西野カナが歌い続ける、女の子の強さーー“もう一つのベストアルバム”の歌詞とサウンドを読み解く

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 同年代の女性から絶大なる支持を集める、なんて枕詞は陳腐に感じるほど、西野カナが書く歌詞が持つ魅力はすでに周知の通り。ただ、歌詞の魅力を語る際には、スウィートな女子的恋愛楽曲をイメージする傾向が強いのでは? 一方、今回発売となった西野カナの「裏」ベストとも言うべき『Secret Collection ~RED~/~GREEN~』に纏められた歌詞や楽曲へのアプローチ方法に着目していくと、これまでの「表」のイメージとは異なる西野カナ像が見えてくる。

 改めて一聴して深く印象に残るのは、“女の子ならではの強さ”を強調している点だ。「GIRLS GIRLS」は〈So Strong Baby Let you know 本当の私を見せてあげる Let it go!〉〈We don’t have to cry no more!〉と強気な面を見せているし、「UNZARI」では〈面倒くさいこともういい Please follow me trust me〉〈I am free もうやってらんないわ〉と思いっきり扇動的に歌い、さらには〈盛り上がるんなら #ヤッチャイタイ〉と、自身が敬愛するというMINMIにオマージュを捧げる秀逸なラインも。タイトルからしてコントロヴァーシャルな「Shut Up」では、ウルさい外野に〈My middle fingers in the air〉させる場面(!)もあり、マイリー・サイラスも顔負けのイタズラなアティチュードに思わずニヤリとするほどだ。

 また、「This Is Love」で歌われる〈こうなれば、わざと嫉妬させちゃう? 私にだって誘いの一つくらいはあるんだし。〉といった歌詞や、「Abracadabra」で登場する〈ナチュラルなまつげと清楚なフレアskirt〉から〈赤いLIPS 派手目なキラキラNAIL〉に〈変幻自在のマジック〉のようにルックスを変化させて〈Dan Dan あなたは恋したくなる〉といった挑発的な歌詞も、恋愛に対して強気な姿勢が伺えて頼もしい一面を覗かせる。「Secret」で歌われる〈Nothing but a makin' 巧妙なALIBI〉〈メール送るにも計算が必要〉なんて箇所は、恋愛に対する彼女の意外な姿勢を感じずにはいられない。こうした積極的な恋愛テクニックを歌う歌詞は、カーリー・レイ・ジェプセン「Call Me Maybe」あたりを彷彿とさせるかも。

 そして、本ベスト盤で気づかされるもう一つの西野カナの魅力、それはパーティーメーカーとしてのそれだ。「Clap Clap!!」 や「This Is How We Do It」 、「Every Boy Every Girl」では〈このまま土曜の街へオシャレしてでかけよう〉、〈ルールなんてBreak It 感じたままShout It〉と、西野カナ流に毎日を“アゲて”いくティップスをちりばめながらリスナーの心をとことん盛り上げていく(〈M.I.E to da 03〉と、自分の出自を主張するラインはラッパー顔負け!)。トラップやダブステップ、最先端のEDM調のスパイスを散りばめたトラックや、ときにラップするようなフロウも相まって、もはやその姿は、可憐な女性シンガーソングライターというよりは、リアーナらを彷彿とさせるような一端のポップ・ディーヴァだ。

 一方では、「25」で歌われる〈久々の友達からメール 結婚するの来月 もうそんな時期〉〈独りぼっちになりたくないの でもまだまだ自由でいたいの〉というラインや「Sherie」で表現される〈何かしたい 何もできない あきらめちゃ始まらない あの頃のキラメキ 忘れてしまったの?〉〈こんな自分を変えたい〉といった箇所には、大人の女性へと成長していく過程にある、等身大の女の子の素直な気持ちが歌われる。ポジティブな側面だけではない、パーソナルな悩みを吐露するような一面も、西野カナが紡ぐ歌詞の魅力の一つだ。同時に「Brand New Me」で歌われる〈今日は女同士 溜まりに溜まった話を エンドレスでGirl’s Talk〉〈積もりに積もった想いを エステで全部デトックス〉といったラインではしっかりと女子たちを鼓舞する演出だって忘れない。

 アメリカのポップ・チャートを見れば、アリアナ・グランデやテイラー・スウィフト、リタ・オラといった、若く、そして美しいディーヴァたちが最新のサウンド・アプローチを携えて快進撃を続けている現状を伺うことができる。同年代のヒップホップ・スターを迎えてみたり、最先端のクラブ・ミュージックを取り入れてみたり、彼女たちにとって、そうした多彩なアプローチはごく自然なもの。さらには誰にも媚びないような強気な歌詞だってバンバン飛び出してくる。『Secret Collection ~RED~/~GREEN~』に収録された全30曲を聴くと、そうした洋楽のポップ・アーティストの潮流ともリンクする指向性、それに、これまでチャートインしてきた楽曲だけからは伺い知ることのできなかった西野カナの貪欲なアーティスト性を感じることができる。

 その点においては、もともと洋楽やヒップホップ楽曲を好んで聴いていたと語る彼女のバックグラウンドが、自然な形で表現されているのかもしれない。柔軟性に富みつつ自身の表現力を試していこうとする様子は、誰にとっても新たな発見となるはずだ。また、リスナーにとっても、西野カナのこうした楽曲を通じて、より幅広くポップ・ミュージックを楽しむ動機になればとも思う。2008年のデビュー以来、自分のオリジナリティを追求して走り続けてきた彼女だが、次回、もしも裏ベスト・アルバム第二弾がお披露目になる頃には、もっと意表を突いてくる楽曲が増えているかも!? これからも、どんどんチャレンジングな表現方法に挑んでほしいと願うばかりだ。
(文=渡辺志保)

■リリース情報
『Secret Collection ~RED~』
発売:2015年11月18日
【初回生産限定盤】
¥3,694(税抜)
・初回生産盤特典
①スペシャルオリジナルジャケット&三方背BOX
②「Kanayan X'mas Special ~wish & real~」 -Digest-DVD付
③「Kanayan X'mas Special ~wish & real~」オフィシャルフォトブック付
④スペシャルグッズ抽選応募ハガキ封入
【通常盤】
¥2,870(税抜)

『Secret Collection ~GREEN~』
【初回生産限定盤】
¥3,694(税抜)
・初回生産盤特典
①スペシャルオリジナルジャケット&三方背BOX
②「Halloween Collection」 -Digest-DVD付
③「Halloween Collection」オフィシャルフォトブック付
④スペシャルグッズ抽選応募ハガキ封入
【通常盤】
¥2,870(税抜)

・配信情報
アナザーサイドオブベストアルバム「Secret Collection~RED~/~GREEN~」着うたフル、iTunes、moraも配信中
≪レコチョク 着うたフル≫
『~RED~/~GREEN~特設ページ』http://recochoku.com/sp/nishinokana/

≪iTunes≫
https://itunes.apple.com/jp/artist/id410542403?app=itunes&at=10lpgB&ct=70005022_wn

≪mora≫
http://mora.jp/artist/11328/m

※新曲「No.1」(日本テレビ系連続ドラマ『掟上今日子の備忘録』主題歌)は『Secret Collection ~GREEN~』に収録

■西野カナ・オフィシャルホームページ:
www.nishinokana.com

■「Secret Collection ~RED~/~GREEN~」特設サイト:
http://secret-collection.com/

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