今市隆二が語るR&Bへの敬愛、そして歌手としての信念「内面から出るものをそのままぶつけたい」

今市隆二、R&Bへの敬愛と信念

 三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEのボーカル・今市隆二がソロとして初のフルアルバム『LIGHT>DARKNESS』(ライトダークネス)をリリース。8月11日からは同名の単独アリーナツアーをスタートさせる。

RYUJI IMAICHI / LIGHT>DARKNESS 全曲紹介

 アルバムは、三代目 J Soul Brothersの最新アルバム『FUTURE』に収録されたソロ曲に新曲を8曲加えた14曲構成。制作に、正統派R&Bのレジェンドであるブライアン・マックナイトや、The Weekndの数々の作品を手がけてきたイルアンジェロ、“キング・オブ・R&B”の異名を持つNe-Yo、国内からT.Kura、STY、Chaki Zulu、TAKANORI(LL BROTHERS)など、錚々たるアーティストが参加した。音楽性の軸は今市のルーツであるR&B。今回、今市へのインタビューでは、90年代から現在までのR&Bの変遷やボーカリストとしての信念を語ってもらった。ソロプロジェクトを通して“表現の自由”を覚えたという彼の表情は、終始朗らかだった。(鳴田麻未)

『LIGHT>DARKNESS』は自分の人生のテーマでもある

今市隆二

――『LIGHT>DARKNESS』は、そのタイトルや「Catch my Light」や「Out of the Darkness」「SHINING」という複数の曲名が象徴しているように、光や希望にあふれたアルバムだと思いました。今市さん自身はどんな作品に仕上がったと思っていますか?

今市:テーマが“LIGHT”と“DARKNESS”で、“LIGHT”を象徴する曲が「Catch my Light」、“DARKNESS”に入るのが「Out of the Darkness」や「Alter Ego」「Trick World」なんですね。世界観が2つに分かれてるので聴く方にとってわかりやすい作品だと思います。ジャンル的にも、ソロプロジェクトは自分が好きなR&Bを軸にしていきたいと思ってるんですけど、90年代を感じるようなR&Bだったり、最近のフューチャーR&Bだったり、ニュージャックスウィングだったり、またはオイパンクみたいな曲もあったり。ソロをスタートさせた当時イメージしてた曲も入りつつ、新たに挑戦してるジャンルもあるので、すごく聴き応えはあるかなと思います。

RYUJI IMAICHI / Out of the Darkness 〜 Catch my Light (MUSIC VIDEO / YouTube ver.)

――光や希望だけでなく“DARKNESS”に分類される曲も結構あるんですね。

今市:そうですね。自分のダークな部分もあえて見せることで“LIGHT”の部分もよりリアルに感じてほしいというか。そもそも「LIGHT>DARKNESS」という言葉は、今回のアルバムを監修して世界観を一緒に作ってくれたアートディレクターのダニエル・アーシャムと話し合って決めたんですけど、自分の人生のテーマとも言えます。

――というと?

今市:誰しも生きてて楽しいことや幸せなことばかりじゃなくて、辛いこと、苦しいこと、悲しいことも経験しますけど、そんな時でも信念を持ち続ければ絶対に光は見つかるよという。そういうことを自分の歌や楽曲で表現したいって思いがあるので。やっぱり悩んでる人や苦しんでる人の背中を少しでも押したいんですね。それを今回のアルバムとツアーで伝えられたらなと思います。

――ソロプロジェクト始動時からなんとなく頭にあった言葉なのでしょうか?

今市:いえ、最初から浮かんでたわけではなく、アルバムタイトルどうしようか? というダニエルとの話し合いの時だから「Alter Ego」を出した後ですね。配信シングル4枚を出す間に彼と絆を深めていって「音楽に対してどういう思いを持ってるか、何を願ってるか、今の心境を赤裸々に教えてほしい」と言われて、包み隠さず言ったんです。ダニエルから言われたことですごく印象的だったのが「あなたの良いところを引き出すんじゃなくて、あなたの持ってるものを削ぎ落として本当の今市隆二を出したい」と。だからその中で出た「LIGHT>DARKNESS」は自分の人生において重要なフレーズですね。

――ダニエル・アーシャムは音楽ではなく現代アート界で活躍している人で、そういう人がアルバムのプロデュースを手がけるのも新鮮な取り組みですね。

今市:そうなんですよね。MVの監督は誰がいいとか、紹介してくれたりとか、彼が海外のクリエイターとのつながりを作ってくれました。MVでリップシンクなしを初めてしたり、演技を自然にしていたり、前は「俺はミュージシャンじゃなきゃ」という思いが強かったのでそういうことに抵抗があったんですけど、MVに対する固定概念を崩してくれましたね。

今市隆二とR&B

――6月に発売された三代目JSBのニューアルバム『FUTURE』のソロディスクの時点で、今市さんのソロプロジェクトがR&Bと真っ当に向き合ったものであることは明らかになっていました。改めて、なぜR&Bに傾倒した作品をソロとして作ったのか教えていただけますか?

