっている「メルティランドナイトメア」。

はるまき:第二のターニングポイントというか。「銀河録」でみなさんに知ってもらって、さらに驚いてくれたのが「メルティランドナイトメア」でした。

ーー世界観を生み出すストーリーテリングが素晴らしいから、歌詞などリスナーによっていろんな受け取り方ができますよね。それって、漫画家を目指していたからという影響はありますか?

はるまき:ありますね。僕がやりたいのは世界観を表現するための音楽という感じなんで。ミュージシャンではあるけど、映画監督や漫画家、作家みたいな立ち位置から自分の作品を見守っているような。

ーーイラストの雰囲気的にはメルヘンチックな側面がありますけど、物語展開は、けっこうエグイ曲もあって。ファンタジーを描きつつも、人間の本質へと結びつけるようなメッセージも感じられたり。1曲において、情報量が多いのがはるまきさんの特徴だと思います。

はるまき:そうかもしれないですね。歌詞は、切ない感情や悲しい感情を軸にして、それに付随する形でギャップある可愛さで包むのが好きなんですよ。それに、宇宙とか壮大なもののなかにある日常生活みたいなのが好きで。そのうえで、自分のその時々で伝えたいことを最近は物語として組み上げていく曲が多いですね。昔と比べて徐々に変わってきています。昔は叫びをそのまま出して、バレないように歌詞で包む感じだったんです。最近は、自分を俯瞰的にみて、客観視する歌詞の書き方に変わりました。1stと2ndで明確に分かれていますね。

メルティランドナイトメア / はるまきごはん feat.初音ミク - Melty Land Nightmare

ーー「アスター」におけるSFチックでサスペンス要素もある物語展開も素晴らしいですよね。

はるまき:「アスター」は特に物語性が強いですね。明確な答えを用意していて作った曲です。

ーーゲーム世界を現実のように描かれていて。この曲は主人公はアンドロイドですよね。

はるまき:僕は人間じゃないものが心を持っているというテーマが好きで。「アスター」はまさしくそれなんです。仮想世界の曲なんですね。ちょうど曲を作っていた頃に、バーチャルYouTuberが流行って僕がそんなマインドになっていたんです。人間自体のやりとりより、人間と人間じゃないもののやりとりのほうが僕は歌詞にしやすくて。人間同士だとお互いの意思が強すぎて眩しすぎるというか。機械って純粋無垢じゃないですか。片方をそう描くことで、歌詞が整っていくイメージですね。

ーーそれこそ、物語を深読みできるというか。

はるまき:「アスター」を聴いて、それぞれの解釈で楽しんでくれたら嬉しいですね。ちなみに「アスター」は明確な答えを曲に書いてるんです。答えを書いてない曲も多いんですけどね。基本的に僕は、他人が自分の曲を聴いて解釈するというプロセス自体が好きなんです。それを聞いたり読むのも好きですね。

ーー今作では、そらるさんに提供された楽曲も収録されています。ボカロによるセルフカバーはどんな感覚なのでしょうか?

はるまき:そらるさんへ提供した曲「グッドナイトフォール」は、自分の思い出あるゲームをテーマに書き下ろしました。僕のなかで、ボカロ版はカバーという位置付けですね。

ーーSouさんへ提供した「世界が終わるのよ」でも同じような感覚ですか?

はるまき:そうですね。今回、あれも今回ボカロでカバーしたというイメージで。あの曲は書き下ろし当時、話し合いながら、お互いの好きな共通項をやれたらと思っていたんですね。元が、けっこう楽しくやれたらいいねっていうコンセプトのアルバムだったんで。だから、「お互い難しいことを考えずに楽しく作ろう」って好き勝手やったって感じです。作家としてやった感覚も少なかったですね。

ーー2019年3月2日には、はるまきさんのMVの世界観を広げる映像演出があるという初のワンマンライブ『ドリームシネマ』が行われますね。楽しみです。

はるまき:同人アーティストってそんなにライブって多くないんです。むしろ、やらない人も多いんですよね。僕も北海道に住んでいたこともあって、そんなにライブに行かない人だったんです。でも、東京に来てからいろんなライブを観るようになって考え方が少し変わって、僕の音楽を聴いてくれる人にはライブを体験してもらいたいなって。ライブ独特の空気感、圧倒感を知らない人もいるかもしれないと思ってやることを決めました。

ーーしかも、人気クリエイターであるWabokuさんと映像でコラボレーションされるそうですね。

はるまき:はい。僕の場合ライブっていうものは、僕自体をフィーチャーするものではないんです。ライブ自体をひとつの映像作品のように楽しんでもらえたらなと。僕自身も映像の一部みたいな感覚で。大きなステージに大きな音で美しい映像が流れているという体験は、非日常を味わえますよね。自分の演奏と歌と音響と映像で伝えたいと思ってたんです。そんな意味で、映像をしっかり出せる箱にしようと思って白銀高輪のselene b2を選びました。

ーーなぜその会場で?

