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『やなぎなぎ ライブツアー 2018 ナッテ』

やなぎなぎ、『ナッテ』ツアーファイナルで見せた“クリエイティブへの情熱”

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 ここからはアルバム外の“宝物”として、TVアニメ『覇穹 封神演義』のエンディングテーマ「間遠い未来」や、やなぎがキャラソンとして楽曲提供した『Just Because!』のエンディングテーマ「behind」の貴重なセルフカバー、ゲーム『ノルン+ノネット アクト チューン』のテーマ曲「play of color」、南條愛乃とのコラボ曲「一切は物語」のソロ披露など、近年に発表したトピカルな楽曲を次々と歌唱。音楽家として多様な活動を行っている彼女ならではのパートと言えるだろう。そこからTVアニメ『ベルセルク』のテーマ曲繋がりで『ナッテ』収録曲「瞑目の彼方」でホーリーな美声を響かせ、バンドメンバーの紹介を挿んだ後に新曲「無形のアウトライン」も初披露。『覇穹 封神演義』の新エンディングテーマでもある本楽曲は、曲提供した石川智晶らしい陰のある旋律がやなぎの儚げな歌とマッチした神秘的な1曲となっていた。

 MCで「『ナッテ』という作品は全体を通して派手なわけではないですけど、その分1曲1曲がささやかにキラキラしている宝物のような曲になったので、みなさんにとって何十年もそばにあるような1曲になってくれればと思っております」と語ったやなぎは、再度アルバム収録曲のパートに戻って弦楽とハーモニーが美しく折り重なる「砂糖玉の月」へ。そこからrionos提供の「目覚めの岸辺」でスノードームに映し出された海の景色を伴って優しく歩を進め、『ナッテ』のリードトラックにもなっていた北川勝利のペンによる「夜明けの光をあつめながら」へと続ける。日常の何気ないような光景にやさしい気持ちを見出すようなMV、まるで朝焼けのように灯る照明といった視覚的な情報も合わさって、そこには言葉にはし難い感動的なひと時が訪れていた。ライブ会場というスノードームの中に、やなぎなぎの音楽という「宝物」を媒介に集まったたくさんの人々の心が「綯って」ひとつになった瞬間だ。

 ライブ本編のラストを飾ったのは、もちろんアルバムの最後に置かれていた楽曲「natte」。「みなさん今日は宝物を一緒に作り上げていただいて、本当にありがとうございました」と語った彼女は、ピアノのシンプルな伴奏に乗せて、息遣いも伝わるような親密な歌声で<触れないけど 見えているよ 君が集めた大事なものが>と届けていく。最後は言葉の一音一音をゆっくりと噛みしめるように、余韻たっぷりに『ナッテ』の世界の幕を引いた。去り際、やなぎ自身が「では、また次の世界でお会いしましょう」と語ったように、まさに『ナッテ』というアルバムの世界観をそのままギュッと封じ込めたステージだったように思う。

 この後、アンコールで再度ステージに現れたやなぎは、代表曲でもあるライブで鉄板のアップチューン「春擬き」を皮切りに4曲をパフォーマンス。クラップやコール&レスポンスで一体感を生んだ「rooter’s song」では、途中のバンドメンバーによるソロ回しのパートでやなぎもショルダーキーボードを手にその腕前を披露。さらに「私の活動の中でもすごく大切な出会いになった1曲」と前置きして、昨年のクリスマスイブにサプライズ配信してファンを喜ばせたryo(supercell)×やなぎなぎ「メルト 10th ANNIVERSARY MIX」を歌唱し、オーディエンスを熱狂の渦へ。「この曲をまたみなさんと楽しめる日がくるというのはうれしいことですね」という言葉にジンときた人も多かったはずだ。そして「最後はこの曲でハッピーに終わりたいと思います」と語り、やなぎなぎ名義でのメジャーデビュー曲「ビードロ模様」で笑顔で楽しそうに締め括り。みずからの描いた世界観をステージ上に構築する表現者としての彼女と、メジャーデビューからの6年間で磨き上げた力量を発揮するパフォーマーとしての彼女ーーその両輪が見事に噛み合ったやなぎなぎのライブは、ドキュメント性を伴ったひとつの創作物として、彼女の活動に欠かせないものとなっているようだ。

■北野 創
音楽ライター。『bounce』編集部を経て、現在はフリーで活動しています。『bounce』『リスアニ!』『音楽ナタリー』などに寄稿。

      

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