“懐かしのゲーム”を題材とする曲とMVが話題に BURNOUT SYNDROMES「ハイスコアガール」徹底分析

BOS「ハイスコアガール」を徹底分析

 また、これまでメジャーデビューシングル『FLY HIGH!!』で青空や教室を背にジャンプする少女にタイポグラフィを重ね、『ヒカリアレ』ではタイポグラフィを光で顔に映写するなどアイデア満載のMVでも知られる彼らだが、今回の「ハイスコアガール」では映像中にドット絵の女の子キャラが登場。様々なゲーム作品へのオマージュがここでも繰り広げられていく。近年ドット絵のゲームにオマージュを捧げたMVと言えば、上坂すみれの「パララックス・ビュー」(2014年リリース)にも『桃太郎電鉄』『魔界村』『ドラゴンクエスト』『スーパーロボット大戦』などの要素が盛り込まれていたが、「ハイスコアガール」の特徴は彼らの過去のMV同様、歌詞の魅力を伝える“リリックビデオ”としての魅力を兼ね備えていること。ドット絵のゲームを舞台にキャラのアクションに応じて次々に歌詞が出現し、<満身創痍で放つ波動拳><起死回生で放つ昇竜拳>という『ストリートファイター』シリーズを思わせる部分では「波動拳」と「昇竜拳」を操作時のコマンドで表示。また、終盤画面が赤&黒ベースになり、それまでの横スクロール/縦スクロールが突如画面奥への移動に変わるのは、1995年に任天堂が発売した“早すぎた家庭用VRゲーム機”ことバーチャルボーイへのオマージュだろう。最後は女の子がボスを“ある必殺技”で倒し大団円。とはいえ、ゲームネタに終始するのではなく、楽曲の核となるテーマがこんな歌詞で表現されている。

BURNOUT SYNDROMES 『ハイスコアガール』 Music Video(Short Version)

<宇宙の1ドットに過ぎぬ地球で ハイスコアかどうか誰が決めるの? 御利口さんをロールプレイして 本当の私を殺してしまうなら ハイスコアなんか要らない>

 まるでほぼ何もセリフを話さない寡黙なヒロイン・晶の気持ちを代弁したようにも聞こえるこの歌詞からは、コミック作品『ハイスコアガール』で2人の恋模様を通して描かれる、「人の幸せは、客観的な点数や周囲が決めた基準では決して計れない」という重要なテーマが浮かび上がってくる。様々なゲーム用語が飛び交う中で終盤にこのストレートな歌詞が登場することで、彼らが楽曲に込めた真っすぐな思いが際立って見える構成は非常に鮮やかだ。また、MVでふんだんに使用されるドット絵が、純粋であるがゆえに素直になれないハルオと晶の“不器用な恋”を表現しているように感じられるのも、この楽曲ならではの魅力だろう。つまり、「ハイスコアガール」で歌われているのは、「不器用でもそれぞれに自分の信じる幸せを見つけることが大切だ」という、誰しもが共感できる普遍的なメッセージ。その内容について触れられた熊谷和海のセルフライナーノーツを、最後に引用しておきたい。

「自分は何のために生まれてきたのか? 誰もが一度は経験する自問自答。その答えは正に十人十色で、一括りに語ることは出来ません。しかしどんな答えであろうと、突き詰めれば全ては『幸せになるため』という結論に収束するのではないでしょうか。ではこの『幸せ』の基準とは何か?ということに焦点を当てたのがこの曲。『幸せ』というと、先ずお金や名声を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかしそれらは一部の人々が祭り上げた単なる神輿に過ぎず、邪なそれらに踊らされている内は自分と他人を比較し苦しむだけでしょう。人間の幸福とはもっと繊細で複雑な、オーダーメイドなものであるハズです。『世間が何と言おうとこれさえ満たしていれば私は幸せ』という自分だけの絶対基準。それさえあれば他者と比べるハイスコアなんて要らない。そしてそこからリアルな、唯一無二の人生が始まる。そう僕は思うのです」(BURNOUT SYNDROMES Gt.Vo 熊谷和海)

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

BURNOUT SYNDROMES 『ハイスコアガール』

■リリース情報
DIGITAL NEW SINGLE『ハイスコアガール』
9月18日(月・祝)配信スタート
https://itunes.apple.com/jp/album/id1272056470?at=10lpgB&ct=4547366329339_al&app=itunes

■ライブ情報
『全国ツーマンツアー 〜Butterfly in the stomach 2〜』
9月22日(金)大阪府 梅田Shangri-La  w/ココロオークション
10月13日(金)香川県 高松DIME w/Halo at 四畳半 
10月27日(金)福岡県 DRUM SON w/Brian the Sun
※前売3,500円(別途ドリンク代)
※全会場:18:00 open / 18:30 start
公演詳細はこちら

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