メジャーデビューシングル『発見者はワタシ』インタビュー
『ゼロの書』OPテーマでも話題 新世代アニソンシンガー たぴみるが提唱する“エモカワイイ”とは?
「“エモカワイイ”はビジュアルではなく、なんとも言えない感情のこと」
ーーたぴみるさんのキャッチフレーズである“エモカワイイ”という言葉は、どういう理由で名付けられたのでしょうか。
たぴみる:これはまよさんが作った言葉です。私のことを「エモい」と言ってくれていて、最初はなんのことかわからなかったんですけど、ビジュアルではなく状態のことを指すんですよ。「本当はこうしたいけどああしているという矛盾した気持ちや、「こうありたいのになれない」という葛藤など、なんとも言えない感情のことなんだなと。テレビに出ているキラキラした人も、家に帰ったら一人になって無言で何かをやっているわけで。お肉が食べたいのにパンケーキの写メを撮ってアップしたり、SNSで裏垢を大量に作って全部キャラが違うとか、そういう裏表を「曝け出してもいいよ」という励ましの言葉が“エモカワイイ”なんだと思います。自分で名乗ったら頭がおかしいので(笑)、概念というか、これを掲げることで自分が少し救われているという感覚なんです。
ーー“エモカワイイ”は、たぴみるさんにとって旗印のようなものなんですね。シングルの楽曲も、それに呼応するかのようにエモーショナルなメッセージのものが目立ちます。表題曲は、『ラブライブ!サンシャイン!!』などでもおなじみ石倉誉之さんの作編曲ですが、かなり盛り上がるナンバーに仕上がっていますね。
たぴみる:一般的にアニソンといえば、盛り上がる楽曲を連想しがちなんですけど、ほかにも可愛らしいものやエンディングっぽいしっとりしたものもありますよね。私はそのなかでもエンディング寄りな雰囲気の曲を好きになることが多かったんです。でも、今回は子供らしい無邪気さが詰まったポジティブな曲に挑戦するということで、はじめは「捻くれ者の私が歌えるはずない」と自信をなくしていて。でも、歌っているうちにどんどん楽しくなってきました。
ーー新たな引き出しを開けられたような楽曲だったと。
たぴみる:そうですね。難しかったですけど、ライブで他の演者さんとコラボしてアッパーな曲を披露したときに大盛り上がりだったこともあったので、そのときの記憶を思い浮かべて歌いました。
ーーカップリングの「こころスタート!」は、ロックというよりも四つ打ちを主体にしたポップなサウンドですね。たぴみるさんの声も元気というよりはキュートなものに寄せているように聴こえました。
たぴみる:「発見者はワタシ」のレコーディングは結構な体力を使ったのですが、こっちはキレイめでスッと入ってくる歌を心がけて歌いました。曲調はこちらのほうがクラシックなアニソンという感じですよね。
ーーそして「心情コンプレックス」では作詞にも挑戦しています。作詞自体はこれが初めてなんですよね?
たぴみる:そうです。最初にオケとメロディができていて、そこにメロディを嵌めていく感じだったんです。すごく難しかったんですけど、「2日で書いて!」と言われたので、頭をこねくり回して精神力を使いました。家にいるのにここまで体力を消耗することもあるんですね(笑)。ほかにも3曲くらい並行して書いていて、その中から選んで頂いたのがこの曲なんです。歌詞は「素直になりたいけどなれない」という気持ちと、「自分からは言えないけど言ってほしい」というプライドを持った複雑さを描こうと思って書きました。
ーーさっき話してもらった“エモカワイイ”ともリンクする内容ですね。
たぴみる:この曲はブラック要素がないので、“エモヤサシイ”くらいですかね(笑)。
ーーこれだけ初めてオリジナル曲をやるということで、選曲会議などには参加したのでしょうか?
たぴみる:はい。でも、今回はリクエストもせず、静かに見守っていました。全部元気な曲でビックリしましたね(笑)。今後はこういう曲も自分の新たな部分を引き出してくれるので楽しみつつ、個人的に好みなエンディングっぽい曲もやってみたいです。シリアスな感じやグロい感じの曲も多分合うんじゃないかなと思います。しばらくは色んなものに挑戦できたら嬉しいです。
ーー「アニソンシンガー」という名称自体、ここ4~5年で一般層に定着したような気がします。その中でたぴみるさんが勝負していきたい立ち位置は?
たぴみる:いま活躍しているアニソンシンガーの方は個人的にも好きな方ばかりなので、勝負だなんてそんな……(笑)。良いところを吸収しつつ、独自の立ち位置を探していけたらと思います。色んな喜怒哀楽を表現できるようになりたいですし、「アニソン=アニメ好きしか聴かない」というイメージを覆したいですね。アニメを知らない人が聴いても「おっ、この曲良くない?」と思ってもらえるようなうたを歌っていきたいです。あと、アニメとJ-POPの中間くらいの音楽で、橋渡しをする役にもなりたい。最近はアニメを見ていることに対してそこまで偏見もなくなってきたので、自分の歌をきっかけにアニメを見てもらえたりしたらより嬉しいです。ちょっとイケてるしオシャレだけどアニソン、という立ち位置になれたらいいなと思います。
ーー先日公開された「発見者はワタシ」のMVが、まさにその中間地点を上手く突いているような気がします。監督はBUMP OF CHICKENやぼくのりりっくのぼうよみなど、数々のアーティストのMVやCM、ライブの演出を手がけている東市篤憲さん(A4A)で、演出は縷縷夢兎デザイナーの東 佳苗さん、脚本は大学生映画監督として注目を集める松本花奈さんが担当して、『ミスiD2016』グランプリ受賞の女優・保紫萌香さんが主演、アリスムカイデさんやYESBØWYさんも出演されていますよね。
たぴみる:まさにそうですね。撮影現場がすごくオシャレで「住み着きたい!」と思いましたし、セットの片付けを見ながら「ここはセロハンで出来てるんだ……」と凝視していました(笑)。
ーーメジャーデビュー後も動画投稿は続けていく予定ですか?
たぴみる:もちろんです。ファンの方との交流は続けていきたいです。「インターネットから出てきた」というのは、良いイメージも悪いイメージも持たれるのですが、それでも原点なので、意地でも執着していたいし無かったことにはしたくないんですよね。たまにキャパオーバーにもなるけど、ネットかリアルかじゃなくて、どっちにも手を抜かずにやっていきたいです。欲張りなので(笑)。
(取材・文=中村拓海/撮影=三橋優美子)
■リリース情報
『発見者はワタシ』(TV アニメ『ゼロから始める魔法の書』OP テーマ)
発売:2017年5月24日(水)
価格:1,300 円(税抜)
<収録内容>
1.発見者はワタシ
2.こころスタート
3.心情コンプレックス
4.発見者はワタシ(Instrumental)
5.こころスタート(Instrumental)
6.心情コンプレックス(Instrumental)
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