androp×Creepy Nutsが語る、ジャンル越えたコラボの意義「普通だと思ってることが新鮮になる」

androp×Creepy Nuts対談

「『事故的な出会い』みたいなものは、より一層大切になっている」(R-指定)

――逆に、「SOS!」を通して、自分たち自身の新たな可能性に気づいた部分もありましたか?

佐藤:それはやっぱり、MVですね(笑)。andropのアートワークはこれまではロゴもフォントも統一されていましたけど、今回はせっかくなので、「突き抜けてアホなことをやってみよう!」と思ったんですよ。

R-指定:その結果、本来破天荒であるはずのヒップホップアーティストの方が「こんなことやっていいんですか?!」と、andropを心配するという(笑)。リキッドで一緒に初披露したときに、お客さんがめちゃくちゃ盛り上がってくれたのはすごく嬉しかったですね。

Creepy Nuts DJ松永

DJ松永:「サプライズ・ゲストが来てくれました!!」と紹介されて会場が「スンッ」ってなったら「もう死んじゃう……」と思っていたら、お客さんもめちゃくちゃ温かかったんです。

R-指定:今回のコラボは、僕らも普段は開けない引き出しを開けてもらった感じがありました。「夏の曲を作ろう」って言ってもらわなかったら、僕らが夏の曲を作ることはなかったと思うし、それはいつもは踏み入れていない領域に行けたということだと思うんで。サマーソングという、アーティストが誰でも通る道の筆おろしを手伝ってもらった感じですね。「ほら、ここだよ。こうするんだよ」って(笑)。

DJ松永: andropのみんなに筆おろしてもらったニュアンス? 初めてが6Pだった……。

R-指定:(笑)。ヤンチャな先輩に「俺の友達にすぐヤレる女いるで」って紹介してもらった感じかな。その女の子も「何こいつ~?」みたいな感じで、でも「やってやれよ」みたいな。で、「ここでいいんですか?」「バカ、ちげーよ。こっちだよ」って。

佐藤:何の話をしてるんだよ(笑)。

androp 前田恭介

前田:(笑)。ただ、俺たちも感覚としては一緒でしたよ。これまでブランディングをきっちりして色んなものを守ってきた中で、今回はCreepy Nutsを言い訳にさせてもらって、これまで行けなかったところに行けた。それは、4人だけじゃ絶対にできなかったことなんで。

松永:ああ、嬉しいです。結果、今回のアーティスト写真も、どっちのカラーでもないんですよね。andropの感じでも俺らの感じでもなくて、「これ何だろう?」って(笑)。

――全員がまだ行ったことのない場所に行けたことの象徴かもしれません(笑)。

R-指定:あと、今回のプロジェクトは、めちゃくちゃヒップホップ的だと思いました。MV撮影もまさにそうで、前日に、「明日打ち合わせで、明後日撮影」という感じで、内容がノリで決まっていったんです。「言うても、明日打ち合わせて、明後日はリハーサルで、本番は一週間後でしょ?」と思っていたら、「本当に明日撮ります」って(笑)。

佐藤:松永くん、ずっと嫌そうだったよね(笑)。

DJ松永:いや、マジで寒かったから……。僕はスーツなんで、濡れた長袖が全然乾かなくて、「これは!! 死ぬ!!!!」と思っていたんですよ。(オフィシャルのアーティスト写真を見ながら)これ、MV撮影の最後に撮ったんですけど、僕は笑ってるわけじゃないんです。むしろ表情筋を動かすことで体を温めている……。

androp×Creepy Nuts アーティスト写真

R-指定:この写真自体がまさに「SOS」だった、という(笑)。あと、現場についたらandropのみんながあの衣装でノリノリで、めっちゃ笑いました。僕らも撮影しているうちにテンションが上がって、当日はひどい嵐だったんですけど、最後はやけくそで盛り上がりましたね。現場では「寒い」「痛い」って言ってたけど、めちゃくちゃ楽しかった。

DJ松永:いい思い出になったよね。僕は数年ぶりの海がこれですよ!

佐藤:今回は「ひと夏の思い出を作ろう」というテーマでもあったので、撮影自体がまさに夏の思い出になっているんです。勢いがなかったらできなかったよね。一週間考えていたら、「やっぱりやめよう」ってなってたはず。

内澤:自分たちの作品で、映像チェックのときにこんなに笑ったことはなかったと思います。監督も撮影中、「かっこいい方」と「面白い方」なら迷わず「面白い方」を選択してくれて。

佐藤:ちなみに、このMVは全部iPhoneで撮っているんですよ。

内澤:なのに、その撮影風景を記録した(初回盤に収録される)ドキュメンタリーは4Kのカメラで撮っているんです。

松永:ドキュメンタリーのときに「すごいカメラを使っているな」と思っていたら、「本番行きまーす!」と言ってiPhoneが出てきた(笑)。

R-指定:ドキュメンタリーには会議室でのやりとりも記録されていて、スタッフも監督も俺らに内緒でびっくりさせてやろうという魂胆だったんで、何も知らずに僕らが会議室に入ると、みんながヘラヘラしてるんですよね(笑)。

内澤:その様子は全部初回盤に入っているんで、ぜひ観てもらいたいです。

佐藤:セットで全部観てこそ完成するので、その経緯も込みで楽しんでもらえたら、と。

androp - 「SOS! feat. Creepy Nuts」Music Video (Short ver.)

