Little Glee Monster、“様々な挑戦”が結実 アリーナツアー千秋楽を見て

リトグリ、アリーナツアー千秋楽を見て

 Little Glee Monsterのアリーナツアー『Little Glee Monster Arena Tour 2018 - juice !!!!!』が3月25日、大阪城ホールにて千秋楽を迎えた。彼女たちにとって初のアリーナツアーとなった今回は、2月3日、4日に横浜アリーナ、3月24日、25日に大阪城ホールの計4公演と決して数は多いものではなかったものの、彼女たちにとって大きなチャレンジだったことは間違いない。

 筆者は2月3日の初日公演を観覧しているが、その際に「今の彼女たちの勢いと自信がみなぎる、ポジティブな空気に満ちたステージ」「本人たちやスタッフが感じるツアー初日らしい荒さはあったのかもしれない。しかし、筆者の目にはそういったマイナス面はあまり入ってこなかったし、むしろ力強く張りの良い歌声はベストといえる状態だったように思う」と感想を残している(参照:Little Glee Monsterが横アリ公演で見せた、ポジティブな空気に満ちたステージ)。あの初日から2カ月近くたち迎えたツアーファイナル、通常ならこれだけ間が空いたらツアー序盤のテンションをキープするのも一苦労だと思うが、今のリトグリに対してそんな心配は無用だったことを改めて今回の大阪城ホール最終公演で思い知らされた。

 計4万人を動員した今回のアリーナツアーは、オープニングに場内のガオラー(=リトグリファンの総称)を巻き込んだ演出が用意されている。これは、事前にYouTubeにて公開された「リトグリと一緒に『Love To The World』を1万人で歌おう!」動画を観て「Love To The World」を練習してきたガオラーとともに、ライブで一緒に歌おうという企画だ。

大阪城ホールでリトグリと一緒に「Love To The World」を1万人で歌おう!

 横浜アリーナ公演でも実施されたこの企画だが、ツアー最終日、そしてメンバーの多くにとって地元となる大阪での公演とあって、リトグリが初期から出演しているMBSの情報番組『ちちんぷいぷい』の出演者などを交え、開演前からハーモニーの練習が繰り返される。全4公演中でもっとも大きな歌声が響いたのではないかと思われる状況下で会場が暗転すると、ステージセット後方にリトグリ5人のシルエットが浮かび、そのままアカペラで「Love To The World」を歌いライブをスタートさせた。彼女たちがステージに現れた瞬間、場内には悲鳴にも似た大歓声が沸き起こる。主に女性の声援が多く感じられたが、こういった“同性からの支持”の厚みからも今のリトグリの人気ぶりがホンモノであることが伺える。

 「Love To The World」から「だから、ひとりじゃない」へと続く序盤2曲を聴いて改めて感じたことだが、会場の違いもあってか、横浜アリーナで観たときと比べてメンバーの声、バンドの出音の鳴りがまったく異なって聴こえる。この日は横浜アリーナ公演と比べてよりタイトに感じられ、生々しさがダイレクトに伝わってくる印象が強かった。そのせいもあって、メンバーの歌声はホール会場で聴くそれとなんら変わらず、むしろ彼女たちの歌声の良さがベストな状態で届けられる環境だったのではないだろうか。過去にも大阪城ホールで何度もライブを観ているが、ことリトグリに関しては初めてだったこともあり、この新たな発見に驚かされた。

 2曲歌い終えると、メンバーは満面の笑みで「みんなの声、ツアーファイナルだからか、一番大きかったよ」とオープニングの「Love To The World」合唱に触れる。続いて芹奈は「『Love To The World』の声を聴いて、今日は絶対に良い日になると確信しました!」と宣言。この言葉を受けたガオラーたちはさらに熱気を高め、そこから「SAY!!!」に突入すると手にしたタオルを頭上高くに掲げる。

 個人的に興味深かったパートのひとつがこのブロックのセットリスト。最初期の楽曲「SAY!!!」や「HARMONY」と、最新ナンバーである「OVER」「Gift」「Get Down」を織り交ぜた構成は不思議と違和感なく楽しめた。また、そういった楽曲を歌う際、5人は巨大なステージセットやアリーナ中央に設置されたサブステージを目一杯使ってパフォーマンスするのだ。その動きもすごくナチュラルだし、合間に見せるメンバー間のじゃれ合い含め、昨年1月の初武道館公演(参照:Little Glee Monster、“最初の夢”武道館公演を達成 360度ステージで響かせたハーモニーの強靭さ)と比べるとだいぶリラックスしてライブに臨んでいたのではないだろうか。

 そして、このブロックで披露した「Gift」「Get Down」の2曲……最新アルバム『juice』の中でも挑戦的な新曲を連発するこのパートこそ、リトグリの未来を占う上で非常に重要な鍵となる気がした。「Gift」で聴かせる力みすぎない歌、それとは相反して「Get Down」ではダンスを交えてパワフルに歌う姿。この2つの要素は、3月に発売された最新シングル『ギュッと / CLOSE TO YOU』にも引き継がれているように思う。

 バンドメンバーによるセッションパートを挟んで、白いドレス姿に着替えた5人がステージに現れると、そのままMAYUを中心にトークが繰り広げられる。これまでは芹奈、かれん、manakaがトークの中心になることが多かったが、今回のツアーではMAYUやアサヒがMCの中心になるパートが含まれており、昨年秋のツアーを経てMCに対する意識もだいぶ変化したのではないかと伺える瞬間だった(参照:Little Glee Monsterが語る、紅白出場の喜びと3rdアルバムでの“音楽的挑戦”)。

 そこから、このツアー最大のハイライトとなるアコースティックパートへ突入する。横浜アリーナ公演のレポートや『ギュッと / CLOSE TO YOU』リリース時のインタビュー(参照:Little Glee Monster、“ふたつのラブソング”での実感 「曲の雰囲気によって息の使い方も変わる」)ではツアー中ということもあり詳細に触れることは避けたが、ここではアコースティックギター&パーカッションのみでボサノバ調にアレンジされた「私らしく生きてみたい」、ピアノ&サックスで演奏されたキャロル・キングのカバー「You've Got a Friend」、そして「ヒカルカケラ」の3曲が披露されたのだが、中でも驚かされたのが新たに生まれ変わった「私らしく生きてみたい」だろう。力強さが際立った原曲から一変し、ボッサバージョンは少ない音数の上に繊細かつ肩の力が抜けた歌声が乗る、リトグリの新境地的1曲。先に触れた「Gift」での挑戦が早くもこういった形で表現されるとは、ツアー初日は思ってもみなかったことで、大変驚かされたことをよく覚えている。インタビューではメンバーみんな、本番までかなり不安だったようだが、最終公演で見せたパフォーマンスからはすでに貫禄めいたものさえ感じられた。こういった繊細さが際立つパフォーマンスをライブハウス規模ではなく、あえて1万人規模の会場でやってみせることが今のリトグリの強さの表れなのだろうか。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる