フジロック2018、要注目の洋楽アクトは? 小野島大が50組を徹底解説
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- Jack Johnson
- Fishbone
- Vampire Weekend
- Dirty Projectors
29日(日)
[Green Stage]
Bob Dylan & His Band
長い間噂されていたボブ・ディランのフジロック出演が実現。N.E.R.D.、ケンドリック・ラマー、ディランという3日間のヘッドライナー(ディランはトリ前の出演ですが、もちろん実質的にはヘッドライナーです)は、他国のフェスティバルと比べても胸を張れる見事なラインナップだと思います。ノーベル賞受賞者とピュリツァー賞受賞者が両方出るフェスというのも凄い。ディランの裏はほとんど誰もやっていないタイムテーブルは、もちろん主催者の「この時間はディランを見ろ」というメッセージです。どんな曲をどんな形でやるか。まったく予測がつきませんが、ありきたりなヒットパレードにはならないことは確実です。
Vampire Weekend
今年がデビュー10周年のVampire Weekend。フジロックは2013年以来5年ぶりです。ディランが大トリではなくトリ前の出番になったため、ついにヘッドライナーの大役を務めることになりました。とはいえ2013年以降新作は出ていないという状況で何をやるのか。今年6月には2008年発表の1stアルバム『Vampire Weekend』の全曲再現ライブをやり、新曲も披露したとのこと。果たしてフジではどんなライブになるんでしょうか。
Jack Johnson
おなじみジャック・ジョンソンは2014年以来の出演。昨年7枚目のアルバム『All the Light Above It Too』をリリースしたばかりです。楽しかったフェスの最後をゆるりと彩ってくれるに違いありません。
Anderson .Paak & The Free Nationals
後述のSerpentwithfeetと並び、個人的に3日目最大の期待がこれ。Dr.DREのアルバム『Compton』(2014年)に6曲フィーチャーされる大抜擢で一躍名を挙げ、2016年に出したソロアルバム『Malibu』が圧倒的に素晴らしかったアンダーソン・パークです。ケンドリック・ラマーの『To Pimp A Butterfly』に参加して一躍世界中の注目を浴びたトラックメイカー、ノレッジとのユニット、NxWorries(ノー・ウォーリーズ)の『Yes Lawd!』(2016年)でその評価を決定的なものにしました。ソウルフルで官能的でディープな声、60年代ジャズ、クラシカルなソウル/ファンクやディスコ、80年代R&B、90年代ヒップホップの伝統と普遍性を感じさせながらも、でもきちんと今の時代のブラックミュージックとしてのポップネスとエッジ感が見事に共存しています。ライブはかなりバンド感を強調したもので、自らドラムも叩く肉体的なものになりそう。グリーン・ステージはちょっと大きすぎる(早すぎる)感もありますが、アーティストの才能のスケールはそれ以上。今から楽しみです。
Chvrches
グラスゴー出身のローレン・メイベリー(Vo)を中心とした3人組。ノスタルジックな80'sシンセポップ風のサウンドと、ローレンのキュートな魅力で支持を広げてきた彼らですが、最新作『Love Is Dead』では、ベックやアデル、Years & Yearsを手がけたグレッグ・カースティンなどをプロデューサーに迎え、EDMやメインストリームのポップスのファンにもアピールしそうな音に仕上げています。日本のフェス出演は2013年のサマソニ以来ですが、あの頃はまだ自意識の殻をおしりにくっつけたインディ村の箱入り娘だったローレンも、その後の単独公演を経て大きく成長した姿を見せてくれるはず。
Kali Uchis
コロンビア生まれ、米ヴァージニア州で育った魅惑の24歳。ジョルジャ・スミス(サマソニに出演)と並び若手女性R&B歌手の最注目株のひとりでしょう。2014年にスヌープ・ドッグのミックス・テープに参加したことをきっかけに注目を集め、その後Major Lazerの「Wave」やGorillazの『Humanz』等に客演。今年になって1stアルバムの『Isolation』をリリース。サンダーキャット、ケヴィン・パーカー(Tame Impala)、BADBADNOTGOOD、グレッグ・カースティン、デーモン・アルバーン(Gorillaz)、タイラー・ザ・クリエイター、ブーツィ・コリンズ、さらにはライバル=ジョルジャ・スミスなど旬なゲスト/ソングライター/プロデューサーを迎え、ゆったりしたノスタルジックでオーガニックな、温かみのあるR&Bを作り出しています。ライブはこれに力強さが加わりエネルギッシュになる感じでしょうか。大期待です。
Kacey Musgraves
米テキサス州生まれ、ポップカントリーの歌姫ケイシー・マスグレイヴス。8歳の時 に曲を書き始め、18歳の時にカントリー音楽の世界で歌い始めたという実力の持ち主。これまでメジャーから発表した3枚のアルバムはいずれも全米チャート5位以内にランクされるなど本国での支持と知名度は抜群です。最新アルバムは『Golden Hour』(2018年)。5年前のメジャーデビュー時にはまだ若々しさを売りにしたようなところがありましたが、今や、ボーカルも音楽も、キャリアに相応した堂々たる貫禄と落ち着きを感じさせます。良く伸びる美しい声が苗場の自然に映えそうです。
THE FEVER 333
今年のフジロックはR&Bやヒップホップ系の出演が目立ちますが、数少ないロックらしいロックバンドがこれ。カリフォルニア出身のハードコア〜ラップコア3人組。昨年解散したカリフォルニアのハードコアバンド、Letliveのボーカリストだったジェイソン・アーロン・バトラーを中心に結成され今年になって7曲入りミニアルバム『Made In America』を発表したばかり。毎年必ず用意されるホワイト・ステージの「ラウドロック枠」はこれということでしょう。音楽性もパフォーマンスもテンション高く、観客の「暴れたい需要」には十分に応えてくれそうです。
[Red Marquee]
Dirty Projectors
米ブルックリン発のアートロックの代表格。フジロックは2010年以来8年ぶりです。デイヴ・ロングストレス以外のメンバーが全員抜けて実質デイヴのソロプロジェクトになった昨年の『Dirty Projectors』に続く8枚目のアルバム『Lamp Lit Prose』を引っさげての来日です。新作はこの原稿を書いている時点では未聴ですが、「失恋アルバム」だった前作に対して新作は「過去最高にアップリフティングなサウンド」(レコード会社資料より)となっているとのこと。ライブも盛り上がりそうです。
serpentwithfeet
ボルチモア出身のシンガーソングライター、serpentwithfeetことジョシア・ワイズ。本サイトの新譜キュレーション連載(serpentwithfeet、デビューアルバム『soil』で今最も注目されるべき存在に 小野島大の新譜8選)で「今最も注目すべき才能」と大プッシュさせてもらった異形の新人がついにベールを脱ぎます。今年になって初フルアルバム『soil』をリリースしたばかり。聖歌隊の出身で、NYのクイアミュージックシーンから出てきた人ですが、中性的なヴォーカルとゴスペルやクラシック、エクスペリメンタルR&Bが融合した音楽性が圧倒的にユニークで、かつ美しい。ポスト・マローンやアンダーソン・パークと並び、今フェス最大の目玉と思います。
Hinds
スペイン出身、今年になって2ndアルバム『I Don't Run』が出たばかりの女性4人組、フジ初登場です。音楽性はシンプルでローファイなガレージロック。ノスタルジックな甘酸っぱい60年代バブルガムポップ風のメロディと、人懐っこいサウンド、娘たちの日常会話の延長のような歌を、予想以上にしっかりした演奏で聴かせます。それというのも世界中を旅して周り、グラストンベリーなど数々の大型フェスを経験してきたから。きっとフジでも楽しいライブをやってくれるはず。
[Sunday Session]
Berhana
