『TABOO LABEL Presents GREAT HOLIDAY』ライブレポート

SPANK HAPPY、小田朋美を迎え再結成! 菊地成孔主宰『GREAT HOLIDAY』レポート

 菊地成孔主宰レーベル<TABOO>のレギュラーライブイベント『HOLIDAY』の集大成となる『TABOO LABEL Presents GREAT HOLIDAY』が5月13日、新木場STUDIO COASTで開催された。出演アーティストはDC/PRG、菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールのほか、ものんくる、けもの、JAZZ DOMMUNISTERS、市川愛、オーニソロジーの7アーティスト。さらに90年代から00年代半ばにかけて活動した菊地のユニットSPANK HAPPYが新メンバーとともに再結成を果たし、大きな話題を集めた。

 イベントのスタートは昼間の15時。オープニングを飾ったのは、菊地成好とペペ・トルメント・アスカラールだ。この日はタイムテーブルが事前に発表されていなかったのだが、フロアは既に超満員。いきなり代表曲「京マチ子の夜」が披露され、研ぎ澄まされた緊張感と官能的な解放感が共存する、凄まじいアンサンブルが響き渡る。その後も「嵐が丘」「キリング・タイム」「ルペ・ベレスの葬儀」とまさにベスト的な楽曲を演奏。ラテン、タンゴ、ラウンジ、現代音楽がマッシュアップされ、菊地が身体につけた香水とともに会場全体を夜の雰囲気へと変貌させる。菊地は「昼間からやるようなもんじゃないんですけどね。前座です」と苦笑していたが、TABOO LABELのファンには堪らないオープニングとなった。

 2番手はシンガーソングライター・辻村泰彦のソロプロジェクト、オーニソロジー。ロバート・グラスパー以降の現行ジャズ、フランク・オーシャンに象徴されるオルタナR&Bの系譜を感じさせる楽曲、日本語の歌詞を心地よくグルーヴさせるボーカルからは、日本のR&Bの新たな可能性が感じられた。DC/PRGのリズムセクションを交えた、質の高い演奏も印象的だった。

 続いては、菊地のプロデュースによる1stアルバム『MY LOVE,WITH MY SHORT HAIR』をリリースしたばかりの市川愛。フィーメール・ラッパーI.C.Iとして活躍していた彼女は、長い髪をバッサリ切り、大人の恋愛を歌う女性シンガーソングライターとしてリスタート。オルタナR&B〜ジャズのエッセンスを含んだ「二重生活」、フォーキーな手触りの「だめなあたし」など多彩な楽曲を披露し、観客にアピールした。「菊地さんのラジオ(TBSラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』)でアルバムの特集をしてもらったんだけど、なぜか私はスタジオに呼ばれず、自宅待機。嫌われてるのかな(笑)」など、緩めのMCも楽しい。圧巻はラストの「青い涙」。<君も知らない君を 僕だけに聞かせて>というラインを抑制の効いた歌声で紡ぎ出すシーンは、このイベントの最初のクライマックスだった。

 菊地本人の紹介によりステージに登場したのは、角田隆太(Gt)、吉田沙良(Vo)によるユニット、ものんくる。「SUNNY SIDE」「Driving Out Of Town」など最新アルバム『世界はここにしかないって上手に言って』の楽曲を中心にアッパーでブライトな音楽世界を描き出す。ジャズベースの先鋭的なアンサンブルとJ-POPユーザーにもリーチできるポップネスがひとつになった楽曲は、コアな音楽ファンが多数集まったと思われるこの日のイベントでも大いにパワーを発揮した。「今日は“GREAT HOLIDAY”。踊ろう!」と笑顔で語りかける吉田の姿も印象的。このライブを最後にものんくるはTABOO LABELを卒業するが、さらなる飛躍を期待したい。

 そして、12年ぶりの再結成となるSPANK HAPPYがついに登場。サブステージに姿を見せたのは、新ボーカリストOD a.k.a. 小田朋美、Boss TheNK a.k.a. 菊地成孔。菊地が、ヘアスタイル、衣装(裾にフェザーがついたシャツワンピース。PRADA2018年クールズコレクションで発表された新作)を整え、まずはエレクトロ・ポップ・チューン「Ennuie Electronique」をパフォーマンス。ふたりのシンクロダンスが決まるたびに会場から「ウォー!」という野太い歓声が上がる。両性具有的な雰囲気のODのビジュアル、ボーカルが恐ろしく魅力的だ。さらに新生SPANK HAPPYの第1弾楽曲「夏の天才」。高度な音楽理論に裏打ちされたアレンジメントと夏の爽やかさ、エロさを描き出すポップネスがひとつになったこの曲からは、新生SPANK HAPPYに対する二人の高いモチベーションがしっかりと感じられた。単独公演、夏フェスへの出演も決定。この先の活動にもぜひ注目してほしい。

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