――今回の「SOS! feat. Creepy Nuts」は、andropにとってどんな曲になりましたか?

内澤:今回は本当に、自分たちの殻を破ってくれる経験になりました。これからの音楽性や、活動していくすべてに大きな変化をくれたコラボレーションだったと思います。

R-指定:次のandropの作品がどうなるのか、僕らもすごく楽しみです。

DJ松永:もし仮に今回のコラボが全部なかったことになってたらどうする? 「次の作品は、『Prism』以来のシングルです!」って(笑)。

全員:ははははは!

――今の時代は自分の好きな情報を集めて、それだけに囲まれて暮らすことも簡単にできますよね。最後に、そんな時代にあって、コラボレーションにどんな意義を感じているかを教えてください。

R-指定:情報が選べて、自分だけの箱庭を作りやすい環境にある中で、外に出たときのいい意味での「事故」であるとか、「事故的な出会い」みたいなものは、より一層大切になっていると思うんですよ。自分が何でも選べる時代だからこそ、自分が選んでないものと出会う感覚って、すごく大切だと思う。今はネットで映画も好きなところから観られるし、音楽も自分の好きな曲だけ買える時代で、ふとつけてるラジオで流れた曲がかっこいいとか、TVをつけていたときにふと観た映画がすごく心に残ったとか、そういう事故的な出会いが少なくなっていて。だからこそ、「andropの新曲やん!」と思って聴いたら、「あれ、ラップ?!」ってなったり、「feat. Creepy Nuts」という情報を見た人がこの曲でandropに出会ったり……。そういう出会いをしてくれたら嬉しいと思うんですよね。

内澤:もちろん、その事故的なものを受け入れるも受け入れないも人次第だし、それを楽しむも楽しまないも人次第だし。でも、今回のコラボを通して、andropの音楽を聴いてくれている人たちがCreepy Nutsのことをもっと知ってくれたら、それは僕らとしても本当に嬉しいことなんです。僕はCreepy Nutsは、これからの音楽界を引っ張ってくれるかっこいい人たちだと思っているので、今回コラボレーションができて本当に嬉しかったです。あと、今回の曲で僕らが言いたかったのは、「夏を楽しむヤツ」も「夏をケッ!と思ってるヤツ」もどちらも正しくて、「物事は自分の心持ち次第で、辛いことも楽しく変換させられる」ということで。このメッセージはいつの時代も変わらない普遍的なことだと思うので、そういうことも考えるきっかけになってくれたら、僕らとしてはすごく嬉しいですね。

(取材・文=杉山仁/撮影=林直幸)

androp『SOS! feat. Creepy Nuts』

■リリース情報
『SOS! feat. Creepy Nuts』
2017年8月23日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD)2,300円(税抜)
通常盤(CD)1,200円(税抜)

<CD収録内容>
1. SOS! feat. Creepy Nuts
2. Sunrise Sunset
3. Prism (one-man live tour 2017 "angstrom 0.8 pm" tour final)
4. SOS! feat. Creepy Nuts (instrumental)

<DVD>※初回限定盤のみ
「SOS! feat. Creepy Nuts」Music Video
「SOS! feat. Creepy Nuts」Documentary film
「SOS! feat. Creepy Nuts」Commentary Video

■配信情報
「SOS! feat. Creepy Nuts」
iTunes
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■ライブ情報
『androp presents " A+ "』
2017年9月16日(土)愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO
開場:16:00  開演:17:00
出演:androp / FLOWER FLOWER / フジファブリック

2017年9月17日(日)大阪・UMEDA CLUB QUATTRO
開場:16:00  開演:17:00
出演:androp / FLOWER FLOWER / 吉田一郎不可触世界

2017年9月23日(土)東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO
開場:17:00  開演:18:00
出演:androp / FLOWER FLOWER

※チケット代:立見4,500円(税込・ドリンク代 別途500円必要)
※6歳以下の入場不可
※8月11日(金)18:00~8月20日(日)23:00オフィシャルホームページにてチケット先行受付中

『androp one-man live 2017 at 日比谷野外大音楽堂』
2017年10月28日(土)東京・日比谷野外大音楽堂
開場:17:15 開演:18:00
チケット代:5,800円(税込・全席指定、6歳以下の入場不可)

andropオフィシャルサイト
Creepy Nutsオフィシャルサイト

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