川谷絵音が明かす、2018年の音楽的ビジョン「“外して戻して”というのが今の期間」

川谷絵音が明かす、今年の音楽的ビジョン

 川谷絵音にとって、2017年は活発な動きが続いた1年だったといえるだろう。ゲスの極み乙女。が5月にアルバム『達磨林檎』を、indigo la Endが7月に『Crying End Roll』をリリース。さらに川谷が楽曲制作を手がけるDADARAYが1月から始動し、3枚のミニアルバムとフルアルバム『DADASTATION』を発表した。その間にも各バンドのツアーをまわりイベントに出演するなど、とまることなく音楽活動が続いていた。そして、2018年最初の動きとして、1月24日にゲスの極み乙女。の5thシングル『戦ってしまうよ』がリリースされた。

 今回リアルサウンドでは、川谷絵音に単独インタビューを行う機会を得た。前述のようにアウトプットのパターンが増えたこの1年を振り返りながら、それぞれのバンドの現在地や2018年の展望について、そして川谷が追求している“メロディとリズム”の関係など、示唆に富んだ話を聞くことができた。(編集部)

「2017年は種を蒔く年で、それを花開かせるのが2018年」

ーー2017年は、音楽家としてたくさんのクオリティの高い楽曲を発表した特別な一年だったと思います。ご自身ではどう振り返りますか?

川谷絵音(以下、川谷):たくさん出したとよく言われるんですけど、俺的には全然そんな感覚がないんですよ。『達磨林檎』は、リリースは去年になりましたが作ったのは2016年で、indigo la Endの『Crying End Roll』も以前から録っている曲が多かったので。2017年は、ずっとレコーディングをやっていて、実はまだ発表してないプロジェクトがいくつかあるんです。そのプロジェクトの曲だけでもだいぶ作っていたので、俺自身としては、色々作ったけどまだ出せていないという感じですね。2017年は種を蒔く年で、それを花開かせるのが2018年だと思っています。

ーーなるほど。とはいえ、DADARAYも始動するなど、アウトプットのパターンが増殖していったという側面もあると思うのですが、それぞれのプロジェクトの規則性みたいなものはあるのでしょうか。

川谷:全くないんですよ。生き方自体が、その時やりたいことをやろう、後悔したくないからとりあえず楽しいことやろうっていう感じで、音楽においても同じです。ゲスの極み乙女。とindigo la Endの2つのバンドで表現できるものって結構多いと思うんですけど、それでもやっぱり足りないなと感じた時に、どんどん増えていく。でも、増やした先でもできないことがあって、さらに増やす。その間に面白い人たちとも関わっていくから、どんどん拡張していくんです。

ーー人との出会いが大きい?

川谷:そうですね。あとは、新しい音楽を聞く度にやりたいことが増えますね。それは、曲を通してみんなが気づいてる部分もあるだろうし、俺だけが気づいてる部分もあるかもしれない。自分としては、毎回新しいことをしてるなと思っています。

ーー例えば『達磨林檎』は、メロディや歌詞が独創的で完成度もとても高く、そこが川谷さんの突出した部分だと思うのですが、ご自身ではどうでしょう?

川谷:そこはあまり理解されない部分でもあると思っています。わかりやすいキャッチーなものを求められていたりもして。俺らもキャッチーなイメージはあると思うんですけど、結構エグめな感じなので。『達磨林檎』はその部分が増えて、とっつきにくい作品だったのかなとは思いますね。でも、俺はもともと好きなことをやりたくて曲を作っているタイプだから、どう言われても別にそうかと思うだけなんですよね。ゲスの極み乙女。という名前もある中で作ったアルバムなので、自分としてはかなりバランス取ってたんですけど。込み入ったアルバムを作ろうと思えば、もっと込み入ったものも作れるので(笑)。

ーーどこまで込み入らせるかという判断はプロジェクトごとに決まっているんですか?

川谷:ありますね。先日Foster the Peopleのライブを見に行って、理想的なバンドだなと思いました。自分の音楽を俯瞰して見ることがそんなにないのですが、足りないものってなんだろう? と考えて。Foster the Peopleがギターをジャキジャキ弾く曲って一見ダサく感じるんですけど、サビに入った後のリイントロでもう一度聞くと、かっこよく聞こえるんですよ。もう1回聞きたくなる。俺は、そういうことはあまりしないんですよね。自分でかっこいいと思うものの基準が、最初からバチンってはまらないとダメなので。

ーー確かに川谷さんの場合、”基準を崩した”瞬間はあまりないかもしれないですね。

川谷:いつも密度高く作りすぎるんですよね。ゲスの初期のころは、技術もそんなになかったので、結構適当に作ってたのが遊びになっていた部分もあって。そういう気持ちが今少なくなってるかもしれませんね。好きなことをやってるように見えて、自分で知らないところで縛られてるのかもしれないと思いました。

ーーなるほど。Foster the Peopleもそうですが、川谷さんも“メロディを刷新していく”という意識があるのかなと思うんですが。

川谷:俺のメロディって、ちょっとイビツなんですよ。理論がわかっていて絶対音感もあるちゃんMARIから見ると、絶対そのコードには行かないでしょっていうところに行ってるらしいんですけど、俺は全然それがわからなくて。今まで何も考えてなかったんですけど、理論もわかればどっちもできるし、その中間に行ける。でも、自分のコントロールの効かないところでメロディを作るというのは、ちょっと違う気がしています。メロディを再構築するにも、パソコンで切り貼りして全部チェンジしちゃえば、わけのわからないメロディはできるんですけど、それはしたくない。だから絶対つるっとメロディを作るんですよ。

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