GLAY HISASHIが語る、“感覚”を信じた作品づくり「音楽がさらに自由に、みんなのものになった」

HISASHI、“感覚”を信じた作品づくり

そろそろTAKUROのオーソドックスな曲が聴きたかった

ーーここからは『WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~』の話題に移ります。リードトラックの「あなたといきてゆく」は『SUMMERDELICS』制作時点からあった曲なんですよね。

HISASHI:そうです。まず、数年前に『JUSTICE [from] GUILTY』(2012年12月発売)というシングルが出て。それは僕が作曲、TAKUROが作詞を担当して、同時発売の『運命論』ではJIROが作曲をしました。その頃から少しずつ、TAKURO以外のメンバーの楽曲がシングル表題曲に起用される機会が増えていくんです。そのこと自体にTAKUROはすごく自由を感じていたし、メインになる曲とは違ったタイプの曲も作るようになり、ステージでもやりたいことができるようになっていった。僕にはそんな彼の姿がすごくやりがいを感じていて、居心地が良さそうに映ったんですよね。なので、僕もアニメの主題歌とか得意なことをやっていこうという、去年までのスタイルがあったんだけど、個人的にはそろそろTAKUROのオーソドックスな曲が聴きたいという思いがあって。そうしたら周りのスタッフからも「実は僕らもそう思っていました」という声があったので、何気なくTAKUROにそういう話をしたんですよ。懐古的な意味ではないTAKUROの“独り言”を、そろそろ聴きたいリスナーがいるんじゃないかと。そういう経緯があって、アルバム楽曲として「あなたといきてゆく」が制作されたんです。

GLAY「あなたといきてゆく」ミュージックビデオ(short ver.)

ーーなるほど。

HISASHI:で、2月の段階では完パケしていて、ミュージックビデオも撮っていて、リード曲扱いだったんですけど、『SUMMERDELICS』に入れたときに全体の色がぼやけてしまうように感じて。なので一旦収録曲から外して、良いタイミングがあったらリリースしようと残しておいたんです。あのアルバムには優等生な曲が馴染まないというか、制作途中からそういう雰囲気になっていったんですよね。例えば、シングルで「Winter,again」(1999年2月発売)を出したときも、のちに『HEAVY GAUGE』(1999年10月発売)というアルバムに入ることになるんですけど、最初は全然馴染まなくて。今回もそういった感じだったんでしょうね。

ーー「個人的にはそろそろTAKUROのオーソドックスな曲が聴きたい」というのは、具体的にどういうことだったんでしょう?

HISASHI:GLAYでいうと、シングルになっていないけどアルバムの中ですごく人気の高い曲もあるので、そういう影で魅力的な曲が僕は結構好きなんです。そんなTAKUROの楽曲に対しての僕のギターアプローチは間違いないと自負しているので、そういった曲を作ってほしいなと思っていました。

ーー歌詞を読むと、これが今のTAKUROさんなんだなと、じんわりくるものがありました。「ずっと2人で…」(1995年5月発売)の頃とは確実に違う表現の仕方も出てきているし、年を重ねてきたことで得られた表現や情景もあり、積み重ねてきた20数年の重みが歌詞にしっかり表れていますよね。

HISASHI:本当にそうですね。「ずっと2人で…」はTAKUROが10代の頃に作った曲ですし、「あなたといきてゆく」はその頃と比べて年も立場も今は変わっているんだけど、誰かに歌い続けているという気持ちをすごく大事にして作った曲なんじゃないかな。

ーーそういった曲がテレビドラマ(テレビ東京系『ユニバーサル広告社~あなたの人生、売り込みます!~』)の主題歌としてお茶の間に流れることも、すごく素晴らしいなと思っていて。GLAYの王道のバラードがテレビで毎週流れるという状況は、ここ最近なかったですものね。

HISASHI:本当にありがたいことですよね。ドラマの制作サイドにGLAYを聴いて育った世代が多くなって、こういうお話をいただけたのかもしれないし。だからこそ、常に自分たちを最新の状態にアップデートしていかなくちゃいけないなっていう気持ちにもなります。

温かみのある曲の中にもどこか尖った部分を残したい

ーー今回の『WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~』にはリードトラックの「あなたといきてゆく」のほか、「時計」「Satellite of love」といった既発曲の再録バージョンも収録されていますが、全体的にバラードを軸にした作品になりました。

HISASHI:これは夏(=『SUMMERDELICS』)に対して、冬の気候や温度感が伝わる内容にしたいねということで、アルバムと対をなすタイトルにして、こういう選曲になったんです。

ーーHISASHIさんがバラードをレコーディングするとき、例えば「HISASHI流ラブバラードの仕上げ方」みたいなこだわりはあるんでしょうか?

HISASHI:温かみのある曲の中にもどこか尖った鋭角な部分というのは残したいし、それがただ乱暴なのではなく、その曲に適切な表現であるべきだと常に考えています。鋭いカッティングだったり、急に展開するソロだったり、あえて歪ませたギターサウンドをさらに「SansAmp」(エフェクターやプリアンプとして使用される機材)で歪ませてみたり。とはいえ、歌を邪魔しては元も子もないので、必然的な音を落とし込むようにしています。

ーー確かにGLAYのこれまでのナンバーにはそういうフックが至るところに仕込まれていたし、それこそさっき挙がった「Winter,again」にもギターの印象的なサウンドやフレーズが含まれていますよね。

HISASHI:Radioheadの「Creep」なんかもすごく日本人好みな曲ですよね。あのサビ前のカッティングがあることで意味合いがさらに強くなる。そういったいびつさはできるだけ残したいなと思っています。

ーー個人的には、原曲のアコースティックな雰囲気とは異なる「時計」の再録バージョンのアレンジに驚きました。

HISASHI:これは今年のホールツアー(4~5月に実施された『GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2017 -Never Ending Supernova-』)でやったバンド形式の「時計」を、音源で残しておきたいねってことで録りました。でも、「Satellite of love」に関してはボーカルのみ録り直しただけで、僕は関わってないんですよ。

ーーあ、そうだったんですね。その3曲に加えてX JAPANのカバー「Joker」のライブテイクや『SUMMERDELICS』のダイジェスト音源も含まれていて、かなり遊んでいる印象を受けました。最近のGLAYのシングルでは遊びや実験的な要素が強まっていますよね。

HISASHI:そうなんですよね。アルバムだとある程度のコンセプトに基づいたものにしないと、という考えがメンバーの中にあって。だから最近は、シングルでは表題曲をしっかり作ったら、カップリングに洋楽カバーを入れたり、それこそ再録ものを入れたりと、すごく自由な感じで臨んでます。

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