『Dj Kaori's Inmix 7』リリースインタビュー
DJ KAORIが語る“現在の洋楽シーン” そしてミックスCDをリリースし続ける理由
DJ KAORIによる洋楽ミックスCD『Dj Kaori's Inmix 7』が10月4日に発売された。約7年ぶりとなる洋楽「INMIX」シリーズ最新作には、カルヴィン・ハリス「Slide feat. Frank Ocean & Migos」、Zedd&アレッシア・カーラ「Stay」、The Chainsmokers「Closer feat. Halsey」など全米で大ヒットした曲や、リアム・ペイン、デミ・ロヴァート、ジョナス・ブルーら国内初CD化の楽曲など28曲を収録。洋楽シーンの最新トレンドを詰め込んだ贅沢な1枚に仕上がっている。
リアルサウンドではDJ KAORIにインタビューを行い、彼女の目線から見た現在の洋楽シーンや、洋楽ミックスCDをリリースし続けている意義について聞いてみた。トレンドに寄り添う柔軟な姿勢は、“現場主義”から生まれるものだった。(鳴田麻未)
いい楽曲が出るのを待って1年以上リリース延期
――今作は、ジャケットでずっと持ち続けてきたヘッドフォンを持ってないですね。
DJ KAORI:ホントですね! いや、実はたまたまなんですよ。
――ヘッドフォンがDJ KAORIのトレードマークでもあったので、それが表ジャケから消えたのは意図があるのかと思いました。
DJ KAORI:残念ながら深い意味はなくて。ヘッドフォンを持った写真でいいのがなかったのかな、ぐらいで……(笑)。
――ジャケではMA-1、総シースルーのレーストップス、ハイウエストのお腹出しセットアップを着ていますが、このファッションのテーマはなんでしょうか?
DJ KAORI:実を言うと、これ1年半くらい前に撮影したんですよ。だからMA-1も去年感あるかもしれませんけど(笑)。去年リリースしたかったんですけど、洋楽のヒット曲も少なかったですし、ライセンスの問題とかもあって、あまりいい楽曲が集まらなくて。それで1年以上待って、みんなが楽しめるような内容になったと思うので満を持してリリースできました。
――中身の充実度を見てリリース時期が決まるってこともあるんですね。
DJ KAORI:一応、レーベルから「この時期に」とは言われてるんですけど、そのタイミングでいい曲が出てるかっていうのもあるので、内容重視のスケジュールで今はやっていますね。
ヒット曲に表れている“時代の変化”
――できあがった作品、改めてどんな1枚になりましたか?
DJ KAORI:洋楽のヒット曲が沢山収録されたCDです。USのビルボードチャートだったり日本のクラブだったり、いろんなところで今人気の曲を集めてあるので、洋楽好きな人はもちろん、そうじゃない人も、今の洋楽のトレンドがわかると思いますのでぜひチェックしてほしいですね。
――今作の中身について話すことは、すなわち2017年現在の洋楽シーンについて話すことになるわけですが。今の洋楽シーンをDJ視点から見てどう思われますか?
DJ KAORI:ここ何年か、パーティシーンなどではしばらくEDMがメインストリームで、私も『DJ KAORI'S PARTY HITS』(2016年4月発売)とか『DJ KAORI’S BEST OF EDM』(2014年12月発売)でフィーチャーしていたんですけど。それが最近、カルヴィン・ハリスとかZeddとか、人気のあるヨーロッパのDJがハリウッドに進出して、音もUS調に変わり、曲もR&B系やヒップホップ要素が入り、時代が変化してきているのはヒット曲にも表れてると思います。5年前のカルヴィン・ハリスの曲と今回の1曲目「Slide feat. Frank Ocean & Migos」ではまったく違いますから。ヨーロッパ勢がラスベガスでレジデント(イベント)をやったり、アメリカに営業に行ったりする中で、あっちはやっぱりヒップホップが強いので。そういう土壌と相まってDJの方向性もUSライクなものに戻ってきてるかなと思いますね。
――アメリカでは、やはりヒップホップやR&B、ブラックミュージック要素のあるものが好まれると。
DJ KAORI:カルヴィン・ハリスもMigosやラッパーと共演したり、1D(One Direction)のリアム・ペインの「Strip That Down feat. Quavo」が現地で売れていたりして、そういう傾向は感じますね。ヒップホップやR&Bの根強さというか。パーティシーンのDJもEDM一辺倒だった時代から変わっていくのかなと思います。
――前述のジャケのファッションもそうかもしれませんが、『Dj Kaori's Inmix 7』も全体的にラグジュアリーな路線からややカジュアルなストリート寄りになった印象を受けました。
DJ KAORI:トレンドの影響ですね。ファッションも音楽も90年代がまた来ていますよね。ファッション方面ではSupremeとかトミーヒルフィガーみたいなストリートカジュアルのブランドの人気が再燃してハイブランドともコラボしてるし、音楽で言えばBPM128の速い曲が流行りだったところから100くらいのものがメインストリームになってきてる。まったく同じことは起こらないけど、ある程度繰り返される部分はあるのかな。
――EDMのムーブメントが沈静化したのも、時代が繰り返されることの一環だと思いますか?
DJ KAORI:今は“これだけ”っていう時代じゃないと思うんですよね。EDMは今後なくなるかっていったら絶対そんなことはないと思う。ハウスとかエレクトロとか、ずっとあった音楽が進化して「EDM」になったみたいなものだから。その時々で人気のものが生まれて、プレイドアウトしたらまた違うものが出てきて……っていう流れはあるかもしれないけど、なくなるものってないと思うんですね。基本的にダンスミュージックを聴く層も広がってると思うし、昔以上にそれぞれの好みで聴いてるので、前のように“今はこれ一色”っていう状態にはならないんじゃないかな。
――なるほど。あと、DJ現場で体感として最近感じていることはありますか?
DJ KAORI:クラブに遊びに来る人は増えたと思います。10年前と比べると、日本全国、地方も都市もクラブ自体が増えたし。お客さんもカジュアルな感じになりましたよね。昔はクラブってアンダーグラウンドな場所と思われていたけど、今やスーツ着たサラリーマンの人もよくいるし、そういうのを見ると裾野は広がってると思いますね。いろんな人が来てくれるのは私も楽しいです。