作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」第13回
作詞家 zoppが考える、“流行歌”が更新されない理由 「日本人の琴線に触れるメロディが減った」
「ベタだけどしっかり絵が見えるような物語性のある歌詞は、聴いていて面白い」
ーーなるほど。夏うたの話に戻りますが、尖っているというか、印象的な曲は何かありますか。
zopp:『関ジャム』でも挙げた「夏の思い出」(ケツメイシ)が自分の中で印象深いんですけど、KinKi Kidsの「ジェットコースター・ロマンス」もとても好きで。あの“THE 昭和”な歌詞というか、“仲間たちとわざとはぐれて夕方の海を見に行く”というベタだけどしっかり絵が見えるような物語性のある歌詞は聴いていて面白いし、わくわくします。
ーーサビ頭の<波はジェットコースター>などは、キャッチコピーのようで特に印象的です。
zopp:あの歌詞は松本隆さんが好きなものだと思いますね。山下達郎さんのメロディも終始良いですし、比喩表現が独特なのも楽しい。一見分かりづらい比喩表現と分かりやすい物語が融合しているから、ベタな物語でありながらベタにならない。これは自分の作詞スタイルにも近いんですが、複雑ではないけど物語がしっかりあって、その中でどういう情景をどういう言葉で切り取るのか、というのはベテランの作詞家さんのテクニックだろうなと思っています。
ーーzoppさんが青春時代に聴いていた夏うたは、どんなものがありますか。
zopp:SPEEDの「Body & Soul」とか、あとはT.M.Revolutionも聴いてました。当時は歌番組を見て、次の日にみんなで語るというのが普通で、まさに音楽全盛期でしたよね。経済的にも将来的にもあまり不安がなかったから、音楽も面白いものを作れていましたけど、今は将来に不安を抱いてるがゆえにちょっと悲しい、重い歌が多いですよね。でも“おバカ”や“エロ”が大々的に許されるのは夏だけなんで、ビビらないでもっとそういう曲を作ってほしいです。長く聴かれるアーティストって格好良さと“おバカ”とか“エロ”な部分、両方とも持っているんですよ。星野さんもそうですけど、パイオニアは桑田佳祐さん。あとはMr.Childrenの桜井和寿さん、福山雅治さん……。関ジャニ∞が人気なのもそういった二面性があるからでしょうね。
ーーそういう意味で関ジャニ∞の「罪と夏」は、まさに“夏うた”ですよね。他に夏うたの中で面白いと感じたものはありますか。
zopp:最後に印象に残っているのは「ポニーテールとシュシュ」(AKB48)。秋元(康)さんのすごいところは、真面目っぽい中にちょっと“エロ”を彷彿とさせる歌詞を作るところ。ORANGE RANGEの「イケナイ太陽」などもそうで、特に男性アーティストの場合、“エロ”なところを出さないと同性のリスナーから好かれないし、異性も上辺だけの爽やかさと格好よさだけでなく、“おバカ”で“エロ”なところを見たい。僕も来年はものすごく“おバカ”な歌を作ろうと思っています!
(取材=中村拓海、村上夏菜/構成=村上夏菜)
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