清木場俊介、人生の交差点にはいつもライブがあるーー熱気と笑顔で溢れた『ONE ROAD』最終公演

清木場俊介『ONE ROAD』最終公演

 「3、2、1、ロック最高!」ファンと共に叫んだ清木場俊介の目は、新たな目標を見据えていたーー。

 11月29日、清木場俊介の『LIVE HOUSE TOUR 2017 "ONE ROAD"』がファイナルを迎えた。10月28日から、2日に1本のライブを行なうハイペースなツアーを走りきった清木場。「もう終わりがないんじゃないかと思ってましたけど(笑)」MCではそんな本音が飛び出す場面も。まるでアスリートのように、熱く、全力で、唄った1カ月。「金メダルを獲ったぐらい、今日はうれしいよ」そんな達成感と笑顔で溢れた最終公演をレポートする。

 「飛ばしすぎやろ!」ロックオンリーのセットリスト

 会場は東京・Zepp DiverCity。清木場にとって初めての場所だ。開演時間1分前になると、“清木場コール”が始まり、徐々にその声援は大きくなっていく。暗転したステージに赤いスポットライトが当たると、軽やかな足取りで清木場が姿を現した。ドラムがリズムを刻み、ギターサウンドが響き渡ると、すべての観客が拳を突き上げる。

 1曲目に披露されたのは「夜を塗り潰して」。<走り続けなきゃ 壊れそうだ 俺の心が 燃えたぎる!>の歌詞は、まさにこのツアーを、そしてデビューしてから、ずっと走り続けている清木場ならでは。スピーカーに左足をかけて、客席ギリギリまで近づく。「やっぱり唄っていうのは聴いてくれる人がいないと始まらないので」と語るように、観客に魂を込めて唄を届ける姿が胸を打つ。続けて、2曲目の「Pride」。<誰が何をほざいたとしても!>と会場を指差し、力強く歌う清木場の首筋にはすでに汗が光り、会場も熱を帯びていく。

 「どうも清木場俊介です。東京、元気かい? みなさん、今日は最後まで楽しんでいってください」短めに挨拶をするやいなや、すぐさま3曲目の「FAKE」へ。大きく両足を開き、重心を左右に揺らして音に身を委ねる清木場。センターにあるスピーカーに立って前のめりに唄うと、あわや客席に飛び込みそうになる。観客もマイクを向けられると一緒に<バカタレ>と熱唱。「悲しきRock'n Roll」でも<俺は俺のロックを 唄うだけ!>と声を上げる。その姿に、思わずニヤリとする清木場。ファンと唄で愛を交わす。これぞ清木場のライブだ。

 そのままノンストップで「ROLLING MY WAY」へ。ボクサーのようにステップを踏む清木場は、まさに闘う男そのもの。そして<Hey!Oh!>と共に歌うファンはさながらセコンドのよう。「まだまだ行くぞー、ぶっ倒れんなよー!」と鼓舞して、「FLASHBACK」「REAL」「Rockin' the Door」と加速していく。ぶっ通しで続く熱いロックナンバーに、会場は湯気が立たんばかりの熱気に包まれる。「いやいやいや、もうちょっと飛ばしすぎやろ!」と、MC冒頭で清木場が自らツッコむほどだった。

 「もっとみんなと近くなろうと思う」ツアーを振り返るMC

 クールなロックサウンドに負けないくらい、清木場のライブはMCが面白い。「あの、ちょっと1カ月くらい、500〜600くらいの(キャパの)ライブをやってたので、久々にこの2000クラスを見て3曲目くらいまで足が震えてました。アハハ」と、いきなり笑いを誘う。

「いろいろ行ったよね。ホールでは行けなかったところをまわってたんですけど。思い入れがあるのは高知ですかね。ファンと一緒に水族館に行きまして(笑)」と、ツアーの思い出を語り始める。「桂浜わかりますよね? (坂本)龍馬像があるところで。僕は龍馬が大好きだから見に行ったら、たまたまファンの人もいて、“(すぐ近くに水族館があるから)じゃあみんなで行こうか”みたいな話になって。まさかの(入館料を)全額払わされる羽目に(笑)。いやいや、さすがに1人ずつもらえないじゃん! “1人1500円です〜”なんて、カッコ悪い(笑)」そんな気さくすぎるエピソードに会場から笑みが溢れる。

