クライン、傑作EPで最注目シンガーソングライターに 小野島大による新譜8選

 
バンブーマン『Whispers』

 マシュー・ハーバート主宰のレーベル<Accidental>からデビューしたUKのバンブーマン(Bambooman)の『Whispers』(Accidental)。2013年ごろからシングル・リリースを始め、これがファースト・アルバムです。才気煥発なグリッチ〜エレクトロニカ〜テクノ〜エクスペリメンタル・ヒップホップで、J・ディラの衣鉢を継ぐような凝ったビート・メイクと目くるめくカラフルなサウンド・コラージュ、透明感のあるアンビエントな空間処理とシャープな音像の独創的なミクスチュアが非常に印象的かつ魅力的です。さすがハーバート印。期待は裏切りません。 

Bambooman - 'Melt' (Official Video)

Bambooman - Strain [Accidental]
ブレインワルツェラ『Poly-Ana』

 ベルリン在住らしいということ以外何もわかっていない謎の新人ブレインワルツェラ(Brainwaltzera)のファースト・アルバム『Poly-Ana』(FILM/Wordandsound/ritmo calentito)。静謐なアンビエント/エレクトロニカ〜IDMから、よりフロア寄りのダンス・トラック、エキセントリックなブレイクビーツ、インダストリアル、エレクトロニック・ドローン〜シューゲイズ、初期テクノ・スタイルまで、オウテカや初期エイフェックス・ツイン、ボーズ・オブ・カナダなど初期<WARP>や<Rephlex>を思わせるような、荒々しくザラザラとした手触りとクールでミステリアスな雰囲気が実に刺激的です。


シゲト『The New Monday』

 デトロイト在住のトラックメイカーで、スクール・オブ・セヴン・ベルズのサポート・ドラマーでもあったシゲト(Shigeto)の4年ぶり4作目が『The New Monday』(Ghostly International/Plancha)。ジャズやヒップホップとディープ・ハウス〜デトロイト・テクノの接点を探るような音楽性ですが、フライング・ロータス以降を感じさせた前作よりもビートがストレートになり、よりフロア・コンシャスな肉体性が強まっています。上モノとローのバランスが抜群に良くて、歯切れのいいパーカッション、キックの音圧とシンセベースの重低音、浮遊するシンセやエレクトリック・ピアノの音色がとにかく気持ちがいい。音の出し入れや空間の使い方、音色の作り方など、相変わらず随所に才能のきらめきを感じます。10月6日発売。


Shigeto - Barry White (ft. ZelooperZ)
Shigeto - Detroit Part II

 ケミカル・ブラザーズやスヴェン・ヴァース、ヨリス・ヴォーンなどのリミックスでも知られるデンマークのトラックメイカーのケルシュ(Kölsch)の3作目が『1989』(Kompakt)。『1977』『1983』と続く自伝3部作の最終章となる作品だそうです。<Kompakt>でいうとザ・フィールドあたりに近い、エモーショナルで耽美的なテック〜ミニマル〜プログレッシヴ・ハウスで、EDM方面にもフックアップされているドラマティックで哀愁溢れるメロディアスなサウンドは、非常に日本人好みではないでしょうか。

Kölsch - In Bottles feat. Aurora
Kölsch - Grey
ハードフロア『The Business Of Basslines』

 ジャーマン・アシッド・ハウスの大ベテランであり、大の野球好きでも知られる(ドイツのプロ野球リーグの選手としても活躍していたとか)ハードフロア(Hardfloor)の3年ぶり新作『The Business Of Basslines』(Hardfloor/U/M/A/A)。もはや伝統芸能と言いたくなる、25年間まったく揺るぐことのない、耳の奥をほじられるような歯切れよく気持ちのいいハードフロア節を堂々展開しています。テクノ好きなら絶対に抗えない音でしょう。「Computer Controlled Soul」なんて曲名にもにやりとさせられますね。日本盤CDは、ボーナス・トラックとしてこの秋公開のアニメ映画『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』の挿入歌に起用された「Acperience 7」(代表作「Acperience」の最新ヴァージョン)を収録しています。

MV HRDFLR「Acperience7_eureka_mix」(交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1挿入曲)
Hardfloor - "The Business Of Basslines" (First Preview) HFLP05 / HFCD05

 ではまた次回。


 

■小野島大
音楽評論家。 時々DJ。『ミュージック・マガジン』『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『MUSICA』『ナタリー』『週刊SPA』などに執筆。著編書に『ロックがわかる超名盤100』(音楽之友社)、『NEWSWAVEと、その時代』(エイベックス)、『フィッシュマンズ全書』(小学館)『音楽配信はどこに向かう?』(インプレス)など。facebookTwitter

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