『25th L'Anniversary LIVE』レポート
L'Arc-en-Ciel結成25周年ライブで感じた、最大公約数としての“ラルクらしさ”
ライブは中盤に突入すると、ステージの一部がそのままムービングステージとしてアリーナ後方に移動。しかもそこで演奏されるのが、久しぶりにライブヴで披露する「風の行方」と、モダンなR&B調アレンジが印象的な「X X X」なのだから、メインステージから離れた席のファンにとっては至れり尽くせりのサービスと言っていいだろう。
再びメインステージに戻った4人は「花葬」「浸食 -lose control-」「HONEY」という、1998年7月に3枚同時リリースされたシングルナンバーを立て続けに披露。そこから「MY HEART DRAWS A DREAM」「NEO UNIVERSE」と2000年代のキャッチーなシングル曲を連発していく。
と、ここであらためて気づかされたことがある。この日のセットリストはバンドの歴史上前半にあたる1994年から2004年までの楽曲が中心で、意外にも近年のナンバーは「X X X」(2011年)と「Don't be Afraid」(2016年)の2曲のみ。これが何を意味するのかはメンバー4人のみぞ知るといったところかもしれないが、筆者はこの“1994年から2004年まで”、つまりアルバムでいうならメジャー1stアルバム『Tierra』(1994年)から『SMILE』(2004年)までの期間こそがバンドの考える“ファンが求めるL'Arc-en-Cielらしさ”を体現しているのではないかと推測している。もちろんそれ以降のシングル/アルバムもL'Arc-en-Cielそのものだが、最大公約数としての“ファンが求めるL'Arc-en-Cielらしさ”はこの日のセットリストにあったのではないだろうか。そう思わずにはいられないほど、潔い選曲だったと認識している。
ライブ終盤は「STAY AWAY」「Driver's High」「READY STEADY GO」という、L'Arc-en-Cielのライブを盛り上げるのに欠かせないアップチューンを連発。小休止を挟んでから、非常にムーディーかつ独特の世界観が確立されている新曲「Don't be Afraid」、新旧のライブ定番曲「Blurry Eyes」「Link」をドロップしていく。ライブも1曲を残したところで、hydeは「苦しいこともあったけど、みんなの今日の笑顔に報われます。この笑顔に出会うための道のりだったんなら、悪くない道のりだと思います」と25年を振り返り、ラストナンバーとして極上のバラード「瞳の住人」をプレゼント。ステージ上空からは羽が舞い、アリーナに向けてシャボン玉が飛ばされる幻想的な雰囲気の中、3時間30分にわたる25周年ライブヴは無事幕を下ろした。
残念ながらこの日のライブでは、今後の活動について一切アナウンスがなかったL'Arc-en-Ciel。hydeが「Driver's High」の歌詞で、最後の1行にある「来世でまた会おう」というフレーズを「最高のフィナーレを」と変えて歌ったところに、もしかしたら「まだまだ終わらないし、終われないから。これからも続くよ!」というメッセージが込められているんじゃないか……と邪推するのはファンの悲しい性だろうか。なんにせよ、このスーパーバンドの次のアクションを心待ちにしたい。
(写真=今元秀明/岡田貴之/緒車寿一/加藤千絵/田中和子)
■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。
■L'Arc-en-Ciel『25th L'Anniversary LIVE』 4月9日セットリスト
01. 虹
02. Caress of Venus
03. the Fourth Avenue Café
04. Vivid Colors
05. Lies and Truth
06. 真実と幻想と
07. forbidden lover
08. Shout at the Devil
09. REVELATION
10. 風の行方
11. X X X
12. 花葬
13. 浸食 -lose control-
14. HONEY
15. MY HEART DRAWS A DREAM
16. NEO UNIVERSE
17. STAY AWAY
18. Driver's High
19. READY STEADY GO
20. Don't be Afraid
21. Blurry Eyes
22. Link
23. 瞳の住人