LiSA、8つの“eN”に込めたメッセージ アジアツアー日本武道館公演から感じたこと

LiSA、8つの“eN”で彩った武道館

 「一緒に歌って!」というLiSAの合図からスタートしたアカペラでの「Catch the Moment」は、サビを歌いきり、ギターイントロから始まる。「今ここにあるもの全部、全部見逃さんといてよ!」というLiSAのメッセージ、ファンにマイクを預け、会場全員が歌う〈あと何回キミと笑えるの?〉という歌詞は、まぎれもなく「Catch the Moment」が“みんなの歌”になっていることを表していた。


 〈いつか/この曲聴いた/誰かが/今を/愛せたらいい〉という「Believe in myself」の一節で始まったLiSAのシンガー人生、そしてこの日の日本武道館のライブ。再びセンターステージに現れたLiSAが歌い出したのは、「Believe in ourselves」。LiSAがLiSAで在り続けるための、僕とキミの絆の歌。LiSAは、いつだって未来を見据えながら、“今”を歌ってきた。〈自分自身を信じて走って/一個だって譲らなかったから/最高の今日、明日があるんだ/だから行こう/キミと一緒に〉。そう歌いきったLiSAは感極まり、タオルを口元に当て泣き出す。

 日本武道館に初めて立ってから4年。岐阜県から自分の居場所を探して、夢を探していた頃から数えれば15年。目標にしていた日本武道館はいつしか、自身が作り出した夢の魔物が住む、広くて遠くて、不安がいっぱいの場所になってしまっていた。たくさんのライブを重ねて、再び立った日本武道館で掴んだのは、光。「Believe in ourselves」の〈光を目指すよ〉という歌詞を歌いながら、ファン一人ひとりの輝きが光に見えたとLiSAは話す。「私の光になってくれました。どうもありがとう」「LiSAを受け取って、繋いで来てくれたこの日本武道館が“縁”です」「1日、1日一生懸命に生きてきた“DAY”が、いつの間にかLiSAの“WAY”になって、今日ここに辿りついてると思います」。最後の曲は、初めて日本武道館に立った2014年にもセットリストのラストを飾った「best day, best way」。ベストアルバムのタイトルにもなっているように、LiSAの伝えるメッセージはいつだって最高の今日があって、最高の明日があるのだ。

 ツアー『eN』はアジア圏を巡り、10月からは国内のホールを回る『LiVE is Smile Always~ASiA TOUR 2018~[core]』がスタートする。筆者が、LiSAのライブを観る度に感じることがある。それは、力強い歌声と感情溢れるパフォーマンスの裏側に、ふと等身大の女性がいるということ。“LiSAという”と、もう一人の自分のように話す言葉の一片からは、自身を保つため、繋ぎ止めてきたものが垣間見える。ファンという光があって、LiSAがあるんだと、彼女が見せた涙を見てそう思った。ツアーを通してLiSAとファンとを繋ぐ縁は、大きな円となって、彼女をまた一つ強くしていく。

(Photo by hajime kamiiisaka)

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

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