Prime Music、Echo……Amazonは音楽業界をどう変える? 海外事例踏まえて考察

 ワンプッシュで商品を届けるDash Buttonや、1時間以内で商品を届けるAmazon Prime Now、実店舗・Amazonプライム ポップアップストアの設置など、常に新しい取り組みで話題を振りまくAmazon。ここ最近では、Prime会員向けにPrime Musicを展開したり、人工知能Alexa搭載スピーカー・Amazon EchoやAmazon Echo Showを発売したりと、音楽業界に影響のある動きも目立つ。そこで今回、海外の動向にも詳しいデジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏に、近年のAmazonの音楽的取り組みや今後のサービスについて話を聞いた。

「Amazonのそれぞれの取り組みは一見バラバラな戦略に見えますが、実は全部紐づいています。例えばAmazon Echoで音楽を聴きたい場合、デフォルトでPrime Musicが入っていて、音楽を再生するにはプライム会員になるか、海外で始めた新しい定額制音楽配信サービス・Amazon Music Unlimitedに入るか、どちらでもユーザーが好きな方を選んで良い、というスタンスです。これまでの音楽ストリーミングサービスはアプリ上で曲を検索したり、アルバムを選んだりするものが多かった。しかし、音楽は好きだけどテックにはそんなに詳しくない人でも使いやすいサービス、という意味でAmazon Echoはオープンなツールになっています。これまでアプリ、スマートフォンだけで音楽を聴いていた人たちが、家に帰っても手軽に音楽が聴けるようになった、というのは音楽への考え方や行動の大きい変化となるでしょう」

 現状ではスマートフォンで通勤・通学時間帯に音楽を聴くという人も多い。Amazon Echoによって“家で音楽を聴く”というスタイルが浸透すれば、リスナーが音楽に費やす時間も増えるだろう。Apple、Google、LINEなど各社がAI搭載スピーカーの販売に乗り出しているが、Amazonが販売するスピーカーの強みはどんなところにあるのだろうか。

 「AppleのHomePodは、価格帯的にも家に置くオーディオデバイスにプレミアム感を持ちたい人という印象で、Echoはリーズナブルな価格帯でHomepodよりも一般の人が購入しやすい、というようにそれぞれターゲットが異なります。AIスピーカーは家に何台も置くものではないので、どれを使うのかは利便性やユーザーの満足度に大きく左右されますが、ECで様々なサービスを展開しているAmazonは、閲覧履歴などのビッグデータとスピーカーを紐づけられるという利点があるのが強みだと思います。EchoでPrime MusicやUnlimitedを使うと『テンションが上がる曲』と抽象的に指示をしても、Alexaは理解してくれるようになる。SpotifyやApple Musicはまだコンテキストベースでコンテンツにアクセスできるところにまでは至っていないので、その点ではAmazonが一歩リードしていると言えるかもしれません」

  「TechCrunch Disrupt NY」ではAmazon Music副社長のスティーブ・ブームが「アマゾンがレコード会社に取って代わる存在になることはない」と語っていた。(参考:アマゾンは音楽業界をどう見ているのか 音楽とPrimeとAlexaがなぜ重要か、戦略担当者が語る)しかし、Amazonが今後の音楽業界を牽引していく重要な存在であることは間違いない。今後はどのようなサービスを展開していくのだろう。

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