キズナアイ、狐娘、げんげん……王道から異色まで押さえたバーチャルYouTuberの可能性
HIKAKIN、はじめしゃちょー、木下ゆうかなど、年々勢いを増しているYouTuber界隈。その中でも昨年12月頃から新たなジャンルとして注目を集めているのがバーチャルYouTuberだ。
従来のYouTuberの動画コンテンツといえば、映像制作者自らが登場し、ゲームやメイク、やってみた系といった様々な企画を実践していくというもの。バーチャルYouTuberの動画とは、その名の通り生身の人間ではなく、架空のキャラクターが登場して企画へ挑戦するものを指す。百聞は一見にしかずということで、まずは実際に映像を見てもらうのが分かりやすいだろう。
バーチャルYouTuberの中でも、今一番知名度を高めているのがキズナアイ。2016年12月1日に動画配信を開始し、1周年記念である昨年12月にアップした動画が爆発的にヒット。すでにチャンネル登録者数が140万人を超えており、今もなお勢いを伸ばし続けている。
歴史を辿ると、2011年に登場したバーチャルブロガーAmi Yamatoがバーチャルキャラクターによる自作動画の元祖と呼ばれている。ルックはPixar作品に出てくる3DCGキャラに近いが、近年日本で生まれているバーチャルYouTuberは、日本のアニメカルチャーの要素を孕んだ萌えキャラ的なアプローチが多い。チャンネル登録者数が多いことからバーチャルユーチューバー四天王(5人だが呼称は四天王)と呼ばれているキズナアイ、輝夜月、ミライアカリ、電脳少女シロ、バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさんはもれなく、いわゆる萌えキャラのルックを取っている。
一口にバーチャルYouTuberといってもコンテンツの内容は千差万別で、可愛いHIKAKINとも呼ばれているキズナアイやミライアカリなどは、一般的なYouTuberのスタイルを踏襲した企画を実践。映像作りにおいても、プロットや編集、言動の内容を含め、視聴者に“YouTuberっぽい”と思わせるリアリティのある動画を配信している。制作過程でも、モーションキャプチャーやMMD(3DCG動画作成ツール)を使ってキャラクターに動きをつけているパターンもあるし、声においてもボイスエフェクトで機械っぽさを出しているもの、声優が声を当ててているものと色々だ。映像表現の自由度の高さをはじめ、CGキャラクターと親和性の高い企画や作者のビジュアルを出ない匿名性など、バーチャルYouTuberの登場がYouTuberの裾野を広げることに一役買っているのは間違いないだろう。
中でもカルト的な人気を誇っているのが、バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん。萌え系の獣キャラのビジュアルを取りながら声は作者の男性が当てており、おじさんを萌えキャラで包み込む斬新さ、突っ込みどころのあるゆるい企画などでジワジワと人気を獲得している。バーチャルYouTuberに対して「アニメとなにが違うのか?」という疑問を抱く人も多いだろう。しかし、ねこます氏(バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさんの中の人)が「VRでのコミュニケーションが発達していくと生物学的に男だということは形骸化していって、概念としての性別、そもそも現実の性別がどうだからとこだわる意味がなくなってきちゃって、コミュニケーションしやすいところに集約される。つまり、全員女の子になるってことですね」とインタビューで語っていたように、バーチャルYouTuberは新しいコミュニケーションツールとしても機能していることがわかる。(参考:かわいいは心のATフィールドを取り払う 「バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん」独占インタビュー(後編))このように架空のキャラクターとコミュニケーションを取る感覚は、従来のキャラクターコンテンツが持つ可能性を拡張したと言えるだろう。