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小野島大の新譜キュレーション 第17回

serpentwithfeet、デビューアルバム『soil』で今最も注目されるべき存在に 小野島大の新譜8選

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Prefuse 73『Sacrifices』

 さまざまな名義で精力的に作品を発表し続ける才人ギレルモ・スコット・ヘレンのメイン・プロジェクトがプレフューズ73(Prefuse 73)。その3年半ぶりの新作が『Sacrifices』(Lex Records)と題されたアルバムです。全17曲で53分ほど。短めの小品が並ぶアルバム構成はいつもの通りですが、サイケデリックでコズミックでエモーショナルなアブストラクト・ヒップホップはプレフューズならでは。ゆらゆらと揺れるような電子音が空間に溶解していく立体的で奥行きの深い音像と、柔らかく細やかでしなやかなテクスチャーは才気の塊。素晴らしいの一言です。

 とりわけ2016年に『Silk Noise Reflex』という傑作を出したアメリカのR&B歌手ジェイムス・ティルマンがゲストボーカルで参加した「Silver & Gold」は本当に素晴らしい。ティルマンの持ち味のハスキーでシルキーな声を活かしたディープな極上のメロウ・ソウルになっています。

Prefuse 73 – Silver & Gold (Feat. James Tillman)
Prefuse 73 – The World Is Bigger
Prefuse 73 – Basinskitarian
Tim Green『Her Future Ghost』

 UKのプロデューサー、ティム・グリーン(Tim Green)の『Her Future Ghost』(Cocoon)。キャリアの長い人ですが、これが1stアルバムです。フロア向けの12インチ・シングルを数多くリリースしている人ですが、定番の四つ打ちのほかジャジーな変則ビートやプログレっぽいポリリズム、デペッシュ・モードを思わせるダークなエレクトロ、ディープなドローン・アンビエントなどリズム/サウンドは多彩に。映画のサウンドトラックを思わせるドラマティックでスケールの大きいサウンドスケープは、リスニング用として十分に練り込まれたことを示しています。ベテランらしい余裕と落ち着きを感じる良質のテクノ・アルバム。

Tim Green – Echo (COR12153)
Tim Green – The Incident – CORLP042
Surgeon『LUMINOSITY DEVICE』

 英国テクノの孤塁を守る大ベテラン、サージョン(Surgeon)の2年ぶり新作『LUMINOSITY DEVICE』(Dynamic Tension)。チベット死者の書にインスパイアされたというコンセプトはともかくとして、アナログ・シンセやモジュラー・シンセをスタジオ・ライブ形式で演奏したというサウンドは、強烈の一言。まさしくサージョンしかなしえない妥協なきストイックで辛口なハードコア・ミニマルです。各種ストリーミングで聴けますが、これはやはり音の良いクラブでヴァイナルのサウンドを大音量で体感したいところ。「テクノを聴いた!」という充実感にたっぷり浸らせてくれる大傑作。

Aisha Devi『DNA Feelings』

 ケイト・ワックス名義での活動も知られるスイス在住のアイシャ・デヴィ(Aisha Devi)の3年ぶり2作目が『DNA Feelings』(Houndstooth / Hostess)。DJ、プロデューサーでありボーカリストでもありますが、シンガーソングライター的な歌ものというよりは、エフェクトをかけた声を素材にしたサンプリング・ノイズ・ビート・エレクトロニカです。ビョークやFKAツイッグスがアラビックになったようなエキゾティックでエスニックなサウンドが個性と言えるでしょう。ライブではラップトップを操作しながら時折マイクを握って歌ったりしています。本作は1stに比べると少し音像が柔らかくなってとっつきやすくなった印象です。

Aïsha Devi – Light Luxury [Houndstooth]
Aïsha Devi – Inner State Of Alchemy [Houndstooth]
Aïsha Devi – Inner State Of Alchemy [Houndstooth]

 注目すべき作品はほかにもありますが、今月はここまで。ではまた次回。


■小野島大
音楽評論家。 『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』『CDジャーナル』などに執筆。Real Soundにて新譜キュレーション記事を連載中。facebookTwitter

      

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