androp 内澤崇仁、Aimerコラボ曲で伝えたメッセージ 「音楽は人を救うものだと信じてる」

androp、Aimerコラボの裏側

 andropのニューアルバム『cocoon』に収録された「Memento mori with Aimer」は、スピーカーのL(左)に内澤崇仁(Vo / Gt)、R(右)にAimerのボーカルが入り、“演奏、メロディ、歌詞が異なる楽曲が同時に進行し、ひとつの物語を描く”という独創的なコンセプトを持った楽曲。“死を想え”というタイトル通り、内澤崇仁の死生観が色濃く反映され、二人の感情的なボーカルが絡み合うこの楽曲は、アルバムを聴いたオーディエンスから大きな反響を呼んでいる。

 今回リアルサウンドでは「Memento mori with Aimer」に焦点を当てたインタビューを企画。Aimer本人からもコメントをもらいながら(インタビュー最後に全文掲載)、この楽曲の制作プロセス、歌詞に込めた想いなどについて、内澤に語ってもらった。(森朋之)

「Aimerさんしかないと思った」

ーーアルバム『cocoon』がリリースされてから1カ月以上が経ちました。リスナーからの反応について、どう捉えていますか?

内澤崇仁(以下、内澤):みなさんどんなふうに聴いてくれているのか(笑)。自分自身のことで言えば、締め切りのギリギリまで制作を続けていたアルバムなので、やっと落ち着いて聴けるようになりました。ホールツアー(『one-man live tour 2018 “cocoon”』)に向けて曲をかみ砕くように聴いているところもあるし、「これをしっかり伝えるためには、どういう演出、どういう歌い方がいいか?」と考えたりもしてますね。

androp 「Memento mori with Aimer」teaser (from new album『cocoon』)

ーー音楽的なトライも多い作品ですが、なかでも「Memento mori with Aimer」はアルバムを象徴する楽曲の一つだと思います。“LとRで異なる楽曲が同時に進行する”というアイデアは、かなり前からあったそうですね。

内澤:最初に思い付いたのは8年くらい前、andropを結成する前ですね。バンドとして活動しはじめたときも、メンバーに「こういう楽曲の構想があるんだよね」という話はしていて。それがやっと形になりました。

ーーかなりユニークな発想だと思いますが、どういうきっかけでこの楽曲のコンセプトを思い付いたんですか?

内澤:最初はただ単に「CDプレイヤー2台で違う曲を同時にかけて、それがひとつの曲に聴こえたらおもしろいだろうな」と思ったんです。思いついた当時はちょうどネットで音楽を聴くことが当たり前になってた時期だったから、「CDプレイヤーは無理でも、ネットで聴いてもらえれば大丈夫かもしれない」とか。あとは現代音楽の影響もあるかもしれないです。様々な環境音やノイズを融合させて音響的な空間を作るという表現がありますけど、それを歌、ポップスとしてやっている人はいないだろうなって。でも、最初は全然上手くいかなかったですけどね。思い立って作ろうとするんだけど、「同じコード進行がいいのか、それとも違うコード進行のほうがいいのか」「楽曲の構成は? 使う楽器は?」と考えなくちゃいけないことが果てしなくて、なかなか形にならなかったんです。いろいろな可能性があるぶん、0から1にする作業がすごく難しくて、挫折を繰り返していました。

ーー高度な音楽的知識、メソッドを求められる楽曲だった?

内澤:確かにいろんなギミックを使える楽曲なんですけど、自分としては頭のなかにある音像をそのまま落とし込もうとしていたんですよ。いま振り返ってみると、そのときに持っていた知識やセオリーでは作れなかったんだと思います。実際「いまは無理だけど、いつか実現したい」という感じだったんですよね。メンバーに話しても、あまりピンと来てなかったみたいだし。当時は冗談で「女性アーティストに参加してもらうなら、椎名林檎か宇多田ヒカルがいい」とか話してました(笑)。

ーー無邪気ですね(笑)。内澤さんだけではなく女性の声も必要というのは、当時からはっきりしていたんですか?

内澤:そこまで明確ではなくて、「自分一人で歌ったほうがいいのかな」とも思ってましたね。ただ、相反するものを表現したかったので、だったら違う性別のシンガーに参加してもらったほうがいいのかなと。そこで起きる化学反応も見てみたかったというか。

ーーなるほど。実際に「Memento mori with Aimer」の制作が始まったのはいつ頃ですか?

内澤:デモ作りを始めたのは『blue』(2016年10月リリースのアルバム)を作り終えた後くらいですね。そこから作っては再考することを繰り返して、ある程度人に聴かせる形になったのは『Prism』(2017年5月リリースのシングル)の後かな。僕としては「やっと形にできそうだ」という気持ちもあったし、シングルとして出したかったんだけど、みなさんに聴いてもらったら「(シングルとしては)長い」という意見が出て。

ーー8分超えの楽曲ですからね。

内澤:そうなんですよね(笑)。僕も「そうか」と納得して、アルバムに収録することを目指して、さらにブラッシュアップしていったんです。歌をLとRにしっかり振り分けた段階で「やっぱり女性ボーカルに歌ってもらったほうがいい」と思って、誰にお願いするか考えて。実際にAimerさんにオファーしたのは年末の『COUNTDOWN JAPAN』のときでした。たまたま同じ日に出演することになっていたので、直接お願いしました。

ーー内澤さんはAimerさんのアルバム『daydream』(2016年9月)に「カタオモイ」「twoface」を提供しています。そのときの印象はどうでした?

内澤:楽曲を提供させてもらったときに初めてお会いしたんですが、キーチェックのためにスタジオに入ったときの印象がすごく強くて。まだ歌詞ができてなくて“ラララ~”で歌ってもらったんですが、曲の表現力があまりにもすごくて、鳥肌が立つほど衝撃的だったんです。そのことがずっと忘れられなくて、「Memento mori」を形にしていく段階で「この曲をいちばん表現してくれるのは、いままでの人生のなかで知っている限りAimerさんしかない」と思いました。ただ、「たぶん歌ってくれないだろうな」という心配もあったんです。Aimerさん自身もツアー中だったし、この曲は“LとRで同時に進行する”というコンセプト、楽曲の構成も特殊だし。ゲストボーカルを迎える曲って、「Aメロは僕、Bメロはゲスト、サビは二人で」みたいなパターンが普通だけど、そういう曲ではないですから。『COWNTDOWN JAPAN』のときも完全にダメ元というか、正直、「言うだけ言ってみよう」という気持ちでお願いしたんだけど、その日のうちにOKを頂けて。「え、ホントですか?!」という感じだったし、すごく嬉しかったですね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる