Shuta Sueyoshi、日本武道館公演で示したエンターテイナーとしての才覚 「このステージは通過点」

Shuta Sueyoshi、日本武道館公演レポ

 Shuta Sueyoshi 初の全国ツアー『Shuta Sueyoshi LIVE TOUR 2018 -JACK IN THE BOX-』が、4月11日に東京・日本武道館でファイナルを迎えた。今年1月にShuta Sueyoshiとしてリリースした、初のソロアルバム『JACK IN THE BOX』に際して2月から全7公演で開催されたツアーで、この日は追加公演として8,000人の観客を動員。歌とダンスで魅せて聴かせるだけではなく、イリュージョンのような演出や無声映画風のコミカルなダンスパフォーマンスも披露。びっくり箱を意味するタイトルの通り多彩な仕掛けが満載だった。

 ステージを覆った赤いカーテンが開くと、そこにはロープで椅子に縛り付けられたクマが目に留まる。激しくギターが鳴り響くとステージはスモークに包まれ、次の瞬間にはクマがShutaに早変わりというイリュージョンのような演出でライブがスタートした。1曲目の「Shall We!!」では、激しいバンドサウンドに乗せて、赤いロープをふりほどこうと、もがくようにして歌うShuta。「行くぞ武道館。アーユーレディ!?」という言葉に、満杯の武道館が歓声で沸き立った。<千夜に一夜の夜を始めようか>という歌詞のままに、特別な夜が始まった。

 この日のステージは、全16曲、約1時間45分というコンパクトなサイズ感だったが、そのぶんShutaの想いとアイデアが凝縮されたものになっていた。この日のステージについて、こう説明したShuta。

「スタッフとかいろんな人とたくさん話し合って、このステージを組むことができました。俺の性格的に長くライブをやらないというのがあって、2時間もないと思うけど。Zepp Tokyoとも違った演出になっています。ちょうど1本の映画を観るくらいの時間だと思うので、今日は映画を1本観て帰るくらいの気軽な気持ちで観ていってほしいです。今日のこの空間、ステージを、ぜひ目に焼き付けて帰ってほしい。それでは楽しんでください」

 実際に前半戦にはダンサー4人と共に、一切セリフを発せずにパントマイムとダンスでコミカルな物語を展開した。それはチャップリンの無声映画を観るような演出で、パフォーマーとしてのポテンシャル高さと、さらなる可能性を感じさせるものだった。たとえば、音と光の出る階段で遊ぶダンサーを遠目から羨ましそうに観ていたShutaが、興味なさそうなふりをして近づきこっそり遊ぶとか、花束を取り出して誰に渡すかでドタバタを繰り広げるくだりなど。感情や表情を如実に表した動きが実にコミカルで、会場に笑いが巻き起こっていたことが、表現力の高さを物語っていた。

 また後半に聴かせた、バラードの「My First Love」や、ミディアムナンバーの「体温」では、表現力豊かで情感たっぷりの歌声で観客を魅了した。「My First Love」ではビジョンに、愛らしいキャラクターが切ない物語を繰り広げる絵本のような映像と歌詞が映し出され、観客はShutaの歌声と映像に没入し、静まりかえった武道館には切なさが広がった。また「体温」は、ダンサーと横1列に並んでのパフォーマンスを繰り広げながら歌い上げる。ステージがせり上がって階段状になったりするなど、シンプルだが視覚的に工夫された演出が目を引いた。音の世界観をそのまま動きに反映させたようなダンスも秀逸で、観客は一つも見逃すまいといった雰囲気で静かに食い入るようにしてステージを見つめた。

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