斎藤工、TERU、柴咲コウらも賞賛 笹川美和の“ノスタルジックな手触りの歌声”が放つ魅力
今年デビュー15周年を迎えた笹川美和に大きな注目が集まっている。きっかけは、俳優・斎藤工が齊藤工名義で監督をつとめた初の長編映画『blank13』の主題歌に笹川が歌う「家族の風景」(ハナレグミのカバー)が起用されたこと。
このカバー曲に対して齊藤はTwitter(映画『blank13』齊藤 工と仲間たち)で「『blank13』は笹川さんの“家族の風景”が最後に流れるイメージで、生命線でした。ロケハン先でも笹川さんの歌声をその場で流して相応しい場所を選びました。そのくらい作品のコアになって下さっています」とコメント、映画の世界観と笹川の歌が強く結びつていることを明らかにした。MVにも『blank13』の劇中映像が使われるなど、様々なメディアを介したコラボレーションも話題だ。
笹川美和は、以前から幅広いアーティストに支持されている。2013年には柴咲コウとのコラボによる楽曲「恋守歌」のオリジナルビデオクリップを配信。柴咲のアルバム『リリカル*ワンダー』に収録された同曲は、柴咲が作詞、笹川が作曲を担当したバラードナンバー。郷愁を誘うメロディ、日本語の美しさを活かした歌詞が生み出す有機的なケミストリーからは、アーティストとしての両者の相性の良さが伝わってくる。さらにGLAYのTERUも「柴咲コウ&笹川美和-「恋守歌」素晴らしい!」とツイートしたことで、この楽曲の魅力はさらに広い層に広がった。
彼女がアーティスト、俳優などのリスペクトを集める理由とは何だろうか? 様々な要因が考えられるが、個人的には、そして“ストーリー性と映像喚起力を併せ持った楽曲”を挙げたい。まずは歌声。一貫して新潟を拠点にして活動していることも関係しているのだと思うが、彼女のボーカルには日本的な情緒が色濃く反映されている。そこに独特の節回しが加わることで、聴く者に心地よい懐かしさを与えてくれるのだ。また、詞とメロディを同時に紡ぎ出すというソングライティングも独創的。身の回りに起きた出来事、そこで感じた感情を生々しい歌に結びつけた楽曲は、物語と風景をきわめて自然に内包している。女優としてキャリアをスタートさせた柴咲コウが笹川の歌に呼応し、齊藤工が笹川の歌にインスパイアされて映画を制作したことには、強い必然性があったと言っていいだろう。
<笑い 笑え 泣き 笑え>というラインから始まるオーガニックなバラードナンバー「笑」で2003年にメジャーデビュー。「世界に一つだけの花」(SMAP)、「COLORS」(宇多田ヒカル)、「HERO」(Mr.Children)などがヒットしていた当時の音楽シーンにおいて、洋楽的なエッセンスがほとんどない、日本的な抒情性を強く感じさせる彼女の歌は際立った個性を放っていた。その後インディーズで活動したあと、2012年にメジャー復帰。柴咲コウ、城南海への楽曲提供、映画『クレイフィッシューザリガニは、同じ水槽で生きられない。』の劇伴を担当する一方、舞台『+GOLD FISH』に出演するなど、表現の幅を広げてきた。そして15周年イヤーの今年、音楽活動はさらに活性化。その最初のリリースとなるのがニューアルバム『新しい世界』だ。