「田中秀臣の創造的破壊」第9回
IZ*ONEは日本型アイドルを終焉させる? 『PRODUCE 48』選抜結果から見える野心的成果
韓国の人気オーディション番組『PRODUCE 48』の濃厚な選抜が終わった。オーディションの合格者12人の国籍の内訳は、韓国人メンバーが9名、日本人メンバーが3名だった。この番組企画が韓国的なアイドル誕生のスキームの中で実施されたことを考えると、日本人メンバー3名という数字はかなりの健闘だろう。ただ当初のエントリー人数からいえば、惨敗とはいわないまでも大苦戦だった。日本人メンバーの合格率は8%程度、対して韓国人メンバーは19%超だった。それだけ日本人メンバーにはハードルの高いオーディションだったと思う。
トップで合格したのは、番組参加者の中では最年少だった14歳のチャン・ウォニョンだった。長い手足を躍動させ、また体幹がほとんどぶれない高度なダンス、そして高い身長にも関わらず愛くるしい陶器のように滑らかに光る小顔。その将来性は計り知れないものがあり、これが韓国の芸能界の奥深さなのか、と今でも驚いている。また個人的に注目してきたのが、カン・ヘウォンだ。まるで一流の女優が同時にアイドルをやっているような表現力の豊かさと、グラビアでの露出にも強みを発揮できそうなそのビジュアルの強さにある。もちろん何気なく披露されるラップ系の感性も注目だ。韓国メンバーはやはり長期間のレッスン(人的資本の投資)を積極的にしてきただけあり、即戦力の魅力に溢れている。
オーディション初期に特に感じたのは、AKB48Gにもっと頑張ってほしい、日本のアイドルのよさ(元気や楽しさを与えること、未完成な成長物語への共感)を伝えてほしいと思う自分がいたことだ。日韓のメンバーは互いに励まし合っているので、日韓対決という色彩はない。だが、時にはオリンピックなどに似た感情をもってしまった。特に今回、2位で選出された宮脇咲良は、今年の『AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙』でも3位にランクされるなど、現状の日本アイドル界の中では屈指の“至宝”である。彼女が今回、韓国内だけとはいえ“世界市場”の中でどのように評価されるのかは、大きな注目だった。参加メンバーが最初にお披露目されて、テーマ曲「NEKKOYA (PICK ME)」を歌っているときの宮脇の美しさは際立っていた。これはひとつには宮脇をはじめ、日本人メンバー全員がオルチャンメイク風できめてきたせいもあるだろう。“世界市場”を意識しての攻めの姿勢だ。