『温泉むすめ』プロデューサー橋本竜が語る、メディアミックスと地方活性化における“音楽”の重要性

『温泉むすめ』Pが語る、音楽への情熱

自主レーベルならではのスピード感

ーーそして今年、『温泉むすめ』は新レーベルの<Jewelry Box Records>を立ち上げました。ここにきて自主レーベルを発足した理由は?

橋本:メジャーレーベルにはメジャーの良さがあると思うんですが、いろんなことに素早く対応するためには小回りの利く自主レーベルがよいんじゃないかということで、新レーベルを立ち上げたんです。

ーーサブスクリプションサービスや配信が主流になりつつある今の時代に即した部分もあるかもしれませんね。

橋本:そうだと思います。先日『温泉むすめ新聞』(『温泉むすめ』とスポーツ報知によるコラボ企画)にも書かせていただきましたが、道後温泉の観光親善大使に内定したのが今年の7月下旬ごろだったんですね。その時に就任を記念した新曲を作りたいと思って、札幌イベント(8月5日に開催された『SPECIAL YUKEMURI FESTA in 札幌』)で急遽発表したんですよ。そういう動きは今の体制だからできることだと思いますし、道後温泉の方々にもすごく喜んでいただいたんですね。

【試聴動画】願いキラキラきらり(温泉むすめソロプロジェクト第一弾)

ーーこの12月には同レーベルからの第1弾リリースとして、『温泉むすめ』初のソロプロジェクトとなる大手町梨稟(CV:楠木ともり)がシングル『Passionate Journey』でデビューします。これまでグループ展開を行ってきたなか、今回はなぜソロプロジェクトなのでしょうか?

橋本:理由はいくつかありますが、温泉むすめたちが競い合う「アイドルグランプリ」を行うにあたって「私はソロで頂点をめざす!」という子がいてもおもしろいと思ったんです。その象徴が大手町梨稟というキャラクターだったんですね。

 大手町梨稟は東京で唯一の『温泉むすめ』です。温泉というと地方のイメージが強いですが、その中で東京の『温泉むすめ』に何をさせるべきかを考えた時に、今回の「Passionate Journey」という楽曲にも表れているように彼女は旅好きという設定なので、彼女が旅をして日本各地の温泉地と温泉むすめに触れあうことで、その良さを「東京が一番だけど、地方も悪くないわね」とツンデレ気味に紹介する……いわば第三者視点でスピーカー代わりの役割を担ってくれたらと思ったんです。そこで実際に東京生まれ東京育ちの楠木さんを選んだという理由もありますし、ソロの方が各地域でライブも行いやすいと思いまして。

 これは先ほどお話した実験の側面も強くて、彼女がソロでどこまでライブを盛り上げることができるのか、他のグループと一緒にステージに立った時にどんなシナジーが生まれるのか、ということを楠木さんのポテンシャルに賭けたところはありますね。ただ、彼女はその期待に応えてくれると思っています。

『SPECIAL YUKEMURI FESTA in 松山』のライブ模様

ーーお話を聞いていると、キャラクターの設定と担当声優さん自身の特性を考えた上で、しっかりと計画を練っているんですね。

橋本:『温泉むすめ』の一人一人が地域を代表する存在となるので、それぞれのキャラをどう絡めていけばおもしろくなるかは常に考えてますね。それと我々がキャラクターを作った時に「全然地元っぽくない」と言われてしまうと、プロジェクト自体が潰えてしまうので、「なぜこのようなキャラクターなんですか?」と聞かれた時にしっかりと説明できるような背景と理由は全てのキャラクターに設定しています。

ーーそして大手町梨稟と同時にデビューするのが、いわきあろは(CV:大坪由佳)、万座千斗星(CV:井澤美香子)、定山渓泉美(CV:小野早稀)の3人による新ユニット、OH YOU LADY?です。このユニットは「昭和」というコンセプトを掲げていますね。

橋本:はい。OH YOU LADY?は、まず「温泉むすめたちに何をさせたいか?」というところから出発してるんです。温泉むすめコンテンツに対する反応として、若い方には受け入れていただけるんですが、ご年配の方にはどういうコンテンツなのかを理解していただけないことが多いんです。なおかつ、地方にはライブのできる会場がない場合もありまして、その場合はカラオケ設備しかない温泉旅館の宴会場でライブや興行を行わなくてはならない可能性がある。そういう時に、例えばおニャン子クラブのような昔のアイドル風のコンセプトの曲であれば、年配の方にも聴き馴染みがあって受け入れられるんじゃないかと思ったんです。なので「昭和歌謡」を歌うことでより地域の方々に温泉むすめコンテンツを理解していただければ、ということで結成したのがOH YOU LADY?なんです。

【試聴動画】レイニーボーイフレンド(温泉むすめ 新グループ「OH YOU LADY?」)

ーー実際にデビューシングルの表題曲「レイニーボーイフレンド」は、80年代のアイドル歌謡曲のような懐かしさがありますね。

橋本:そしてその延長にあるのが、カップリング曲の「ぽかぽか音頭」なんです。例えキャラクターソングという概念がわからない方であっても、「音頭」であれば全国共通でお祭りの時に流れるものなので、日本人的には聴けば高揚するものがあるでしょうし、踊りも簡単なので、ライブでいろんな人を巻き込んで盛り上がれると思ったんです。それが今の『温泉むすめ』に一番必要とされる部分だと考えたんです。彼女たちにはこれからカバー曲も歌ってもらう予定で、例えばキャンディーズや小泉今日子さんの曲を地域で歌えば懐かしさからコンテンツを受け入れてもらえると思うんです。

ーーたしかに「音頭」は温泉地の雰囲気にもぴったりはまりそうです。

橋本:今は我々が自主的に各地でイベントを開催していますが、将来的には地方の方々から呼んでいただくことが目的です。実際に地方のお祭りに温泉むすめたちが呼ばれて、それを目当てにファンも集まって、地元の音頭がかかるなかで「ぽかぽか音頭」もかけていただいて、老若男女がみんな一緒に盛り上がればいいなあと思ってます。

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