Zeebraなど出演で話題の都市型フェスCMはどう生まれた? 映像作家・山田智和インタビュー

映像作家、山田智和インタビュー

CMとMVの境界線を常に超えたいと思っている

ーーCMに登場するアーティストに関しては?

山田:フェスに出演するアーティストにCMのコンセプトをお伝えして、趣旨に賛同していただける方を募集させてもらいました。かなりタイトな進行だったので、事前にロケハンして、ビデオコンテも作って、あとは出演してもらえるアーティストのスケジュールを調整しながらパズルのように組み込んで。当初は「出てもらえるアーティストが3組になるのか10組になるのかわからない」という状況だったんですけど、チームの空気がいいときって、上手くいくものなんですよね。

ーーすごく自由度が高い現場だったんですね。出演しているアーティストからも、撮影を楽しんでいる雰囲気が伝わってきました。

山田:みなさんこの企画に賛同してくれていたので、すごくフラットに撮影に臨んでくれて。スクランブル交差点の真ん中や駅前で撮影するって、なかなかないですからね。ゲリラ的な撮影だったから緊張感もあったし、シビれる場面もありました。なかでもZeebraさんの撮影は印象に残ってますね。撮影のときに、急遽「音楽って誰のものだっけ?」というセリフを言ってもらったんです。そのときにチーム全体が「CMはここから始めよう」というところで一致したんですよね。当初は街の人の声からスタートするアイデアもあったんですが、そうじゃなくて、Zeebraさんの言葉で始めるべきだなって。それだけものを背負っているアーティストの言葉で始めたいなって。

ーーフェスのCMという枠を超えた、音楽シーン全体の提言に溢れた映像作品ですよね。

山田:これも個人的な意見なんですが、CMとMVの境界線はなくなるだろうし、常にそこを超えたいと思っていて。映像というよりも、MVとCMの境界を超えた、その構造自体がおもしろいんですよね。CMに出ている“ゆるふわギャング”を見て「このカップル、何だ?」と気になってMVを見ることだってあるだろうし。企業のCMと楽曲のタイアップも、クリエイションが上手くいけば、商品のイメージを借りたMVとして成立するはずですから。この先はさらに媒体は関係なくなるというか、広告、MV、ドラマなどの境界もなくなると思っていて。僕はいまのところMVとCMがメインで、ドラマを作ったり、写真をやったりしてますけど、先に“やりたいこと”“伝えたいメッセージ”があるんですよ。その後“それをどのメディアに落とし込むか”という順番なんです。たとえば音楽を伝えることが目的だとしたら、MVではなくて、イベントのほうがいいかもしれない。MVを撮ってる立場で、こんなこと言うのもどうかもと思いますけど(笑)。

ーー(笑)。先に表現のメディアを決めるのではなく、伝えたいメッセージがもっとも効果的に届く手段を選ぶと。

山田:やりたいことを実現するための手段として映像を使うほうが健康的というか。僕が「この人はおもしろいな」と思う人も、いろんなことをやってることが多いんです。たとえば役者をやりながら脚本を書いたり、映画を撮ったり、音楽を作ったり。フォーマットに捉われず、表現方法をフレキシブルに考えるということですよね。職人的なクリエイターも素晴らしいし、リスペクトもしていますが、僕の場合は、それが窮屈なんです。いろいろな表現方法を持っていると「何をやってるかわからない」と言われる不安もあるんですが、自分にはそのほうが合ってるのかなと。もちろん、いまも将来も軸は映像ですし、その表現をさらに突き詰めたいという気持ちもあって。その両軸があるのが楽しいんでしょうね。

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