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『スマスマ』『ロンバケ』1996年が転換点に 中森明夫×太田省一『テレビとジャニーズ』対談

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 社会学者・文筆家である太田省一氏の書籍『テレビとジャニーズ 〜メディアは「アイドルの時代」をどう築いたか?〜』刊行を記念し、リアルサウンドではアイドル評論家の中森明夫氏と太田氏による対談を企画した。

 『中居正広という生き方』、『SMAPと平成ニッポン』などを著書に持つ太田氏の最新刊は、タイトルどおり「テレビとジャニーズ」がテーマ。長きにわたり共に歩んできた「テレビ」と「ジャニーズ」2つの軌跡を追った、現代メディア・アイドル論の最新版だ。同書の内容を軸として太田氏がテレビでのジャニーズの活躍から感じ取ることや、『スマスマ』と『ロンバケ』が始まった1996年について、さらにジャニーズと女性アイドルたちの活躍の違いなど、中森氏と太田氏双方の視点からの議論がなされた。(編集部)

SMAPのバラエティ展開と、ジャニーズのエンタメ哲学

太田省一『テレビとジャニーズ 〜メディアは「アイドルの時代」をどう築いたか?〜』

中森:まずお聞きしたいのですが、SMAPの解散についてこの本ではほとんど触れていないですよね。執筆対象期間に起こった出来事だと思うのですが、どういう意図があるんでしょう?

太田:この本に掲載しているコラムは全て、一つのメディア論として書いているということですね。芸能界における諸事情ーー例えば、SMAPの解散の真相のようなことは僕には正直分からない領域でもある。あくまで「テレビ」と「ジャニーズ」の関係性がメインにある本なので、SMAPの解散云々には今回は触れないでおこう思いました。でも、そういった要素はなしにしても、SMAPがテレビの中で証明したジャニーズの存在意義については書かれていると思います。

中森:というと?

太田:別の本のなかで、僕自身、SMAPはジャニーズの正統なのか異端なのかと考えたことがあったんです。ジャニー喜多川社長が一貫した目標としてミュージカルや舞台での活躍を置いていたとするならば、SMAPはテレビで成功した存在なので異端と言える。一方で、彼らの成功がジャニーズ全体の活動にかなり大きく道を拓きましたよね。特に『SMAP×SMAP(スマスマ)』を代表としたバラエティの分野での活躍があったわけですが、その特徴は、音楽、コント、ダンス、フリートーク、さらにドラマやドキュメンタリーの要素まで「なんでもあり」ということです。原則がないことが原則というか。でも、そういった「なんでもあり」の部分は、ジャニーズのエンタメ哲学そのものであるという捉え方もできると思うんです。ジャニーさんプロデュースの舞台を見ていても、和と洋、新と旧、さまざまな要素をなんでも取り入れ共存させていく中で化学反応を起こさせていますからね。そう捉えると彼らはジャニーズの正統とも言えるんです。

中森:なるほど。本全体の印象としても、あまりネガティブなことが書かれていないと感じたのですが、これはご自身のスタンスなのでしょうか? 芸能記者がよく取材をしているタレントに対してネガティブなことを書きにくくなるということは稀にありますが、太田さんは記者ではないし、基本的には何でも書くスタンス。でも、その上でポジティブなことのみを取り上げるということに、やはり書き手としての太田さんの考え方が出ているのかなと思いましたね。

太田:それはこの本に限らず、自分の中にある考えですね。建前を書くということではなく、基本的に執筆対象の持つ可能性について書きたいという思いがあるんです。僕自身、ジャニーズもそうだし、広く言えば女性アイドルも含めたアイドル全般の存在に助けられている部分があって。また、社会学者として見た時に、今の社会・時代もアイドルたちの存在に助けられている面があるんじゃないかなと。そういうことが伝わるように書きたいという思いはずっとあります。

中森:読み進めるとわかるように、太田さんはジャニーズの各グループやメンバーの特色を微細に分析されていて、個々のテレビでの活躍や各グループの状況についても本当に詳しいじゃないですか。これは連載のためにチェックしていたんですか? 元々ジャニーズの番組を見るのが好きなんですか? 連載抜きで全部の番組をチェックするのはさすがにできないかなと思うのですが。

太田:もともと好きでしたが、連載用にさらに見た、というのはあります。信じてもらえないかもしれないけれど、基本は全部チェックしようという気持ちはあります(笑)。

中森:同書のメイントピックでもある「テレビとジャニーズの55年史」の結論が「ジャニーズという世界の深堀りになっていった」という見立ては面白いですよね。ジャニーズって、そこがやっぱりジャニーズなんですよ。例えば女性アイドルではAKB48グループや坂道シリーズといった秋元康プロデュースのグループが巨大ではあるけれど、それ抜きでも「女性アイドル論」は書けると思うんです。ところがジャニーズは「男性アイドル」を独占している。「ジャニーズ」が一つのジャンルになって、ジャニーズ自身がジャニーズを深堀りするようになっていった。その見立てがこの本の中でも一番面白かった部分ですね。

太田:そこをピックアップしていただけるのはすごく嬉しくて、なぜならそこに結論を持っていくのが自分の中での狙いだったんです。僕はジャニーズファンというか、ジャニーさんファンみたいなところがあって(笑)。社会学的な観点から見ると、ジャニーズは戦後日本そのものであり、もちろんその中にはテレビの発展が同時にある。その二つの関係はどういうものなんだろうというのが、この本で一番追求したかったことなんです。「ジャニーズの深堀り」は、僕の「ジャニー喜多川とはどういう人なのか」という思いにもつながっている。「YOU、◯◯しちゃいなよ」というフレーズにもあるように、ジャニーさんの存在はジャニーズのタレントたちによって一種ギャグ化されている一方で、神秘化もされているじゃないですか。でも僕にとっては、ジャニーさんがずっとやってきたこと、あるいはこれからやろうとしていることって、実際なんなんだろうという思いがずっとあるんです。

中森:ジャニーさんって不思議なありようですよね。ジャニーズのタレントたちが番組でモノマネをすることがネタになっていて、見たこともないのにそれを見て我々がウケるという。テレビという媒体がなければそういう状態にはならなかったわけですし、不思議なカリスマ性というか。

太田:彼の本質にはすぐにはたどり着けない気がしているんだけれど、細部を見ていく中で、「ジャニーさんが目指すエンターテインメント」のヒントが掴めるんじゃないかという思いはありますね。だからこそ、ジャニーズのテレビでの活躍を細かく追っているのかもしれません。

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