平井堅、“心の暗闇”を解放する歌詞が支持される理由 Mステ披露「知らないんでしょ?」を機に考察
平井堅が5月30日に通算44作目となるニューシングル『知らないんでしょ?』(5月17日から先行配信スタート)をリリースする。テレビ朝日木曜ドラマ『未解決の女 警視庁文書捜査官』主題歌としてオンエア中のこの曲について、平井は「罪を犯す人、暴く人、裁く人、運命次第で紙一重。我々はある意味、胸の内の罪を未解決のまま、抱えたまま生きているのかもしれません。『知らないんでしょ?』が聞く人の胸に刺さる事を願っております」とコメント。この言葉が示唆する通り、「知らないんでしょ?」のなかで彼は、どんな人の心のなかにも存在している罪の意識、そして、決して他人には知られたくない暗い思いを映し出している。
平井堅はここ数年、人間の暗部を強く反映させた名曲を次々と生み出してきた。まずは「告白」(2012年)。ドラマ『Wの悲劇』(テレビ朝日系)の主題歌に起用されたこの曲のテーマは、決して満たされることのない女性の欲望。それをもっとも端的に示しているのが<愛が欲しい ただそれだけなのに 巡れど巡れど闇は闇>というフレーズだ。本当の愛を求めながらも、決して手に入れることができない絶望を描いたこの曲は、救いや希望がどこにも見つからず、心の底が抜けたように暗闇だけが果てしなく広がっていく。平井自身もリリース当時「どこかに一筋の希望の光を。そう意識して普段は曲を書く様にしているのですが、今回は、誰もが心のどこかに持つ『絶対的闇』『圧倒的絶望』をテーマに作りました」というコメントを寄せていた。「告白」をリリースした時期、つまり平井が40代になった頃から、ダークな部分の描き方がより直接的になってきたと言えるだろう。
昨年リリースされた「ノンフィクション」も、強いインパクトを残した。ドラマ『小さな巨人』(TBS系)の主題歌「ノンフィクション」は、親しい友人が自ら命を絶ったことに衝撃を受けた平井が、人生の不条理、哀しみをストレートに綴ったミディアムチューン。<何のため生きてますか? 誰のため生きれますか? 僕はあなたに あなたに ただ 会いたいだけ>という歌詞もそうだが、近しい人を失くした悲しみ、今を生きる人々に“生きる意味”を問うメッセージをどこまでも率直に歌い上げるこの曲は、まさにノンフィクション的な生々しさを備えている。
もう1曲、平井がJUJUに提供した「かわいそうだよね (with HITSUJI)」(JUJUのアルバム『I』収録)も改めて紹介しておきたい。<「あの子ってかわいそうだよね」いつも陰で笑っていた>から始まるこの曲で平井は、“私はあの子よりもマシだ。いい人生を送っているはずだ”と自分を思い込ませようとしている主人公の女性が“違う、かわいそうなのは私だった”と気付くまでを描いている。あまりにもリアルな言葉に説得力を持たせるJUJU、HITSUJIこと吉田羊の表現力も相まって、「かわいそうだよね」は世代を超えたリスナーの間で共感が広がっている。男女、年齢に関わらず“自分はあの人と比べてどうか?”という自問自答から逃れられない。そんなあからさまな事実を、この曲は強く突き付けているのだ。