『Dear My Boo』インタビュー
當山みれいが語る、清水翔太との「Dear My Boo」制作秘話と二十歳の展望
“SNS世代のリアルを歌うシンガーソングライター”として注目を集めている當山みれいがニューシングル『Dear My Boo』をリリース。Spotify、Apple Music、LINE MUSICなどのサブスクリプションを中心にロングヒットしている清水翔太の「My Boo」のアンサーソングとして制作されたこの曲は、女子目線で描かれた愛らしくも切ない歌詞がまっすぐに伝わるバラードナンバー。14歳で全米デビューを果たした彼女のボーカリゼ―ションが堪能できることもこの曲の大きな魅力だ。新たなターニングポイントとなる可能性を持った『Dear My Boo』の制作を軸にしながら、清水翔太から受けた影響、アーティストとしての今後のビジョンなどについても語ってもらった。(森朋之)
「翔太さんの「My Boo」の主人公像をしっかり思い描いた」
ーーニューシングル「Dear My Boo」は、清水翔太さんのヒットチューン「My Boo」のアンサーソング。當山さんにとっては、前作「願い~あの頃のキミへ~」に続く2曲目のアンサーソングですね。
當山みれい(以下、當山):はい。清水翔太さんとは通っていた音楽スクールが同じで、いまの事務所、レーベルも一緒なんです。小学生の頃から憧れてきた方だし、以前「My Way」(2016年)という曲を翔太さんにプロデュースしていただいた縁もあったので、ぜひ「My Boo」のアンサーソングをやらせてほしいとお願いしました。デモ音源を作って翔太さんのところに持っていった時に、「『My Way』の頃よりも成長した」と思ってくれたようで、「やってみようか」ってOKしてくれて。制作中も歌詞、トラック、メロディに対していろいろアドバイスをくれて、レコーディングにも立ち会ってくれたんですよ。音楽に対してはすごくシビアな方ですけど、優しいんですよね。いま、翔太さんの10周年ツアーのオープニングアクトをやらせてもらってるんですけど、ライブのときもすごく気にかけてくれて。翔太さんと接していると、「My Boo」で描かれている“そっけないけど優しい”男性像とも重なるんですよ。
ーーなるほど。もともと「My Boo」に対してはどんな印象を持っていたんですか?
當山:初めて聴いたのは翔太さんのライブでした。初披露されたときだったんですけど、サービスビジョンに歌詞のテロップが出ていて、「俺がアラジンなら君はジャスミン」というフレーズがすごくかわいいなって。最初はキュンキュンソングだと思ってたんですが、じっくり聴いてみると、翔太さんが持ってるヒップホップのバックグラウンドがすごく出ている曲だったんです。ピアノのラインはすごくキレイなんだけど、ビートはかなり重めで、しっかり韻を踏んでいて。めちゃくちゃハイレベルな曲なんですよね。だからこそ、アンサーソングを作るときはかなりプレッシャーで。自分から「やりたいです」とお願いしたんですけど、制作に入ったときはだいぶ気持ちが重かったです(笑)。
ーー「Dear My Boo」は女性目線のラブソング。歌詞を書くにあたって意識していたことは?
當山:「願い」のときもそうだったんですが、自分の気持ちを吐き出すというよりも、原曲をラブレターに見立てて、お返事を書くような感覚でした。まず翔太さんの「My Boo」の主人公像をしっかり思い描いたんですよ。たぶんこの男性って、普段はすごくカッコつけてると思うんです。女の子のほうは、カッコつけてるところだけではなくて、おっちょこちょいな部分だったり、ちょっとかわいいところにも惹かれてるんじゃないかなって。だって最後のサビが<どこへも行かないで/誰にも触れないで>ですからね。「めっちゃ嫉妬してるやん!」って。
ーー確かに。
當山:女の子はそういうかわいい部分も受け止めて、「心配しなくてもいいよ」って思ってるんじゃないかなって。それが「My Boo」の萌えポイントだと思ったから、アンサーソングの「Dear My Boo」では、そんな彼をしっかり支えようとする女の子の気持ちを歌いたかったんです。あと「My Boo」がどんな人に支持されているのかもリサーチしました。MixChannel(動画共有コミュニティアプリ)に「My Boo」を使ったカップルの動画がいっぱいアップされてるんですよ。記念日とかにアップしてる人たちが多いから、すごいラブラブで。Supremeのペアルックだったり、ドライブが好きだったり、自撮りアプリで遊んでたり。直接描写しているわけではないけど、「My Boo」を聴いているカップルのイメージも「Dear My Boo」の歌詞の参考にしました。
ーー清水さんからはどんなアドバイスがあったんですか?
