11thシングル『ギュッと/CLOSE TO YOU』

2018.03.20 12:00

Little Glee Monster、“ふたつのラブソング”での実感　「曲の雰囲気によって息の使い方も変わる」

「この映画には私たちの歌が必要なのかなと」（芹奈）

ーーそんなアリーナツアーの合間に、早くもニューシングル『ギュッと/CLOSE TO YOU』が発売されます。今回は2曲ともラブソングながらもそれぞれタイプが異なりますし、特に「ギュッと」はこれまでのシングルにはなかったタイプの楽曲です。この曲は映画『プリンシパル～恋する私はヒロインですか？～』のエンディングテーマですが、この曲を最初に聴いたときはどう思いましたか？

芹奈：こういう女の子がキュンとするような、可愛らしい曲は今まであまり歌ってなかったから、自分たちが歌っている姿を最初は想像できなくて。それで、レコーディングの合間に映画『プリンシパル』を観たり、原作を読みながらレコーディングしたりしたんですけど、そこでやっと私たちがこの曲を歌う意味がわかった気がしました。

ーーその「私たちがこの曲を歌う意味」というのは、具体的にどういうことでしょう？

芹奈：映画のエンドロールで曲が流れたときに……すごく上から目線に聞こえたら申し訳ないんですけど、この映画には私たちの歌が必要なのかなと。

ーー映画を完成させるためのパズルのピースとして、自分たちが映画にはまっていった感じがあったと。

芹奈：そうですね。映画のエンディングって物語の余韻に浸るための大切な時間だと思うから、「ギュッと」が流れたときに歌詞が観ている人の胸にスッと入っていくものになれたらなって。実際、この歌詞は映画のストーリーにすごく沿ったものかなと思うので、皆さんが余韻に浸れるような曲になれていたら嬉しいですね。

ーーこれまでもリトグリはいろんなタイプのラブソングを歌ってきましたが、今回の「ギュッと」を歌う際に注意した点、こだわった点はどういったところでしょう？

アサヒ：歌詞の中に出てくる単語ひとつ、例えば〈ギュッと〉というフレーズでも言い方、歌い方を一人ひとり考えていくことで、曲の持つ切なさがより伝わるんじゃないか。そんな気持ちで歌いました。

manaka：曲自体のテーマ的に恋愛の切なさや甘酸っぱさが込められていると思うので、自然と“空気が多い”歌い方になったというか。

他のメンバー：うんうん。

ーー“空気が多い”歌い方ですか。

manaka：はい。みんなのちょっとした息遣いが、歌の中に多めに入っているんです。「ギュッと」ではそれがフワッとした曲の雰囲気に合っているんですけど、逆に「CLOSE TO YOU」のほうはカラッとした、活発とした女の子が一方的に恋してるみたいなイメージなので、歌い方も張り気味な部分が多くなる。曲の雰囲気によって息の使い方も変わるんだなっていうことを、このふたつのラブソングを通じて実感しました。

ーーなるほど、そういうことなんですね。これは僕のイメージですけど、今回は2曲とも春っぽさがあるんだけど、「ギュッと」は冬に近い春先の印象で、「CLOSE TO YOU」は初夏に近い晩春というイメージなんですよね。

manaka：わかります。「ギュッと」の主人公はカーディガンを着てそうですし。

他のメンバー：うんうん、着てそう！

manaka：そういう、一見どうでもいいことなんですけど、曲を通してふくらむイメージをみんな思い描いて歌っているんだろうなっていうのを、この2曲を聴いて思いました。

ーーそういうイメージを皆さんで共有することはあるんですか？

manaka：言葉で共有するよりは、自分が歌う前の人の声を聴いて、それぞれが共有する感じですね。自分のパートの前を歌っている人の声を聴いて歌を録るので、例えば「この子、こういう歌い方だから、次はこういうおしとやかな歌い方のほうが合うかな？」とか、前に歌った人のイメージをつないでいくんです。

ーーなるほど。そして、先ほどmanakaさんが話題に上げた「CLOSE TO YOU」ですが、この曲はアレンジが非常に面白いなと思って。

芹奈：超壮大ですよね。

manaka：こんなにコーラスに時間をかけた間奏も初めてでした。

芹奈：できることならライブで再現するのは……（笑）。

MAYU：難しい！

かれん：しかも、声がどんどん重なっていくじゃないですか。私、最初に歌うから13拍くらい伸ばしているんですよ。めっちゃロングトーンだし、それをライブで再現するのはかなり酷だなと（笑）。

