集団行動・真部脩一が語る、“Jポップの王道”を目指す理由「僕にとってはこれがスタンダード」 

集団行動・真部脩一が語る、“Jポップの王道”を目指す理由「僕にとってはこれがスタンダード」 

言葉にならない魔法みたいなものが生まれてほしい

ーーあらためて、真部さんが考えるスタンダードとはどんな音楽ですか。

真部:ティン・パン・アレー(かつて楽譜屋街だったマンハッタンの一角)で売られていた譜面とか、ジャズ・スタンダードとか、ショービズとしてはマイケル・ジャクソンとか、というところですね。個人の表現というより、ひとつのアンセムのような。

ーーそこを目指すというのは、やはり一貫していますね。

真部:そうですね。そういう意味で、メロディや歌メロをいかにシンプルに、美しくするかということを追求してきました。その上で今回は、許容の幅というか、どこまで自分の趣味性、エッセンスみたいなものを入れても破綻しないか、という試みでした。

ーーエッセンスはすごく出ていますね。アメリカンロックというキーワードを聞いて、また聴き直したら面白そうだと思いました。

真部:僕としても、今回のアルバムを作ることで、自分が過去に抑制していたものを、自分で再評価できるようになったというか。相対性理論の作品に感じていたわだかまりのようなものも少し溶けた感覚なので、次回作の制作がすでに楽しみになっています。

ーー言葉の部分もそうだし、メロについても感情の揺れが増していて、よりエモーショナルになっていますね。前回のインタビューでは、「魔法」という言葉でそうしたエッセンスを説明してもらいましたが。

真部:「スタンダードなものを」と言いつつ、最後は歌い手に歌を託さないと作品として完結しないこともあって。なるべく誰が歌っても成立するような世界観を作ろうとしながら、どこかで託すという作業をするときに、エモーショナルな方向に振るのが成功したという感じです。

ーーなるほど。エモーショナルなものに振ることによって、託しやすくなる?

真部:そういうことですね。今回は王道のバンド、僕の好きなショービズ的なバンドとして、まずロックスターというものを作りたかった。そのためのキャラクターの強化ということが念頭にあったから、“託す”ということが素直にできたんじゃないかなと思います。音楽を続けていくと、自然とどんどん自分が出てくるというか、リリカルになっていくんですけど、その部分に正直でいられるボーカリストだった、ということですね。


ーー歌詞についてはどうですか? こちらもエモーショナルな面が出てきているように感じます。

真部:作詞については意識的に大事にしないようにしてきたんです。というのも、たぶん自分にとって一番得意なことだから、それを大事にすると感情移入しすぎて、客観視できなくなってしまう。だから、歌詞をプライオリティの上位から外そうと、ずっと考えてきて(笑)。

ーーそうなんですね。面白い。

真部:作詞って9割型、修辞でできることなので、ほとんどテクニックの世界なんです。あえて思い入れをなくすことで9割が組み上がり、残り1割の部分に自分の趣味性だったり、感情の部分が出てきて、スパイスになってしまう。そこが大きくなると歌詞が揺れてしまうので、なるべく後回しにしようとしていたんですけど、やっぱり30を過ぎてから、そこも含めてーー感情表現やストーリーテリングも上手になってもいいんじゃないかという気持ちになってきていて。

ーー真部さんはコンセプトメーカー的な面を強くもつ方だと思いますが、それは歌詞からはあえて注意深く排除されている。そのギャップが面白いですね。作品を通じてコンセプトは強く感じるのに、言葉ではまったく説明されない。

真部:僕が音楽に対して感じるものって、コンセプチュアルな言葉で説明できる部分ではないんです。自分が作る音楽においても、最終的な出口として、言葉にならない魔法みたいなものが生まれてほしい。だから、コンセプトというよりもルールだったり、レギュレーションを自分のなかで設定して、いつでもそれを破れるようにしておくこと、実際にそこから逸脱することがずっと目標なんです。例えばF1はルール、レギュレーションがあるから面白いわけで、草レースにはしたくない(笑)。

ーーなるほど。集団行動においても真部さんが引いたレール、レギュレーションがあって、それをどこまで逸脱するか、ということが基準になっていると。

真部:そういう意味では、今回は自分の芸風がある程度、認知された状態でのスタートだったので、逆にやりやすかったですね。「みんなが知っている芸風」という部分と、知らない人にとってスタンダードとして扱われるかどうか、という部分をうまく両立しながらできたらいいなと。
 それに、僕は新しいことをやっても同じように聴こえる部分があるというのは、ものすごい強みだと思っていて。そういうものをずっと作りたかったし、「馴染んでいて、でも新しい」というものができるんだったら、どんどん挑戦していきたいなという気もします。

 ーー音の佇まいが日本で流通しているポップスとは違うので、新奇性を感じる人もいると思いますが、繰り返し聴いていると、各曲のスタンダード性みたいなものは伝わってきますね。

真部:ありがとうございます。僕にとってはずっと、これがスタンダードなんです。

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