當山:まずは歌詞の細かい部分ですね。ボーカルについても「ここは裏声で弱めに歌って」みたいなアドバイスをもらって。それを言われた直後に歌うのは、めっちゃ緊張しましたけどね。「上手くできるかな」って。「My Way」をプロデュースしてもらったときは、翔太さんが言ってくれたことに応えられない部分もあったんです。今回は「成長したところを見せたい」という気持ちがあったから、余計に緊張しちゃったのかも。前よりは上手く表現できたと思いますけどね。
「『My Way』制作後、かなり落ち込んだんです」
ーー「My Way」で得たことも活かされている?
當山:そうだといいんですけど(笑)。いまだから言えるんですけど、「My Way」の制作の後、かなり落ち込んだんです。それまで自分が正しいと思っていたことがいかに曖昧だったかを思い知らされたし、一瞬、自信をなくしてしまって。その後、翔太さんに言われた厳しい言葉を思い出しながら、いっぱい勉強したんです。そのなかで「翔太さんが言ってたのは、こういうことだったのかも」と気付いて。それは今回の「Dear My Boo」にもつながっていると思います。
ーーその時期に気付いたことって、たとえばどんなことなんですか?
當山:いろいろあるんですけど……まず、自分のバックグランドは洋楽なんですよね。ずっと洋楽を聴いてきて、「流行の先を行くような楽曲でシーンを引っ張りたい」という気持ちもあって。でも、メジャーのフィールドで受け入れられるところがないと、活動が続けられないということがわかってきたんです。いちばん足りない部分はやっぱり歌詞。以前は英語をたくさん使って韻を踏むことを意識してたんですが、それだけでは伝わらないなって。日本語は助詞や接続詞が違うだけで意味が大きく変わるし、曲によっては、19年間ずっと抱えてきた思いを3分とか4分のなかに凝縮しなくちゃいけない。そうすると、一字一句ムダにはできないんですよ。そのことを実感してから、めちゃくちゃ日本語の曲を聴くようになりました。「何かいいね」ではなくて、「この歌詞のこの部分がいい」と理由が言えるところまで聴き込もうと思って。
ーーどんなアーティストの曲を聴いてたんですか?
當山:back number、ミスチル(Mr.Children)をよく聴いてましたね。ユーミン(松任谷由実)さん、中島みゆきさん、宇多田ヒカルさんなどの女性シンガーソングライターの曲も聴いてましたけど、歌詞サイトの上位に入っているのはバンドの曲が多かったので。バンドの音楽はそこまで聴いてなかったんですけど、すごく好きになりました。back numberの「ハッピーエンド」、いい曲ですよね。一人でカラオケに行って、歌いながら泣いてるくらいなので(笑)。それくらい日本語の歌詞を深く勉強したし、自分自身の思いを伝えたい、自分の歌を聴いてもらいたいという気持ちも強くなってきて。「Dear My Boo」の歌詞、いままででいちばん修正を重ねたんですよ。この曲の主人公は大人の考えも持っていて、しかも可愛らしい女の子。それは私の理想でもあるし、「私もこういう女の子になりたい」という気持ちをしっかり言葉にできたのは嬉しいです。
ーーすでにリスナーからも大きな反響があって。
當山:そうなんです! LINE MUSICでも上位に入っているし、iTunesでも10位以内にランキングされて。翔太さんのツアーで予約会をやらせてもらってるんですけど、カップルで来てくれた方には「彼女は『Dear My Boo』、彼は『My Boo』を歌って、贈り合ってね」って言ってるんです(笑)。女性にも聴いてもらえるように、ピアノのフレーズは残しつつ、キックやベースは原曲よりもソフトにしていて。「結婚式で使わせてもらいます」という人もいたし、どんどん広がってほしいなと思います。あと、MVの再生数ももうすぐ130万回を超えそうで。撮影はちょっと恥ずかしかったんですけどね。
ーーそうなんですか?
當山:はい。もともとラブソングがちょっと苦手なんですよ。「願い」と「Dear My Boo」はアンサーソングなので自然にやれたんですけど、MVの撮影がどうしても恥ずかしくて。「願い」のときに「恋愛ドラマにしよう」という案があって、「絶対イヤです」って全力で断ったんです(笑)。「Dear My Boo」のMVも基本的に歌うシーンだけなんですが、楽曲の主人公のイメージに寄せるために、監督から「“萌え袖”で歌って」と言われて。最初はやっぱり恥ずかしかったんですけど、思い切ってやり切ったことで、殻を破れた気がしたんですよね。作詞でも殻を破って、MVでも殻を破って。ぐんぐん成長中です(笑)。
ーーステージのパフォーマンスでも、かわいらしさを表現している?
當山:あ、そうですね。翔太さんのツアーで歌わせてもらうときも、この曲は特にがんばっていて。笑顔で歌うことで、この曲の主人公のかわいさが少しでも伝わるといいなと。作詞は自分の思いを圧縮している感じなんですけど、ライブで歌うときはそれを解凍する感覚なんですよ。パフォーマンスはすごく大事だし、しっかり伝えられるはずという自信も持てるようになりました。