『ユアネス presents「うつ伏せになっていた午後の授業」』
ユアネスが東京初ワンマンで示した、過去の延長線上にある今と未来
「メンバーと長くずっと一緒に……一緒にいたいと思ってるので。長く長く一個一個しっかり音楽やっていきたいと思います」(黒川侑司)
ユアネスが、4月14日に東京・TSUTAYA O-nestにて、東京での初ワンマンとなる『Ctrl+Z Tour 2018』東京公演『ユアネス presents「うつ伏せになっていた午後の授業」』を開催した。福岡にて結成されたユアネスは、黒川侑司(Vo/Gt)、古閑翔平(Gt)、田中雄大(Ba)、小野貴寛(Dr)の4人からなるロックバンド。
ポストロックやミクスチャーロックなど、様々なジャンルが合わさった複雑で重厚なバンドアンサンブルと、心のダムを決壊させたかのような黒川のエモーショナルな歌声が絶妙に混ざり合い、観る者に“あの頃”を思い出させる。そして優しく包み込むように、感情を奥底から引きずり出してくれるような、不思議なバンドだ。
以前、3月21日にリリースされた初の全国流通盤『Ctrl+Z』についてのインタビューした際に、古閑はこんなことを語っていた。「嫌な過去と向き合うのは辛いですし、楽しかった過去も思い出すと切なくなるから嫌だという人もいる。僕だってもちろん、過去を振り返って辛い気持ちになるときもあるけど、でも、今の自分がこうして存在しているのは、昔の自分があったからだと思っていて」(引用:ユアネスが語る、楽曲の根底にある“センチメンタリズム” 「何か人生にいい影響を与えられたら」)。
ユアネスの楽曲の根底には、常にセンチメンタリズムやノスタルジアがあり、今回のワンマン公演のタイトルも「うつ伏せになっていた午後の授業」と“懐かしいあの頃”を想起させる。まるで、教室の中で西日に包まれながら眠るような、そんな温かくて郷愁を感じさせるライブであった。“Ctrl+Z”を押してあの頃にundo(元に戻す)し、過去から繋げてきた今のユアネスを見せつけることで、その延長線上にある未来でも“この大好きなメンバーでずっと音楽をやっていく”という強い意志を感じさせた。
この日は、東京での初めてのワンマンライブ。『Ctrl+Z』の中から新曲「虹の形」、「あの子が横に座る」、「cinema」、「Bathroom」、「100㎡の中で」などが演奏された。いつも通りメリハリあるドラムで、基盤を築く小野。緻密にリズムを刻みながらも、時に激しくダイナミックに打ち鳴らしていく彼の姿に、思わず見惚れてしまう。また「虹の形」では古閑の精密で情緒的なギターリフが光り、「あの子が横に座る」では田中のノイジーでうねるようなベースラインが観客を魅了する。
<夢を見てた/そっと淡い夜風が><あの日の言葉を呼び覚まして><巡る巡る走馬灯のよう>という黒川のボーカルから始まる「100㎡の中で」。綺麗な歌声が会場に響き渡り、思わず息を飲んだ。追って、ギター、ベース、ドラムが一斉に走り出す。それぞれが変拍子のリズムを刻みながらポップなメロディを紡ぎ出し、完璧なグルーヴを生んでいった。安定した田中のウォーキングベースがなんとも心地いい。
そして「Bathroom」では、壮大でドラマチックなサビに感極まり涙する観客も見られた。黒川の消えてしまいそうなほど繊細な高音と優しく包み込むような低音の歌声が、まっすぐと伸びていき、センチメンタルなアンサンブルと絡み合う。なんて美しいのだろうか、と思わずにはいられない。一音一音が私たちの体の奥底にまでしっかりと届けられていく。