はるまき:ここは、ステージにLEDが常設で、側面にもLEDの板が2枚あって、映像演出を鮮明に表現できるんです。それと、インターネットで観る映像とは一味違う体験にしたいと思ってWabokuさんとコラボすることになりました。昔、Wabokuさんと遊んだときに、僕がキャラを書いてWabokuさんが背景を描くみたいな遊びでコラボ絵をスケッチブックに描いたことがあって。ああいうことをやれたら面白いかもしれないと思って。シンプルに、僕自身興味があったし、Wabokuさんも映像作家として盛り上がっている方なので、タイミングよく実現した感じですね。

ーーそれは楽しみですね。アルバムの世界観がより立体的になるというか。より、アルバムを楽しめるライブ体験になりそうです。では最後に、アルバム収録曲で「この曲はちゃんと語りたい!」というナンバーはありますか?

はるまき:気に入ってるのは「アンサー」って曲。サビや歌詞とか。〈僕は世界を作る〉とか〈興味がないならそれでも良い〉とか、今の僕の考え方にピタッとハマったフレーズで。自分は、自分が前に出るのが好きじゃないんです。でも、自分が作る世界観は知ってほしかった。嫌われたくないっていう感情が人間って絶対にあるじゃないですか。でも最近は、自分のことを好きじゃない人がいるのは当たり前で、むしろ自分を好きな人にどれだけいいものを伝えられるかが大事だって気が付いて。自分が時間を割くなら絶対にそこだよなって。そんな想いが歌詞になっています。

ーーそれでタイトルも「アンサー」なんですね。

はるまき:はい。あとは「Dreaming Gate」ってインスト曲があるんです。僕は、アンビエントがすごい好きで。1stにも「Galax Gate」っていうアンビエントなインスト曲があって。僕は、この枠がめっちゃ好きなんです。アルバムとかにインスト枠があるアーティストってけっこういるじゃないですか。n-bunaさんだったら「夜祭前に」とか。僕の場合は、ターニングポイントになった曲の前に絶対にインストを挟むと決めていて。だから「Galax Gate」は「銀河録」の前、「Dreaming Gate」は「ドリームレス・ドリームス」の前に入ってるんです。すごい気に入ってますね。まぁ、アルバムを是非聴いてほしいです。話過ぎてもあれなんで、これくらいにしておきます。

ーー今回、初回限定盤に設定資料集+画集をつけられていて感動しました。ファンだったら絶対に嬉しいですから。でも、これって作るのは大変でしたよね?

はるまき:こういう設定資料集みたいな形で自分の思ってることを書くのは初めてたんだったんで、どこまでしっかり書くか悩んだんですけど。これも歌詞の一部だと割り切って書いてみました。自分の頭のなかにあるものをそのまま出したというか。

ーー機材のデータも入っていたり。

はるまき:そうですね、少しだけ。機材や使っているプラグインを簡単に書いてみました。僕みたいにDTMで音楽を完結させる人って、わりと同人には多いと思うんです。だからこそ、僕の判断で載せられるというか。僕も誰が何を使っているか気になタイプですし。DTMや音楽をやっている方へ向けています。

ーーはるまきさんに憧れてるクリエイターだったらとても嬉しいですよね。

はるまき:「プラグイン、何を使ってるんですか?」って聞かれますから。そんな質問に答える意味もあります。

ーーなるほど。作品であり、次世代にも継承するバトンでもあるんですね。

はるまき:そうですね。僕もいろいろと受け取ってきましたので。

(取材・文=ふくりゅう(音楽コンシェルジュ) )

■リリース情報
『ネオドリームトラベラー』
発売:2018年12月26日(水)
初回限定盤(CD+DVD+アートブック付) ¥3,000(税抜)
通常盤(CD) ¥2,000(税抜)

[CD]
01.メルティランドナイトメア
02.コバルトメモリーズ
03.セブンティーナ
04.八月のレイニー
05.アスター
06.フロムヴォイジャー
07.スチールワンダー
08.きっと夢の中ね
09.Dreaming Gate(instrumental)
10.ドリームレス・ドリームス
11.グッドナイトフォール
12.アンサー
13.世界が終わるのよ
14.地球をあげる
15.セブンティーナ(セルフカバー)
Tr01~14 : ボーカロイド歌唱 Tr15 : はるまきごはん歌唱

[初回盤特典 Music Video DVD]
01.ドリームレス・ドリームス
02.コバルトメモリーズ
03.メルティランドナイトメア
04.地球をあげる
05.アスター
06.セブンティーナ
07.おまけ映像

[初回盤特典アートブック(世界観設定資料&画集)]

■ライブ情報
『はるまきごはん ワンマンライブ2019』
2019年
3月2日(土) 東京・白金高輪SELENE b2
チケットなど詳細は以下特設サイトより

『ネオドリームトラベラー』特設サイト
オフィシャルサイト

 

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