UVERworld、10年連続の武道館公演に見た“ミクスチャーロックバンドとしての強靭さ”

UVER、ミクスチャーロックとしての強靭さ

信人(Ba)

 ライブ後半は、その甘い雰囲気を引き継ぎつつ、シリアスに死生観を歌い上げた「ほんの少し」、楽器隊による激しいセッションが繰り広げられたインスト曲「Massive」、トランシーなダンストラックとバンドのグルーヴが高揚感を生む「I LOVE THE WORLD」と観客を目まぐるしく熱狂の渦に巻き込む。そこからTAKUYA∞が「俺たちも武道館でいくつものアーティストを見てきて、眩いステージ立つアーティストに憧れてきた。今日は俺たちが『輝いてる。あんな自由な生き方がしてえ』って感じさせなきゃいけない」と自戒し、「もし今日、ほんの少しでもそう思ったら、次の瞬間にこれを思い出せ。『俺たちは昔、あなた方と同じ場所にいた』」と「Q.E.D.」でその輝きを“証明”してみせた。

 続けてTAKUYA∞が「このツアーで一番の熱い瞬間を俺たちで迎えようぜ!」と呼びかけ、ファンが熱狂的なシンガロングで応えた「IMPACT」を終え、「俺たちは、行けるところまで行こうじゃなくて、行きたいところまで行ってやる!」と不退転の決意表明から放たれた「RANGE」、最後に「7日目の決意」で公演を締めくくった。

 ライブを終えて改めて感じたのは、2014年から正式に6人体制となり、音楽的挑戦をさらに深化させたUVERworldが持つ、ミクスチャーロックとしての完成度の高さ。最新のダンスミュージックを貪欲に取り入れたうえで、同期もなるべく少なく、可能な限り6人だけでその音を表現しようとパフォーマンスしていた。各プレイヤーもJ-POPシーンにおいては屈指の演奏力を誇り、ナチュラルにハイレベルなプレイを次々と繰り広げてみせる。そこに青年漫画の主人公のような、どこかアウトローだけど優しくて、これまでの常識を覆してくれそうな、フロントマン・TAKUYA∞のカリスマ性と尖ったリリック、そしてMCでも触れていた「ここまでの年月で手にした声」が重なり、唯一無二のバンドへと到達した。

 この先はしばらく制作期間に入ったのち、また始動するという彼ら。ある種のマスターピースともいえる『TYCOON』を作り上げ、よりエッジーかつポップに大きくなったバンドは、この先どこへ向かうのだろうか。

(取材・文=中村拓海)

■『IDEAL REALITY TOUR』10月4日公演・セットリスト
01.TYCOON
02.DECIDED
03.CORE PRIDE
04.WE ARE GO
05.Don't think.Feel
06.一滴の影響
07.IDEAL REALITY
08.誰が言った(Short ver.)
09.シリウス
10.奏全域
11.エミュー
12.ナノ・セカンド(Short ver.)
13.PRAYING RUN
14.ALL ALONE
15.SHOUT LOVE
16.ほんの少し
17.Massive
18.I LOVE THE WORLD
19.Q.E.D.
20.零HERE~SE~
21.IMPACT
22.LONE WOLF
23.RANGE
24.7日目の決意

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる