『ごちうさ』DJイベントにみる、“アニクラ”文化の歴史と発展

公式イベント開催や声優によるDJも

 そんなアニクラも、2010年代が折り返す頃より、『リスアニ!ナイト』や『AJ Night』などの、公式によるイベントが開催されるようになった。『リスアニ!ナイト』は、2014年5月始動の、アニメ・アニメ音楽専門雑誌『リスアニ!』の手掛けるクラブイベント。アニソンや声優アーティスト楽曲の音楽作家が多数出演するのが特徴だ。今年8月には『リスアニ!PARK Vol.01』と称し、新田恵海をはじめとするアーティストによるライブ、DJ&VJプレイ、さらには飲食ブースを展開する大型イベントも開催された。一方の『AJ Night』は、2015年3月始動の、日本最大級のアニメイベント『AnimeJapan』が手掛けるクラブイベント。アニソンDJや音楽作家のほか、アニソンシンガーや声優アーティストが出演者の半数以上を占めるのが特徴で、これまで久保ユリカや内田真礼といった人気声優が出演している。また、アニクラ文化の発展を語る上で、『ANIMAX MUSIX』にも言及したい。同イベントは、毎年冬に横浜と大阪で開催されるアニソン“ライブ”イベント。ライブ開演前には、DJ和による簡易型のアニクライベントが会場内ロビーにて開催される。声優やアーティストが多数出演するライブ会場にてアニクラを開くことで、従来のアニクラフォロワーにとどまらない層に同文化の魅力を届ける契機を与えている。

 あわせて、アニクラ文化の発展過程で、声優までもがDJとしてステージに立つようになった。TVアニメ『THE IDOLM@STER』で天海春香を演じる中村繪里子は、2015年8月よりDJ連載企画『中村繪里子のNAKAMURA IN THE HOUSE!!』を開始。MOGRAにて『ANISON MATRIX!! -アニソンマトリクス』を主宰するDJのChefobaを講師に招き、中村が手解きを受けている。中村はこの後、2015年9月に恵比寿・LIQUIDROOMにて開催された『リスアニ!ナイト Vol.05』に出演した際にDJの腕前を披露している。また、声優アイドルユニット i☆Risのメンバーである澁谷梓希も、現在“DJずっfrom i☆Ris”として活動しており、『さーくるふぁいあー!!vol.2』などに出演。アニクラ文化に対し、DJだけでなく、声優サイドからもアプローチがなされたことは、同文化の発展に大きく影響している。

 さらに、最近ではアニメ作品規模でのクラブイベントも開催されている。今年7月より開催された、アニソンエンターテインメントカフェである「アニON STATION」とのコラボイベント『アイドルマスター シンデレラガールズ劇場×アニON STATION しんげきカフェ』では、同シリーズの楽曲を手掛けているTaku Inoueと佐藤貴文がDJを披露。また、TVアニメ『アイカツスターズ!』(テレビ東京系)も、同じくアニON STATIONとコラボし、全国8都市でDJツアーを開催中。2018年3月23日には、新木場ageHaにて「音楽と遭遇しよう」をテーマとしたツアーファイナルイベント『AIKATSU! ANION ALL-MIX』を開催する。加えて、アニクラ文化の発展には、アニソン自体のクラブミュージック化も影響している。『アイドルマスター シンデレラガールズ』の「Hotel Moonside」、『アイカツ!』の「カレンダーガール」、『ラブライブ!』の「Shangri-La Shower」など、打ち込みの力強いキックや煌びやかなシンセサイザーのメロディ、あるいはドラムンベースのサウンドなどが特徴的な楽曲が、近年のアニソンシーンにおいて急増した。アニソン自体がクラブチューン化したことで、DJもそれらの楽曲をイベントにて使用しやすくなり、よりアニクラが広まる要因となったのだろう。

速水奏(CV:飯田友子)「Hotel Moonside」試聴動画

 以上のような歴史のもと、現在のアニクラ文化はひとつの成熟を迎えた。『ご注文はDJ Nightですか??』の豊洲PITでの開催や、徳井青空のDJ出演は、これまでのアニクラ文化の発展あってのものだろう。本稿を機にアニクラ文化に触れてみることが今後、アニソンへの音楽的理解をさらに深めるひとつのきっかけとなるかもしれない。

(文=青木皓太)

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