ザ・コレクターズ 加藤ひさし&古市コータローが語る、結成から色褪せぬモッズ精神と青春時代の感覚

ザ・コレクターズ、不変のモッズ精神

俺の中のモッズはロックでしかないんですよ(加藤)

『THE COLLECTORS~さらば青春の新宿JAM~』 予告編

ーー映画『THE COLLECTORS~さらば青春の新宿JAM~』の中で加藤さんがおっしゃっていたことで、モッズってだんだんR&Bの方向にシフトしていく、でも俺たちはそっちに行かなかったから通っぽい連中からはバカにされていた、と。まさにポール・ウェラーですよね。The Jam後期、The Style Councilと、R&B、ソウルな方向に行く。「ああ、そういうふうに行っちゃうんだあ」と当時も思ってました?

加藤:僕はね。

古市:いや、僕は全然(笑)。むしろジャム後期からスタイル・カウンシルのあたりが一番好きだから。

加藤:映画の中でも語っていますけど、モッズが復活した時にネオモッズっていうムーブメントが生まれたんです。1979年の話になるんですけど、1977年にパンクが出て来て、新しい息吹が出て来る中でのモッズのリバイバルですから。60年代のモッズとはちょっと背景が違うんですよ。パンクロックの影響を多大に受けたモッズなんですよ、ネオモッズって。そこがリアルタイムだから、俺の中のモッズはロックでしかないんですよ。ソウルでもR&Bでもない。それは過去にあったモッズの連中が聴いていたもので。俺はネオモッズなんで、それしかモッズじゃないんですよ。俺の4つ下のコータローくんは、もっと寛容に、スタイル・カウンシルの、R&Bっぽいものとかソウルっぽいものも受け入れられるんですよ。でもひとつ言わせてもらうと、ポール・ウェラーも実はジャムをやりながらモッズを研究してR&Bの方に行くからね。彼だって最初からR&Bとかソウルをよく知ってたわけじゃない。そうだったらジャムなんかやってないと思うよ。

古市:ジャムは、最初はビートルズのコピーみたいなのをやってて、ピストルズ(Sex Pistols)を観てああなったんでしょ。

加藤:そうそう。その頃モッズをやる連中は、パンクじゃなきゃダメだったの。パンク・モッズがいちばんかっこよかった。俺はその洗礼を受けたから永遠にそこですよ。ジャムの来日を観に行って、モッズになるわけだから。スタイル・カウンシルでいきなりポール・ウェラーがギターまで置いちゃって、スタンドボーカルになって。本当に信じられないよ、魂売ったのかよ、短パンまで穿きやがってって感じだよ(笑)。

ーーでも変わっていく方が、音楽家としては創作しやすいかもしれないですよね。

加藤:そうだと思いますよ。だって、同じようなスタイルで新しく曲を書いて「変わったね」って思われるよりも、サウンドの方向性が変わった方が、「なんかあいつら進化してんじゃねえ?」みたいに思われるよね?

古市:ポール・ウェラーが偉かったのは、ヒップだったよね。目のつけどころが早くて。

加藤:そうだね。彼はスタイル・カウンシルをやって、それを時代の先端のものとして流行らせたから。彼のやってることの方が偉いし、彼のやってることの方が本当は全然モッズ道なんだよ。でも俺みたいに、最初に出会ったモッズの一発目のパンチがパンクロックだったりすると、永遠にそいつが一番かっこよく見えちゃう、というだけの話で。

ーーそうやって同じ音楽スタイルで、最初に受けた衝撃に戻ろうとしながら30年以上続けているのって、コレクターズとヒロト&マーシー(甲本ヒロトと真島昌利)くらいですよね。なぜそれが可能なんでしょうか? と聞きたかったんですけど、毎回相当苦しんでるという。

