小野島大の新譜キュレーション 第13回
クライン、傑作EPで最注目シンガーソングライターに 小野島大による新譜8選
2カ月のご無沙汰でした。今回もエレクトロニックな新作から気になったものをご紹介します。
今回凄まじかったのは、なんといってもスティーヴ・アルビニがプロデュースしたベン・フロストの3年ぶり新作『The Centre Cannot Hold』(Mute/Traffic)ですが、これに関しては当サイトのコラムで既に触れているので、詳しくはそちらをご覧ください。間違いなく今年度のベスト・アルバムの1枚に挙げられるであろう大傑作です。
UKの鬼才キーラン・へブデンのユニット、フォー・テット(Four Tet)の2年ぶり9作目の新作が『New Energy』(Text/Hostess)。前作が1曲20分にも及ぶ民俗音楽色濃い大作が2曲だけという特殊なアルバムだったので、いかにもフォー・テットらしいカラフルでメランコリックでソフィスティケイトされた美しいエレクトロニカが並ぶ本作は、多くのリスナーに歓迎されるでしょう。グルーヴィなダンス・トラックからアンビエントな小品まで、やはりこの人の才能は別格と思わせます。いつまでも浸っていたい珠玉の傑作。
前回アルバム『Only』を紹介したクライン(Klein)が、なんとロンドンのベース・ミュージックの老舗<Hyperdub>と契約、いきなりニュー・EP『Tommy EP』(Hyperdub)をリリースしてきました。これまで以上にエクスペリメンタルでダークでカッティング・エッジで禍々しいエレクトロニックR&Bを展開しています。内向性と攻撃性、無機質性と官能性が背中合わせになり、狂おしいほどの背徳の香りが立ち上がる。ピアノや声ネタの使い方も巧みで、ハイレゾで聴くと重低音の押し出しとグリッチ・ノイズの鋭利な尖り具合が強力。おそらくは来年に予定されるニュー・アルバムへの期待を大いに高める傑作です。今最注目の才能。