芹奈：肺活量鍛えないとね。歌う際には、ぜひセットリストのはじめのほうに（笑）。

アサヒ：それか、アンコールの1曲目に（笑）。

「アレンジが違うだけで、曲ってこうも変わるのか」（かれん）

ーーシングルにはカップリングとして、『Sound Inn "S"』（BS-TBS）で披露した「明日へ」のライブテイクが収録されています。僕もこの番組を拝見しましたが（1月20日オンエア）、すごく興味深い内容でした。

芹奈：面白かったですよね。

かれん：うん。私たちもすごく楽しかったです。

ーー本間昭光さん、島田昌典さん、冨田恵一さんという一流プロデューサーの皆さんが、いわばリトグリでいろいろ実験をするわけじゃないですか。それに応えるリトグリもすごいなと思うんです。

manaka：本当にリトグリのためだけに時間をかけて楽曲アレンジをしてくださったのも嬉しかったですし、すごく豪華なミュージシャンの皆さんと一発録りだったので緊張もしたんですけど、でも楽しく歌えたので、それをCDに残せたのは私たちも嬉しいです。

ーーオリジナルのCD音源とも今のライブテイクとも、また違うテイストですよね。

かれん：アレンジが違うだけで、曲ってこうも変わるのかっていうことを『Sound Inn "S"』という番組で体感しました。あの番組ではコーラスをわざと抜くことで5人それぞれの歌声が際立ったと思いますし、アレンジも原曲とは違った派手さがあって、すごく気に入っています。

ーー番組中どなたかが言ってましたけど、本当に新曲を歌ってるみたいでしたよね。

5人：本当に。

ーー僕はリトグリの面白さって、ライブで曲が育っていくところにもあると思っていて。例えば3年前に制作した楽曲を今歌うと、また違った魅力が生まれるんですよね。それは皆さん自身が成長しているのもあると思いますけど、曲も同じように成長しているのかなと思って。もし今後、これまでの楽曲の中で再レコーディングする機会があるとしたら、皆さんどれを歌い直してみたいですか？

芹奈：「小さな恋が、終わった」とか、改めて今歌ったら違うんやろうなって。あのときは今よりも全然若かったから、歌詞の理解とかも正直そこまでできてなかったと思うし、自分の中で必死に作り上げて歌っていた部分もあったので、今だったらもうちょっと自然に歌える部分はあるやろうなと思いますね。

かれん：私は「書きかけの未来」を今歌ったら、また違った感じになるのかなって思います。

MAYU：最初にできたオリジナル曲の「HARMONY」なんて、レコーディングした頃はみんな中学生だったので、さらに今より子供だったわけじゃないですか。今でもたまに聴くと恥ずかしいんですよ。もちろんあのときならではの良さもあるんですけど、今ライブで歌っているような形で改めて音源にも残して、当時の音源と聴き比べてみたいですね。

芹奈：あの頃はリズムの取り方も今とは違って、全然グルーヴしてないっていうか。

かれん：レコーディングにも慣れてなかったしね。

manaka：うん、初めてやったし。

芹奈：ド緊張してたし。確かに、「HARMONY」はもう一回歌い直したいかも。せっかくだから、バンド編成で録ってみたいですね。

アサヒ：私は……最近全然歌っていない、まさかの「ガオガオ・オールスター」とか。

他のメンバー：えーっ！（笑）。

MAYU：まさかすぎてビックリしたわ（笑）。

かれん：でも、こないだ大阪で番組収録をしたときに、「リトグリって知ってますか？」という街頭インタビューをやっていただいたんですけど、「ガオガオ・オールスター」で知ってくれた方がひとりいて。

ーーきっかけってわからないですよね。いろいろ歌ってきた成果が、そういう形で出てくるわけですし。では最後に、manakaさん。

manaka：オリジナルをやり直すというよりは、全編アカペラで録ってみたいです。

他のメンバー：あー。

manaka：これはずっと言っていて、いつか実現したいことなんです。リトグリはアカペラをフィーチャーされる機会が多いけど、実はアカペラ音源ってCDにはほとんど入ってなくて。実際、アカペラで一人ひとり声を重ねて歌うことが楽しいと思ってやっているので、そういうことを詰め込んだディスクを作れたらなと思うんです。

ーー確かにそれは面白そうですね。

manaka：山下達郎さんもアカペラの多重録音アルバムを作っていらっしゃるじゃないですか。Pentatonixのアルバムも聴いていてすごく楽しいですし。ライブで聴けるアカペラはもちろんですけど、録音だけでしか再現できないようなことにも挑戦してみたいですね。

（取材・文＝西廣智一／撮影＝下屋敷和文）