ゲーム実況者わくわくバンド、中野サンプラザに響いた“音楽×ゲーム”の新機軸エンターテインメント

わくバン、中野サンプラザ公演レポ

 刺激と不思議な癒しがマーブル模様になったような、“わくわく”感に満たされたライブだった。いまやネット発の人気コンテンツとして定着した“ゲーム実況”と、音楽ライブを融合した新たなエンターテイメントを作っていこうとしている「ゲーム実況者わくわくバンド」。そんな彼らの初となるホールワンマンライブが5月26日、中野サンプラザホールで開催された。

 その魅力は、オープニングから大いに発揮された。ゲームのオープニングを思わせるオープニングSE「WKWK DEBAYASHI」に乗って登場し、「俺たちがわくわくバンドだ!」と声を合わせた彼らが1曲目に披露したのは、人気アニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』(テレビ東京系)のEDテーマとなった「デンシンタマシイ」だ。郷愁の漂うロックサウンドに乗せて、欲しいものを何一つ諦めず、仲間とともに前進する覚悟を歌う同曲は、子どものように無邪気に遊びながら、大人の本気を見せる彼らの姿を象徴しているように思える。湯毛(Vo/Gt)の「今日一日、わくわくしていきましょう!」の掛け声に、満員のホールは歓声に包まれた。

 1stアルバムの表題曲「わくわくフルデイズ」、音楽ゲーム『BEMANI』シリーズとコラボした人気曲「僕ガ壊レル前ニ」と、代表曲を惜しげもなく披露し、続いては各メンバーに見せどころがある「今日くらい」だ。失礼な話なのだが、バンド活動以前から彼らのゲーム実況を楽しませてもらってきた立場からすると、初期のライブはどこか「応援して見守る」ような気分もあった。しかし、もともと音楽活動に力を入れていた湯毛のギター&ボーカル、せらみかるのキーボードは当然のこと、よく動くラインを力強く弾きこなし、楽曲を引っ張るフジのベース、表現力に磨きをかけているヒラノ課長の歌うようなギター、それをタイトに、優しく支えるフルコンのドラムーーと、ライブバンドとしての強度が飛躍的に高まっていることに驚かされる。

湯毛
ヒラノ課長
せらみかる
フジ
フルコン
わくわくホーンズ
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湯毛
ヒラノ課長
せらみかる
フジ
フルコン
わくわくホーンズ
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 そんな感動を味わっていると、熱気をクールダウンさせるように、ゆるいムードのゲーム実況コーナーへ。タイトルは、ゲーム実況でも人気が高い、ハチャメチャな対戦アクションゲーム『Gang Beasts』だ。ルールはいたってシンプルで、相手キャラクターを押したり掴んで投げたりして、ステージから落とす、というもの。キャラクターのヌルヌルとした挙動が面白く、また制御の難しさから驚きの珍プレーも生まれる。“対戦”とはいえまったくギスギスすることはなく、「家みたい」と予定時間を大幅にオーバーして遊ぶメンバーの姿に、オーディエンスは癒されたのだった。

 後半のライブパートは、高橋弥歩(Sax)、吉澤達彦(Tp)、大田垣“OTG”正信(Tb)の“わくわくホーンズ”を招き入れての「Yeah! Super Hyper Fever Five!」からスタート。「高橋弥歩=たかはしひろむ」が、湯毛の好きなプロレスラーと同姓同名なため、呼び込みがプロレス風になるというやりとりに、ファンもメンバーも爆笑していた。カバー曲「銀河鉄道999」でギターを下ろした湯毛は、「ハンドマイクで(ステージを)練り歩いたの、いつぶり?」と話しつつ、ホーンセクションによる音の厚みと、ボーカルに集中することの楽しさを語っていた。せらみかるのコーラスも心地よく響き、リズム隊のグルーヴも印象的だった。

 一転、コール&レスポンスで盛り上がった「ヘイボーイヘイガール」や、湯毛の情緒的なボーカルが冴える「夜よ明けないで」などの人気曲を経て、ハイライトのひとつになったのは、新曲の初披露だ。PS4用の新作ゲーム『NARUTO TO BORUTO シノビストライカー』のイメージソングに起用された「シグナル」は、バトルが盛り上がりそうな疾走感あふれるロックナンバーで、会場の温度が一気に上がる。さらに、ハードなギターロック「感状線」も初披露とは思えない勢いのあるプレイで、ライブの定番曲になる予感を広げた。

 わくわくバンドのライブは、それぞれが独立してタレント性の高いメンバーによる掛け合いも楽しい。観客の熱気に「すっげーぞ」とつい孫悟空風に感嘆してしまうフジをはじめ、そんなフジの熱い“煽り”を羨ましがり、客席をざわつかせる湯毛、天然ぶりも発揮しつつ、そんなメンバーに鋭いツッコミも見せるせらみかるに、観客へのサービスを忘れず、愛されキャラぶりを発揮するヒラノ課長、そして、バンドに調和をもたらしている優しい男・フルコン。本編のラストは、2ndシングルから「時の妖花」、「完全幸福サレンダー」を立て続けに披露し、彼ららしい、幸福感に満ちた空間を作り上げていた。

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