川谷絵音が明かす、2018年の音楽的ビジョン「“外して戻して”というのが今の期間」

川谷絵音が明かす、今年の音楽的ビジョン

「リズムの変化によって、曲全体の聞こえ方も変わる」

ーー面白いですね。世界的な音楽シーンでいうと、特にアメリカの音楽はリズム中心に回っていて。その中で川谷さんはメロディとリズムの関係に意識的であり続けている印象があるのですが、そのあたりはどのように考えますか?

川谷:海外は確かにリズム主体なのかもしれないけど、日本はやっぱり全くそうじゃないですよね。ずっとメロディ重視できたから、逆にリズムが二の次になっているというか。リズムが与えてるメロディへの影響に気づいていない人が多いと思うんですよね。今回、「ぶらっくパレード」のリミックスをAmPmにやってもらって、サビのリズムもかなり変わったんですよ。そのリズムの変化によって、曲全体の聞こえ方も変わることをわかってもらえると思います。

ーーそういう意味では、ゲスの極み乙女。は、メロディがリズムによってどう変わるのか実験するプロジェクトでもありますよね。

川谷:他にも「キラーボール」も違う人にリミックスしてもらっていて。テンポも変わってるし、リズムも全然違う。自分の曲に、誰かが違うリズムを入れてくるとびっくりして、今回気づいたことも結構ありました。俺はリズム優位な考え方でもあるので、それがさらに増したと思います。でも、リズムがよければメロディはどうでもいいっていうわけでもなくて、5:5でやりたいんですよ。でも、Foster the Peopleを見て、メロディを突き詰めすぎないほうがいいかなと思って、敗北感を感じましたけど(笑)。詰めすぎないメロディを考えたら、もっと新しいことができるのかなと思いますし。メロディだけで聞くと弱くても、それがリズムで強くなるということを、俺はあまり考えてなくて、メロディだけでちゃんと強いものを作ろうとしちゃうんですよね。

ーー一方で、歌詞の刷新も進んでいる印象があります。例えば今回の「戦ってしまうよ」では、〈戦ってしまうよ〉というフレーズに“戦わされる”みたいなニュアンスもありますよね。それが、この曲の独特の詩情を生んでると思います。

川谷:基本切なくなっちゃうんですよ。〈♪戦ってしまうよ~〉って下がるところとかもそうだと思います。

ーーその切なさっていうのは、普段考えてる“戦う”というイメージと重なるところがあるんですか?

川谷:そうですね。能動的に戦おうみたいに思ったことは、俺自身そんなにないから。普通に生きてたら、気づいたら戦っちゃったなということが多くて、結局あとで後悔するから、そういう気持ちが出てるのかもしれませんね。あとは、ゲームのタイアップ曲ということもあって、ゲームを自らしているようで、実際はゲームに遊ばれてるという世界観を作ろうと思いました。

ーーゲスの極み乙女。とindigo la Endともに、2017年に発表された曲は音楽的なアウトプットとしては多様ですが、歌詞の世界はとてもパーソナルな印象がありました。それは「戦ってしまうよ」にも続いているようにも思いますが、どうでしょうか?

川谷:でも、どう歌詞を書いても、やっぱり俺自身の何かに紐付けられたりとか、こういうこと書いてるのかな? と思われる立場にあるので。たとえば、みんなこう感じることってあるでしょ? と思って書いてみても、それがパーソナルに見えてしまう。俺は歌詞に時間をかけることはないし、あまり考えて書かないから、パっと書いてパーソナルなものが出てたとしても、それが今のモードなのかっていうのは自分ではわからないですね。

ーーただ、ご自身の中でこれは守っておきたいという一線は、かなり強いものとしてあるんじゃないですか?

川谷:あぁ、それはそうですね。あまり直接的な表現はしない、文章になりすぎないとか、好きな歌詞の世界観はありますね。スピッツとか、1行1行で完結する歌詞が多いし、ああいうものが好きですね。

ーーゲスの場合、初期は批評的であったりブラックユーモアが利いていて。今ももちろんあると思いますが、最近の曲ではもう少し心象風景が織り込まれるようになっている気がしました。

川谷:そうですね。「イメージセンリャク」は初期のゲスっぽい印象を与えると思うんですが、サビは心象風景がありますからね。そこは、多分俺しかできないことなのかなと思います。

ーー3曲目の「息をするために」は最近できた曲ですか?

川谷:この曲はトラックだけは『両成敗』(2016年)の時にできてたんですが、ちょっと『両成敗』の曲ではないなと思って。今回バランスを取るためにゆっくりな曲を入れたいなと考えていたら、こんな曲があったなと思い出して。俺、ゲスとindigo la Endの住み分けを、Aメロで早口か早口じゃないかってところだけしか決めてないんです、基本的に。Aメロで絶対ちょっと早くなるのがゲスで、indigo la Endは、ゆったり歌うことが多いですけど、今回それを初めて崩しました。だから、もうどっちの曲かわからないなと自分では思ってますね。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる