クイーンのDNAは時代を越えて受け継がれる 岡崎体育、ビッケブランカら日本アーティストへの影響
堀込泰行
実兄である堀込高樹とのバンド、キリンジでデビューし、2013年の脱退後は精力的にソロ活動を続けている堀込泰行も、クイーンフォロワーのひとり。中学時代に聞いたクイーンを音楽の原体験と語っている。曰く「魔法的なサウンドやコーラスの重なり。音楽なのに頭の中に抽象的な映像のようなものが浮かぶ。そんな体験をしたのは初めてだった」(参考:音楽ナタリー 「ボヘミアン・ラプソディ特集」)。また、クイーンと出会ってから、どんなジャンルでも積極的に音楽を楽しむことができるようになったとも。ソロとしてリリースした『GOOD VIBRATIONS』ではD.A.N.やtofubeatsといったジャンルも世代も違うアーティストとコラボし、最新アルバム『What A Wonderful World』では蔦谷好位置、田中潤をプロデューサーとして迎えるなど、新しいものを取り入れて自身と自身の音楽を更新していく堀込泰行。良質なポップミュージックを紡ぎ、同業者からの信頼も厚い彼の創作の原点にもまたクイーンがいる。
THE ALFEE
クイーンのムーブメントをリアルタイムで享受し、その音楽性を自らの中にも取り込んでしまったアーティストと言えばTHE ALFEEだ。特にメンバーの桜井賢は、ジョン・ディーコンに憧れてベーシストを目指した経緯の持ち主。かつてライブで「We Will Rock You」や「We Are The Champions」といった楽曲のカバーを披露し、ファンを熱狂させたこともあった。例えば1996年にリリースされたオリジナルアルバム『LOVE』収録曲「CAN’T STOP LOVE」に見える、THE ALFEEの代名詞とも言える重層的なコーラスやシンフォニックなサウンドは、まさに日本版「クイーン」と言っても過言ではないほど。フォーク、ハードロック、プログレとあらゆるジャンルに精通し、独自の世界観を築いている点もクイーン的と言える。
サカナクション
現代の日本の音楽シーンの最先端をいくバンド、サカナクションにもクイーンの影響を受けて制作された楽曲がある。2008年に発売されたアルバム『NIGHT FISHING』に収録されている1曲で、タイトルは「ナイトフィッシングイズグッド」。ボーカルの山口一郎いわく「クイーンっぽい曲を作ろうと書き始めた曲」だそうで、「Bohemian Rhapsody」へのオマージュがそこかしこに表れている。一部同じギターリフを使用しているほか、バラードからいきなりのダンスミュージックへの転調、オペラティックな合唱パートと変化に富んだ6分半は、まさに「Bohemian Rhapsody」そのもの。曲とともにストーリーが進行するような歌詞にも注目したい。
映画の中では「Bohemian Rhapsody」や「We Will Rock You」がどのように誕生したか、楽曲制作の裏側に迫る描写もある。フレディの類稀な音楽センスにメンバーそれぞれの個性が同調し、曲が生まれ、それがライブで観客を魅了していく様は鳥肌が立つシーンのひとつだ。音楽作りに対する自由な発想、そしてそこから発せられるエモーショナルで唯一無二のサウンド。クイーンの多彩な魅力は、今回の映画で改めて多くの人の知るところとなったであろう。そしてそれは今、彼らの影響を受けたアーティストたちによって、ここ日本でも脈々と受け継がれている。おそらく今後も多くのフォロワーを生みながら、永遠に愛され続けていく違いない。
■渡部あきこ
編集者/フリーライター。映画、アニメ、漫画、ゲーム、音楽などカルチャー全般から旅、日本酒、伝統文化まで幅広く執筆。福島県在住。
■配信情報
「まっしろ」配信は以下より
日本テレビ系 水曜ドラマ『獣になれない私たち』挿入歌
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