Okada Takuro、吉田ヨウヘイgroup、Yunomi…日本インディーシーンの充実を示す6枚
入江陽「Fish」
昨年に自ら主宰する出版社レーベル<MARUTENN BOOKS>を立ち上げたシンガーソングライター、入江陽による4枚目のアルバム。かつて「ネオソウル歌謡シンガー」と名乗っていた彼だけれど、そこから新たな方向性に踏み出したような一枚になっている。たとえばTeppei Kakudaがトラックメイキングを担当した「教えて」はベースミュージックを取り入れたドープなサウンド。
ソウルやR&Bに加えて「心のミカン」などエレクトロニカの方向性を取り入れつつ、全体的に白昼夢的な幻想性を醸し出すアルバム。佐藤伸治を彷彿とさせる入江陽の歌い方も含めて、彼にもフィッシュマンズが90年代にやっていたことを2010年代にアップデートしようとしているような意志を感じる。
Yunomi『ゆのもきゅ』
東京を拠点に活動するトラックメイカー/プロデューサーのYunomiがリリースした初のフルアルバム。全曲nicamoqをボーカルにフィーチャーし、チャイルディッシュな女性ボーカルとボトムの太いエレクトロポップが収録されている。特に「インドア系ならトラックメイカー」がいい。ベースミュージックのサウンドや音色を踏襲しつつ、00年代以降のアニソンや電波系の系譜にもつながる「Kawaii Future Bass」のスタイル。脱力したフレーズには一度聴くと耳から離れなくなる中毒性がある。「ロボティックガール」のMVを見ると、増田セバスチャンやファンタジスタ歌麿呂が開拓してきた2010年代のカラフルなジャパニーズ・ポップカルチャーのアートセンスを受け継ぐようなセンスも感じる。
アルバムはYunomiが女性トラックメイカー/シンガーのYUC’eと共に立ち上げたレーベル<未来茶レコード>からの1枚。同時にリリースされたYUC’e『Future Cake』もいい。
■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。