1stフルアルバム『FULLMOON』インタビュー
登坂広臣が語る、ソロ活動で目指すビジョン「USのトレンドをオンタイムで表現したい」
三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEのボーカル・登坂広臣のソロアルバム『FULL MOON』が2018年8月8日にリリースされた。これは、6月6日に発売された三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEのアルバム『FUTURE』に収録されていた登坂広臣のソロ楽曲群に、新曲を加えたコンプリートアルバムだ。
『FULL MOON』の新曲群では、登坂広臣自身がプロデュースを担当。登坂広臣と話していて浮かびあがってきたのは、同時代のアメリカのヒップホップや、往年のJ-POPを意識した、ひとりのプロデューサーとしてのグローバルな視点だった。(宗像明将)
セルフプロデュースで「0」を「1」に
――三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの『FUTUER』には、登坂広臣さんのソロ曲が7曲収録されていました。今回は8曲を新曲として、14曲入りのフルアルバムとして制作したのはなぜでしょうか?
登坂:いきなりフルアルバムをリリースしても良かったんですけど、その前に三代目 J Soul Brothersの『FUTURE』というアルバムに僕と今市隆二のそれぞれのディスクを入れさせてもらって、その中でそれぞれを表現したことによって、ファンの方に『FUTURE』というアルバムのタイトル通りに、僕らのボーカリストとしての“未来”を感じとっていただけたと思います。それをふまえて、ツアー発表とフルアルバムという順番にしました。だから、僕としてはフルアルバムに向けて楽曲制作を進めた中で、コンセプトを示す7曲を先に出させてもらったという制作過程でした。
――『FUTUER』の登坂広臣さんのディスクのサウンドプロデュースはAfrojackさんでしたが、今回『FULL MOON』の新曲ではAfrojackさんと組まなかったのはなぜでしょうか?
登坂:Afrojackとは何年も前から公私ともに仲良くさせてもらっていて、『FUTURE』の7曲はAfrojackプロデュースで、彼のいるオランダへ行ってスタジオに入ったんです。毎日スタジオでセッションをしながら作っていった曲でもあって、彼の持っているクリエイティブさを僕もたくさん吸収させてもらいました。フルアルバムを作るにあたっては、セルフプロデュースにして、自分の周りにいる音楽仲間たちと一緒にスタジオに入って、「0」を「1」にする作業をしました。トラックメイカーと一緒にスタジオに入って、ビートを作って、トップラインを付けて、歌詞を書いていく作業にすべての楽曲で携わっていくのが、今回の自分のプロジェクトでやりたいことでもあったんです。
――Afrojackさんプロデュースの7曲と、登坂広臣さん自身のプロデュースの8曲で、サウンドの方向性を変えようとした部分はありましたか?
登坂:僕がもともと好きな音楽が、ダンスミュージックやヒップホップであることは変わらないんです。ただ、アルバムをひっさげたツアーもあるので、全体のバランスはすごく考えました。自分のやりたい「攻め」のヒップホップサウンドだけをやるんじゃなくて、「もうちょっとゆっくりノれるナンバーも欲しいな」とか「一曲バラードの曲が欲しいな」と考えました。
――登坂広臣さんのソロ作品がEDM、フューチャーベース、オルタナティブR&Bへ傾倒したことで、ファンの皆さんがついてこれなくなる可能性は心配しなかったでしょうか?
登坂:それはもう三代目 J Soul Brothersでもソロでも毎回すごく悩んで葛藤するところです。やりたい音楽があるけれど、それをストレートにやることによって、僕らのことを応援してくれているファンの皆さんがどう感じるかは意識しますね。そのさじ加減が毎回すごく苦労するんです。
どれだけ起承転結をつけて遊べるか
――『FULL MOON』を聴いていて、登坂広臣さんがフルパワーになったらかなり先鋭的なものになると感じました。最近聴いてるもので、お気に入りの音楽は何でしょうか?
登坂:基本的にヒップホップばかり聴いていますね。ここ数年だとケンドリック・ラマーもThe Weekndもポスト・マローンも好きです。そういう音楽を聴いていると、「音数を減らしたい」とか「ビートをもっとこうしたい」とか出てくるけど、J-POPのマーケットで、そういった方向性の音楽を純粋にやっていいものなのかは毎回悩みますね。
――音数を少なくしたいという登坂広臣さんの感覚は、USのトレンドそのものですよね。『FULL MOON』の収録時間も49分で、今のJ-POPのアルバムとしては比較的短いです。最近の洋楽のアルバムが短くなっていることは意識したのでしょうか?
登坂:アルバム全体の尺はそこまで意識しなかったのですが、なるべく3分半以上の曲は作らないようにしました。4分に満たない尺の中で、どれだけ起承転結をつけて遊べるかというのを意識していますね。
――なぜなるべく3分半以上の楽曲を作らないようにしたのでしょうか?
登坂:僕もひとりのリスナーとして日本の音楽をいろいろ聴きますけど、「ここをこうすればダレずに曲の良さが一番伝わって終わるのにな」と感じることもあるんです。職業病なのかもしれないですけど、聴いていると気になる部分がたくさんありますね。でも、USのトレンドの音を聴いていると、ちょうどよく感じてストレスもないんです。そうなると、自分が曲を作る時に自然と4分に満たない曲が多くなりますね。意識もしますし。
——「INTRO」「OUTRO」以外の新曲について教えてください。SUNNY BOYさん作曲の「FULL MOON」は、バラードのようで、オルタナティブR&Bの感触もありますね。
登坂:SUNNYとは同い年で昔から友達なんですけど、意外にも曲を一緒に作ったことがなかったんです。でも、彼の持っている才能は知っていたし、今回はセルフプロデュースなので、「彼と組んで曲を作りたい」と思ったんです。最初はSUNNYと飲みながら“FULL MOON”というコンセプトの話をして、スタジオで一緒にビートを作っていくところから始まりました。彼の持っている音楽的な才能に、自分のアイデアも入れて、本当にゼロから一緒に作っていく作業でしたね。「One Last Time」というBENIさんと一緒にやっている曲もSUNNYが作ってくれたんですけど、BENIさんも同世代で以前から友達なんです。SUNNYとBENIさんと3人で飲んでいる時に、「この同じジェネレーションのみんなでなんか1曲やろうよ」と以前から話していて作ったのが「One Last Time」だったんです。新曲は全部わりとそんなノリで作っている感じですね。
――そのSUNNY BOYさん作曲の「One Last Time」は、R&Bなデュエットですね。同じSUNNYさんでも、「FULL MOON」とビートがかなり違うのが面白いですね。
登坂:改めて「引き出しがすごい」と思いましたね。「この人とやりたい」とわがままを言って作らせてもらった新譜です。「HEART of GOLD」はGIANT SWINGのmichicoさんにお願いしたんです。僕らもデビュー当初からお世話になっている日本のトッププロデューサーチームですが、ソロでやってもらったことはなくて、自分がソロとしてmichicoさんにやってもらったらどうなるかを試してみたくてお願いしました。