作詞家 zoppが明かす、“夏うた”への危機感「季語を使う不便さが顕著に出てきた」

zoppが明かす、“夏うた”への危機感

「夏うたを作詞するときはどこを切り取るかが重要」

ーーここまで番組でも挙げていた「体言止め」「音ノリ」「韻」について聞いてきましたが、“夏うた”を書くときに他に意識することはありますか?

zopp:実は秋の歌ってあまりなくて、秋の歌=夏の終わりの歌、ですよね。だから、夏を描くときはすごく細かく切ることを意識しないといけないんです。夏が来る瞬間と、夏真っ盛りと、夏が過ぎていくころと、夏の終わり、というように。夏は3カ月くらいあるシーズンで、夏休みも長いので、夏うたを作詞するときはどこを切り取るかが重要になります。8月の終わりは夏休みが終わって夏が終わるイメージですけど、実際は10月くらいまで暑かったりしますよね。この辺りの意識の擦り合わせが難しくなってきた気がします。

ーー昔より夏の解釈が広がったということでしょうか。

zopp:そうだと思います。気候の変化による四季のズレは、今後歌詞に影響することもあるでしょうね。今はSNSがあるからか、その日その瞬間を切りとる癖がついてきていて、長いタームで時間を見なくなってしまいました。早いうちから水着姿のミュージックビデオが出るのは、多分「今の季節ならもうこれを歌わせないと」という作り手側の感覚があるんですけど、もうそういう流れではなくて、まさに“今”のものを切りとってあげないといけない。夏の期間が長くなって6月に水着を着ても違和感はなくなったとはいえ、季節との兼ね合いって難しいですよね。

ーー日本の気候の変化とともに、季節を歌う歌にも変化が出ている。

zopp:以前は春に必ず1アーティストが「桜」の歌を歌って有名になったり、冬には冬の女王・広瀬香美さんがいましたが、最近はそういった季節を代表する歌手がいなくなってしまいました。どのアーティストもあまり季節を意識しない歌を歌い始めたのかもしれませんね。季語が存在する日本語の中で季節感のない歌を歌うのは少しもったいない気もするんですけど、実際僕も歌詞を書いている時に季語を入れると、それによってその季節を過ぎると歌わなくなるというイメージがあって。昔はその季節だけ盛り上がるので十分だと思われてたんですけど、一年を通じて楽曲が聴かれるようになった今は、季語を使う“不便さ”が顕著に出てきた気がします。AKBグループやジャニーズのような確固たるファンがいるアーティストはちゃんと毎年夏うたを作っていますけど、そこに至るまでのアーティストは季節を限定した歌より、どの季節でも歌えるような楽曲を作ってるような気がします。最近はその四季も崩れ始めていますが、それでも季節の流行歌を作り続けてほしいですね。

(取材=中村拓海、村上夏菜/構成=村上夏菜)

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