『スマスマ』『ロンバケ』1996年が転換点に 中森明夫×太田省一『テレビとジャニーズ』対談

“平成の終わり”に迎える変化

中森:まもなく平成が終わりますよね。ジャニーズもジャニーさんが引退を迎えて現役でなくなったらどうなるのかなと思うことがあります。

太田:ちょっと大げさで恐縮なんですけど、ジャニーさんがもし直接関わらなくなったら、ジャニーズのなかにある戦後民主主義的なものがかなり変わることになるんじゃないかなという気がしています。ジャニーさんが以前蜷川幸雄さんのラジオで「アイドルづくりは人間づくり。成長しない子どもは一人もいない」と断言していて、それが僕にとってはすごい衝撃だったんですね。そこまで断言できる自信がすごいなと。どんな子でもいいところがあって絶対成長できる。その考え方は、平たく言えば、戦後民主主義なんですよ。ジャニーズが野球チームから始まったというのもそうなわけで、野球は適材適所、どこかのポジションで活躍できるというスポーツじゃないですか。

中森:戦前からあったにせよ、野球は民主主義ですよね。戦後のGHQの瀬戸内少年野球会はまるっきりそうだし、寺山修司さんもキャッチボールで民主主義というボールを受けて、そこから始まったというのは象徴的です。

太田:おそらくジャニーさんの中では少年イコール日本人というか、みんなが成長していく社会という理想を持っている。あるいはそういうものに自分の力を使いたいというのが強い人なんだろうという気がしています。ジャニーさんが今のジャニーズに関わらないようになるならば、組織、集団としても必然的に相当違ってくると思っています。

中森:ある意味テレビに関してもそうですよね。もともとテレビができたおかげで視聴者としての平等が生まれ、1家に1台という時代がなんとなく変わりつつあって。今ではテレビを持っていない人だっていますからね。

太田:僕もテレビは戦後を象徴するメディアだと思っているので、ジャニーズとテレビは基本的にはとても相性がいいものだというのが書きながら感じたことですね。

ジャニーズは今後テレビでどう活動を広げる?

太田:最後にお聞きしたいのですが、2000年代後半以降、AKB48がブレイクしてから女性アイドルブームが続いてきたわけじゃないですか。でも、例えばTOKIOが『ザ・鉄腕!DASH!!』でお茶の間人気を獲得したように、テレビにおいてそういったポジションを築いた女性アイドルが出てきていないのはなぜだと思いますか?

中森:AKBグループはじめ、女性アイドルはメンバーがコンスタントに卒業していく、宝塚のようなスタイルだということがあるのかなと。だからといって人気メンバーが卒業後女優など個人で活動したとしても、グループにいた時のポテンシャルは保てていない。ジャニーズのようにグループにいながらーーTOKIOの長瀬智也さんのように宮藤官九郎作品でおなじみ、というようにもならないんですよ。また握手会がなくなるのことでのファン離れが激しいということもありますね。アイドルの寿命が長くなったという話をよく耳にしますけど、長く生きていくためには自らのポジションをしっかり取っていくということがとても重要なんだと思います。V6なんかすごいですよ。井ノ原快彦さんが『あさイチ』でさらに人気が出たように、メンバーたちは結婚後もさらに活躍の幅を広げていますから。

太田:ジャニーズはテレビにおいて今後どのような場に活動を広げていくと思いますか?

中森:ジャニーズが進出していないのはどの分野だろうと考えると、スポーツに詳しいメンバーはいるけれど、相撲はいないので出てくる可能性があるかとか。探せばまだまだあるとは思いますけど、一定の限界はあるんじゃないかとは思いますね。例えば政治。キャスターはできるけど、『朝まで生テレビ!』に出られるようなメンバーは現れるかとか。お笑いであれば、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんが出ていますけど、どこかの政治家に肩入れしたり、今だったら森友問題を語らないといけなくなる。やっぱり政治的なバイアスがかかるような発言は求められないじゃないですか。そのへんですよね。ただ、頭のいい人もたくさんいるし、これから政治家を目指す人が出てきてもおかしくはない。都議会・県知事くらいなら可能性もありますよね。能力も人気もある人たちが集まっていますから。

(構成=編集部)

太田省一『テレビとジャニーズ 〜メディアは「アイドルの時代」をどう築いたか?〜』

■書籍情報
『テレビとジャニーズ 〜メディアは「アイドルの時代」をどう築いたか?〜』
発売:2018年2月21日(水)
価格:¥1,600+税
判型・頁:四六判・248頁

全国書店/Amazonにて発売

<著者プロフィール>
太田省一(おおた・しょういち)/1960年生まれ。社会学者、文筆家。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。専攻は社会学、メディア論、テレビ論。著書に『木村拓哉という生き方』『中居正広という生き方』『社会は笑う・増補版』(ともに青弓社)、『SMAPと平成ニッポン』(光文社)、『ジャニーズの正体』(双葉社)、『芸人最強社会ニッポン』(朝日新聞出版)、『紅白歌合戦と日本人』『アイドル進化論』(ともに筑摩書房)など。WEBメディア「Real Sound」ではコラム『ジャニーズとテレビ史』を連載。

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