バーハナはアメリカはアトランタ出身シンガーソングライターで、2016年にセルフタイトルのEPをリリースしています。オーソドックスなR&Bですが、ちょっと寂しげな声とメロディ、シンプルでオーガニックなトラックがロマンティックでリリカルですね。ご本人はかつて日本料理店で3年間働いていたようで、日本文化には造詣が深く、小津安二郎の映画や80年代の日本のディスコソングが好きだとのこと。ライブではそんな一面が見られるかもしれません。最新シングルの『Whole Wide World』は、なんと英パブロックのレックレス・エリックの曲。これまで数多くのアーティストにカバーされてきた隠れた名曲ですが、これを取り上げたバーハナというアーティストの音楽的背景にも興味がそそられます。
[Field Of Heaven]
Greensky Bluegrass
米ミシガン州出身の5人組。今回が初来日です。バンド名通りブルーグラスやカントリーを演奏するバンドですが、Grateful DeadやFish等のジャムバンドにも通じるスタイルを持っています。70年代にはカントリーロックと言われた音楽スタイルは、今や彼らのようなバンドに吸収されたと言っていいのではないでしょうか。これもまた、フジロックならではの色をもったバンドのひとつでしょう。これまでに6枚のアルバムを出していて、最新作は『Shouted, Written Down & Quoted』(2016年)。
Ben Howard
ベン・ハワードは英国出身のシンガーソングライター。これが初来日です。2008年に初のEP、2011年に1stアルバム『Every Kingdom』をリリースして、以降現在までに3枚のアルバムをすべて全英チャートのトップ5に送り込むほど高い人気と評価を得ています。最新作『Noonday Dream』(2018年)は、幻想的で立体的な音響デザインとシンプルで奥行きのあるアレンジ、内省的な歌がマッチした傑作。かつてのシド・バレットやニック・ドレイクに通じる英国アシッドフォークやサイケデリックロックの香りがします。このサウンドをライブでどう表現するのか。
Western Caravan
SMASHの日高正博代表いわく「フジロックで初めての純粋なカントリー&ウエスタンのバンド」(【日高代表 緊急インタビュー 前編】開催直前!大将が伝えたい、21年目のフジロック注目ポイント)ということで昨年フジロックに初出演の8人組が、2年連続で参加です。エルヴィス・プレスリーの「Little Sister」のカバーーが年期が入っていてかっこいい。同日の苗場食堂にも出演します。
Frente Cumbiero
コロンビア出身の4人組。当初はソングライター兼プロデューサーであるマリオ・ガリアノ・トロのソロプロジェクトでしたが、現在は4人編成のバンドで活動しています。コロンビアの伝統音楽であるクンビアをエレクトロニックな要素も加えモダンな感覚で演奏する新世代バンドで、マッド・プロフェッサーやQuantic、Kronos Quartetといったミュージシャンとの経験もあります。ライブでは徹底的にダンサブルに攻めてくるようなので、期待しましょう。同日のカフェ・ド・パリ にも出演します。
[Café de Paris]
SANDII&DENNIS BOVELL
最後にこれを紹介。元サンディー&ザ・サンセッツの歌姫サンディーの新作『HULA DUB』を、あのThe Pop GroupやThe Slits、坂本龍一も手がけた英レゲエ/ダブの巨匠デニス・ボーヴェルがプロデュース。そんな縁で実現した今回のフジロック出演です。今や日本のハワイアン界の第一人者であるサンディーとデニス翁のラヴァーズ・ロックがゆったりと合体。しかしこのアクトにカフェ・ド・パリ は狭すぎるんじゃないでしょうか。満員必至なので、見たい方は早めに並ぶことをお勧めします。見逃した方は直後から始まる全国ツアーを。
■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebook/Twitter
■イベント情報
FUJI ROCK FESTIVAL ‘18
2018年7/27(金)28(土)29(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
http://www.fujirockfestival.com