加藤:めっちゃめちゃ苦しいですよ! どんどん苦しくなるし。次のアルバムはもっと苦しくなりますよ。

古市:でも、今のリーダーの話と近いことで言えば、俺もやっぱピストルズで本気になった男だから。永久に「アナーキー・イン・ザ・UK」みたいなギターを弾いていたいんですよ、本当は。いちばん得意なのはそこだと思うし、やっぱその気分は、消そうにも絶対消えないね。明日からエリック・クラプトン専門になりました、っていうふうにはいけない。

武道館で客席を眺めて「ああ、ちょうどいいなあ」と思った(加藤)

ーー日本武道館からここまでの1年半って、早かったですか。

加藤:早いですよ。武道館の準備を始めてから以降が、もう全部早かった。

古市:準備から考えると、もう3年だもんね。

加藤:だからこの3年ぐらいは本当に早いし、本当に忙しいし。どれもこれもしくじれない感じがすごくあって。映画もしくじれないし、その前は武道館もしくじれなかったし、もちろんこのニューアルバムもしくじれないし、前作『Roll Up The Collectors』の時もそうだったから。精神的にはわりと……キツいっちゃキツいのかなあ。でもなんかもう、そのキツさにも慣れちゃってるっていう。

古市:そうだと思うよ。

加藤:なんて言ったらいいのかなあ……キツイのは楽しくはないよ、決して。

ーー(笑)。

加藤:全然楽しくはないんだけど、やらなきゃ前に進めないし。なんとも言えない気持ちで3年ぐらい過ごしてる気がするなあ。

ーー僕も日本武道館公演を観たんですけど、それ以外のベテランバンドが初めてやった武道館にも行ってるんですね。フラワーカンパニーズとか、Theピーズとか。でもコレクターズの武道館が違ったのは、ライブが終わった時に「達成感が全然ない! 一区切りついた感じがしない!」という。

古市:まあ、次のツアーとか、今やってるクアトロ(渋谷クラブクアトロ)のマンスリーライブとか、もう決まってましたからね。

加藤:あと、不思議なことに、武道館に立った時に自分が熱望して来たところに今立ってる、やっとここまで来たみたいなのを、全然、俺は感じなかったんですよ。むしろ客席を眺めて「あ、ちょうどいいなあ」と思った。「2065」とか歌ってて、「ああ、これぐらいの場所じゃないと、この曲に合わないよ」とか、「このハコのキャパ、ちょうどいい」と思ったの。

ーーMCの第一声が「やっと身の丈に合ったところでやれたぜ」でしたけどーー。

加藤:いや、ほんとに! ほんとに、不思議とそう思ったの。コレクターズって、これぐらいないと伝わんないよなと思った。

古市:ライブハウスでも、実は武道館と同じ内容のステージをやってるわけですよ。そういうところでやってて、「もっとスケールほしいよな」っていう話をいつもしてたわけ。それをやれて、ほんとに「ちょうどいいな」って思えたし。終わった時も、「またやれたらいいな」って。

加藤:「やったね、ここまでがんばったね」みたいなのは、全然ーー。

古市:なかった。終わって速攻帰ったしね。

加藤:俺なんかベスパで来てて、雨降って来たから合羽着て帰ったんだから(笑)。

古市:打ち上げもやんないでね。

加藤:とは言え、武道館はプランニングから考えると3年ぐらいかかったわけだから。終わったあとは、ちょっとロスみたいなのはありましたよ。でかい目標終わっちゃって、次どこにセッティングしようかな、みたいなのは多少はあったけど。

ーーそういう大きな目標は常に必要?

加藤:絶対必要。おもしろがるために、自分たちが。だから、「東京ドーム2Daysやりましょう」とか言わないと。バンドが「小さいライブハウスでも食えるんだったら、もうこれでいいじゃん」みたいになっちゃうから。

古市:今も、まだ確定ではないけど、目標はあるんですよ。プランはある。

加藤:でかい目標がね。それはやっていかなきゃダメだと思う、バンドは。

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