今市:ソロをやるって考えた時に、三代目とは違うことをやらなきゃ意味がないというか面白味も出ないし、ソロとしての魅力を出したかった。それがたまたま自分のルーツのR&Bをやれば三代目と差別化できる、というケースだったんです。自然と導かれていった感じがありますね。

――1986年生まれの今市さんは、R&Bがルーツだと公言してきましたよね。

今市:はい。Boyz II Menもそうだし、Babyface、エリック・ベネイ、ブライアン・マックナイト……90年代のR&Bがやっぱり好きなんですよね。最近のフューチャーR&Bはサウンド面で見せてる部分もあるけど、この時代のR&Bは歌に特化してるなと思っていて。あの時代の定番となってたビートやサウンドは、今聴いてもやっぱ最高だな……! と思いますし、単純に自分にフィットしてるのかなって思います。

――今作は90年代、2000年代、2010年代のR&Bシーンの名プロデューサーが参加する豪華な1枚になりました。この20年間ほどでこのジャンルはどのように変遷していってると思いますか?

今市:音楽シーン自体、ジャンルの垣根は時代を追うごとになくなってるじゃないですか。気づいたらEDMが流行る時代が来て、DJネームが先に出る文化なので、表舞台でシンガーが減っていきましたよね。それが自分的には悔しいというか寂しい気持ちがめちゃめちゃあって。けどそれからThe Weekndやブルーノ・マーズが出てきたことによってだんだんシンガー文化が戻ってきてる感じもしてるので、個人的には最高のタイミングでソロ作品を出せてるなと思います。

――日本でも2000年前後にR&Bディーヴァブームが到来して、一気に沈静化しましたよね。

今市:ですよね。正直日本でもシンガーが減ったなと思ってて。垣根がなくなることは全然良いと思うんですけど、シンガーが昔ほど日の目を浴びなくなったというか……。例えば宇多田ヒカルさんがデビューした時代は楽曲的にもカッコよかったし、あの年代のランキングを見ると素直に「全部すげー良い曲だな」と思っちゃうんですね(笑)。だから世界の流れと比例してはいたんだなと思います。最近になってまたそういった盛り上がりが出てきているのは自分としてもうれしいです。

自分のやりたい世界観が一番わかりやすいのは「ONE DAY」

――少々失礼な質問かもしれませんが、「三代目のボーカルの人がソロアルバム出したんだ」というくらいのライトリスナーに『LIGHT>DARKNESS』の中で手始めに聴いてみてもらいたい曲はどれですか?

今市:やっぱり「ONE DAY」ですかね。自分のやりたい世界観が一番わかりやすいと思います。でも曲によって色が全然違うので、うーん、難しいですね。

――また、コンプリートアルバムで初出しした新録曲の中で、思い入れの深い曲があれば教えてください。

今市:「Diamond Dance」ですね。曲の世界観がとにかく好きで。R&B好きな人なら懐かしいなと思えるイントロだと思いますけど、トラックを聴いた時から「とにかくロマンチックな曲を作りたい」と思って取り組んだんですね。好きな人と2人きりで星の下、良い音楽とシャンパンを空けてキラキラした空間の中で”Diamond Dance”をするみたいなストーリーを自分の中で作って歌詞書きました。これだけロマンチックだとクサくなっちゃうかもと思ったんですけど、曲調とバチハマりしたなと手応えがあって。英語の響きも自分的に気に入ってて「Diamond Dance」は好きな曲ですね。

 あと「Trick World」もすごい思い出に残ってて。この曲はPKCZ(R)のDJ DARUMAさんとChaki Zuluさんと3人で、Chakiさんのスタジオに入って作りました。どんな曲を作るか決めずにYouTubeでいろんな音楽聴いたり話したりして、出た答えがまさかのオイパンク(笑)。

――「Trick World」はブレスから始まって気を引かれましたし、アルバムの中でも異彩放つ曲だと思いました。Chaki Zuluさんの作る曲はいつもエッジが効いてて刺激的ですよね。

今市:ホントそうですよね。この曲、BPM170なんですよ。“DARKNESS”に分類される曲ではあるんですけど、ダークな世界観で縦ノリで盛り上がる曲があったら新しい試みになるなと思って。LDHの中での盛り上がる曲は120〜130くらいのテンポがほとんどなので。で、途中からJAY’EDさんも参加して一緒にトップラインとか歌詞を考えてくださって。そのメンバーみんなでトンカツを食べに行ったり焼肉を食べに行ったりしたのも含めてすごい楽しかったな。DARUMAさんとChakiさんはDJなのでホントに幅広く音楽を聴いてて、音楽話がすっごい面白くて。勉強にもなる環境でこういう曲が作れたのは良かったです。

――音楽観が自由に変わったのではと感じました。国内のトラックメーカーとそういうふうにワイワイ1曲を作り上げたり、海外のアートディレクターから表現の自由を覚えたり。

今市:そうですね。三代目だとありがたいことにすごい大きい規模で活動させてもらってますし応援してくださる方もたくさんいる反面、ヘタなことができないというか、動きづらい部分もあって。でも今回ソロで積んだ経験値を三代目に持って帰れたら、また三代目も変わると思ってます。臣も同時にソロ活動をしてるので、それも持って帰ってきてもらえば面白くなるなと。

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