A$AP Mob、BROCKHAMPTON……渡辺志保が注目するヒップホップ・クルー4組

ブロックハンプトン『Saturation II』

 続いては、LAを中心に活動する新世代クルー、ブロックハンプトンを。リーダーはテキサス州出身で、もともとソロアーティストとしても好評価を得ていたケヴィン・アブストラクト。クルーのメンバーは総勢15名にも及び、出身地もバラバラ。プロデューサーとして所属するベアーフェイスはヨーロッパのアイルランド出身とのこと。ケヴィンの高校時代の同級生もいれば、カニエ・ウエストのファンが集う掲示板で知り合ったというメンバーもいるといった具合に、クルー形成に至るまでのプロセスもユニーク。ラッパーの他に、デザイナーやエンジニア、ツアーマネージャーまでを内包し、ヒップホップ・クルーと言うよりは会社組織のようなメンバー構成でもあります。ケヴィン自身は「自分の友達が欲しかったとともに、自分たちで発信できるメディア・プラットフォームが欲しかった」とインタビューで答えていますし、単純に音楽を製作するためだけに集った仲間ではないことが分かります。LAで活動している点や、ユーモア溢れる音楽スタイルなどからオッド・フューチャー的なスタイルを彷彿とさせますが、2017年の今、さらに進化したクルー形態がこのブロックハンプトンなのかもしれません。彼らは自分たちのことを「アメリカン・ボーイズ・バンド」と呼んいるのですが、ボーイズ・バンドとは「男性グループ」といった意味合いで、個人的には、過去にバックストリートボーイズやイン・シンクらのアイドル系男性グループをまとめる際によく使われていた印象です。

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 前置きが長くなってしまいましたが、このブロックハンプトン、今年に入ってからアルバム三部作となる『SATURATION』シリーズをリリースしており、つい最近、『Saturation II』を発表したばかり。本アルバム、ピッチフォークは「ウエスト・コーストのウータン・クラン」と評したほどで、マイクリレーにおけるスリリングさは前作を上回るといった印象。一部に見られる、ケヴィンが作り上げるオルター・エゴを軸とした展開や既存の楽曲とのストーリーの連なりなどは、これまでにタイラー・ザ・クリエイターが行ってきたスタイルを彷彿とさせますが、タイラーが1stアルバム『Bastard』をリリースしたのは2009年で、すでに8年前。1996年生まれのケヴィンは、その時まだ13歳ということになります。当時、かなり奇抜に見えたタイラーの動きでしたが、すでにタイラーに影響を受けた次世代のアーティストがシーンを引っ掻き回しており、テン年代に入ってから早くも時代が一回りしたのだ、と実感させられるのが、彼らブロックハンプトンの動きでもあります。

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