ヤバイTシャツ屋さんがフェスで見せる“エンタメ” 音楽とパフォーマンスから人気の理由を考察
気温も暖かくなり、音楽フェスが盛んに行われる季節となった。フェスの数が年々増え続けているなか、出演者のなかでも近年特に人気を集めているのがヤバイTシャツ屋さん(以下、ヤバT)だ。フェスに足を運んでいる人にとっては、一度は聞いたことある名前ではないだろうか。彼らはどんなバンドなのか? フェスで多くの観客を盛り上げ、確実にファンを増やしている理由を考えたい。
ヤバTは、2016年に<ユニバーサルシグマ>からメジャーデビューした3人組ロックバンド。彼らが初めてフェスに出演したのは、インディーズ時代の『SUMMER SONIC 2015』。その後、各方面から実力を評価され、『VIVA LA ROCK』、『京都大作戦』、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』など数々の大型フェスやイベントに出演するようになった。メジャーデビュー後もその数は増え続け、2017年に関しては既に13公演のフェスに出演し、6月以降も15公演への出演が決まっている(6月13日調査時点・公式HPより)。これは月に最低でも2公演以上のフェスに出演している計算となる。このほか、ワンマンライブや他バンドのオープニングアクト、対バンの予定も控えているなど、精力的にライブ活動を行なっている。
そんなヤバTの楽曲の特徴の一つとして、“日常生活のあるある”を歌った歌詞が挙げられる。例えば、<世界のどこでも/君と繋がれる/県境越えて>とWi-Fiの便利さを歌った「無線LANばり便利」や、<鳥貴族でサワーで乾杯したあと/スポッチャでオールナイト>と大学生の日常生活を描いた「ウェイウェイ大学生」など、ロックフェスに足を運ぶ主な層である20代の共感を得るリリックは、初めて聴いた人にも強く印象に残りやすい。
二つめの特徴が、本格的なメロコアサウンド。一見ふざけたような歌詞も、本格的なメロコアサウンドに乗せて歌われると、なぜか癖になる。メロコアのみならずJ-POPやロックなど、様々なジャンルの音楽性を飲み込んだキャッチーなメロディが、オーディエンスの心を掴むのだろう。そんな本格的なサウンドでも歌詞を邪魔することはなく、リリックのフレーズも耳に残りやすい。余計なことは考えず、ただ音楽を“感じられる”、頭をからっぽにして楽しめるバンドなのだ。
魅力という点で取り上げたいのが、ライブでの楽しみ方がすぐに理解できる曲が多いことだ。例えば、ヤバTにとってコール&レスポンスは、通常のライブはもちろん、フェスでのパフォーマンスにおいても必要不可欠な要素。「喜志駅周辺なんもない」の<喜志駅周辺なんにもない!>や<あべのハルカスめっちゃ高い!>という独特のコールは、ライブに初めて行った観客でも一度聴いたら忘れることのない強烈なフレーズといえる。
また、<ライブとかで盛り上がる感じの曲>とシュールで皮肉たっぷりの歌詞が特徴的な「メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されている感じの曲」では、観客を全員しゃがませてジャンプを煽ることも。実際のライブでは、彼らのこういった“観客を巻き込む力”が想像以上に破天荒かつ強力で、“ヤバTエンターテインメント”を間近で感じることができる。これらの楽曲をフェスという彼らのライブをあまり観たことのない人も多い舞台で披露することで、初めて曲を聴いたオーディエンスにもヤバTのライブのイメージを強く印象付けることができるのだ。
さらに彼らには会場を最も盛り上げる“神アレンジソング”がある。それが「あつまれ!パーティピーポー」と「スプラッピ・スプラッパ」だ。「あつまれ!パーティピーポー」はLMFAOが2009年に発表し、YouTubeで約2億回再生を記録している楽曲「Shots ft.Lil Jon」をオマージュしたヤバTのライブ定番ソング。そして「スプラッピ・スプラッパ」は教育番組『おかあさんといっしょ』(NHK Eテレ)のエンディング曲をアレンジしたもの。<まわってまわって>という歌詞に合わせ、“虹のゲート”ならぬサークルモッシュが起こるのもこの楽曲の特徴だ。誰もが一度は聴いたことのある有名ソングがバンド仕様にアレンジされることで、聴いているこちらも身体を動かさずにはいられない。特に生のステージでこれらの楽曲を聴くと、タガがはずれて一緒に騒ぎたくなってしまう。