森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.48
西野カナ、あいみょん、Aimer……新しい価値観を打ち立てる女性アーティストたち
“ファンはアーティストを映す鏡”という言い方に象徴されるように、ファンとアーティストの間には、価値観、美意識などが共有されていることが多い。そこで今回は、リスナーのライフスタイル、考え方などに影響を与えるパワーを持った女性アーティストの新作を紹介したい。
“会いたいのに会えない”から“大好きな彼と(いろいろ不満はありつつも)一緒にいられる”ようになって、さらに大切な親友が結婚することになりーーと歌の内容が変化している西野カナのニューシングル『パッ』は、彼女と同年代の女性に向けたメッセージソング3曲を収録。タイトル曲「パッ」は“毎日仕事で忙しいし、休みの日は掃除だけで終わっちゃうけど、たまにはパッとしたい!”という人たちに向けたストレートな応援歌。2曲目「27」はタイトル通り、“思い描いていた大人とはちょっと違うけど、やっぱり好きなことをやりたいし、なんとなく幸せにもなりたい”という27歳(本作の制作時、彼女は27歳だった)の心境を描いたナンバーで、3曲目の「Work」は仕事の大変さとストレスをリアルに綴ったダンスチューン。“どんなリスナーにどんな歌を届けるべきか”という絞り込みの正確さこそが彼女の強味なのだと改めて実感させられるシングルだ。
元タワーレコード渋谷店の店員で、海外のインディーポップにも詳しいSakuは“キュートなサブカル女子”というイメージもあるシンガーソングライターだが、4枚目のミニアルバムとなる本作『KENSAKU E.P.』では、SNSやLINEに振り回されながら、疑心暗鬼になってしまう女の子の“イタさ”を見事に描き出している。リード曲「検索」は、Facebookを検索して“あの子のページに君との写真がアップされてた”ことを発見し、1人で悶々と気にしてしまう女子が主人公。“1分前にはログインしてたのに、メールの返事が来ない”という状況や“SNSには載ってない君を知りたい”という切実な願いに強く共感してしまうリスナーは間違いなく多いはず。こういう歌を洋楽テイストのポップなサウンドに乗せて軽やかに表現できる、つまり、ネガティブな部分を明るく打ち明けられるところも彼女の魅力だろう。
昨年11月にリリースされた1stシングル『生きていたんだよな』で自らの死生観を生々しく歌い上げ、音楽ファンに強烈なインパクトを与えたあいみょん。“自意識に苛まれた青春像を赤裸々に描き出すシンガーソングライター”というイメージを気持ちよく裏切ってくれるのがメジャー2ndシングル『愛を伝えたいだとか』である。主人公は、好きな女の子になかなか会えず、<愛を伝えたいだとか/臭いことばっか考えて待ってても/だんだんソファに沈んでいくだけ>と独り呟く男子。性別を超えて客観的な視点から描かれたこの曲を聴けば、彼女に備わった優れた作家性を感じてもらえるはず。ソウル、ファンクのテイストを取り入れたサウンドメイク、グルーヴ感のあるボーカルも、彼女の幅広い表現力を伝えている。