 「なんせマナーがいいんで、私のファンは。どこに行っても騒ぎもないし、駅のホームでも俺に気づかないし! まー、マナーがいい! 思わず俺から声をかける(笑)」褒めながらもイジっていくMCは清木場とファンとの信頼関係の証。昔とは変わり、旅先で会ったファンと普通に話したり、写真を撮ったりと、積極的に交流をするのだと続ける清木場。「もっともっとみんなと近くなりたいなと思っているので」そう話すと、客席からは温かな拍手が湧き上がった。

「いい日だからこそ」歌いたかった「クサレ…俺」 

 爆笑続きのMCを終えて、ライブは後半戦に突入。最新アルバム『REBORN』から「TO LIVE OR DIE」「FREE MAN」が披露される。大人の余裕を手にした今だからこそ、聴く者の心にしみる2曲だ。そして、観客の大合唱から始まった「MY LIFE」、みんなでタオルを振り回す「JET」で再び会場の熱気が高まる。

 「まだまだいけるかい?」とたずねると「JACKROSE」「Fighting Man」「Truth」へ。目に入りそうになる汗を指で拭い、清木場は観客一人ひとりの顔を確かめながら唄う。そのパフォーマンスに酔いしれる観客の興奮が、大きなうねりとなって会場が揺れる。その熱波を受けて、清木場の唄声はさらに伸びやかに、洗練されていく。

 「最高の盛り上げのおかげで、最高のライブになりました。ありがとうございました」アンコールに応えて再登場した清木場の肩には、黄色のギターがかかっていた。「アンコールは、今思いついたんで……弾けるかな」とつぶやき、披露されたのは「クサレ…俺」。<どうやって あぁやって そうやって 考えて>マイクから離れ、地声で唄う清木場。温かな静寂。まるで真空のような静けさの中、魂の叫びが響き渡る。

 「この曲は、もう何年前だろうね。24(歳)ぐらいでソロになったから、25くらいかな。そのときに、なんか自分が思い描いてたソロと、自分の置かれてる状況が全然違くて。どんどんどんどんネガティブな自分が現れて、最後にはもう誰とも心を開かないような時期があったんですけど。そのときに、新潟で生まれた曲なんですけれども。今、楽屋に戻ってふと“あぁ今日どうしても『クサレ…俺』が唄いたいな”と思って。バンドに『クサレ…俺』やるからって言ったら、“えーーっ!”って全員が(笑)」

 唄を通じて当時の清木場の苦悩に共鳴し、ピンと張り詰めた空気の中にいた観客たちに笑顔が戻る。「なぜ、こんないい日に、そんなクサレ唄を唄うのかと思ったんでしょうけど、いい日だからこそ! あのときの自分を忘れないように唄いました。ありがとうございました」

 最後は、お馴染みの「唄い人」を熱唱。<僕は僕の唄いたい唄を唄う。/君は君のゆく道をゆけばいい。>清木場は、これからも唄いたい唄を唄う。その唄を胸に、聴く人も自らの道を進む。その人生の交差点には、いつもライブがある。「これからも自分自身磨いて生きていきましょう」。

 来年1月11日に38歳になる清木場。「新しい目標ができまして。(デビュー)20周年の41歳の年に、武道館2日間やりたいなって。38、39、40の3年間、1年で40〜50本のライブをやっていきたいなと。自分がどこまでたどり着けるか勝負してみたいんでね」そのために、1本1本のライブを確実にこなしていくと、ファンに誓う。

 「夢も目標も大事だけど、また明日から頑張っていくんで。みなさんも日々負けないように頑張ってください」清木場の日々を綴るInstagramには、わずかな休みを経て、再びクリスマスライブに向けてリハーサルを始めた清木場の投稿がアップされた。ライブこそ、唄い屋・清木場俊介の生きる道。同じ空の下、同じ時を生きる幸せを噛み締めながら、次のライブを待とうではないか。

(文=佐藤結衣)

オフィシャルサイト

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