杉山仁の『Billboard Japan Hot100』チャート分析
『三太郎』新CM、『カルテット』最終回、欅坂46新曲……話題の出来事はチャート順位にどう影響?
フィジカル作品の売り上げに加えて、ラジオオンエア数やダウンロード/ストリーミング数、動画再生回数、PCへの取り込み数、Twitterのつぶやき数などを合算するビルボードジャパンチャート。2017年4月3日付(集計期間:3月20日〜3月26日)では、橋本奈々未の卒業&デビュー5周年を迎えて新たなスタートを切った乃木坂46の「インフルエンサー」が1位、K-POPグループSNUPER の「Oh yeah!!」が2位と、上位はフィジカルの売り上げに基づいたオリコンチャートに近い結果となっています。とはいえ、続く3位は動画再生回数で他を大きく引き離した星野源の「恋」。これには楽曲のロングヒットに加えて卒業式/歓送迎会シーズンに「恋ダンス」への熱がふたたび高まったことも関係しているはずで、メディアミックス型の楽曲人気やリリース日に限定されない世間の関心が反映されやすいこのチャートならではの結果と言えるでしょう。
そうした意味で注目したいのは、この週4位に初登場した俳優・菅田将暉のCDデビュー曲「見たこともない景色」。桐谷健太による「海の声」が昨年日本レコード大賞の優秀作品賞を受賞したことも記憶に新しいauの『三太郎』シリーズですが、サッカー日本代表を応援する新CMに起用されたこの楽曲は、作曲を飛内将大が、作詞を篠原誠が担当。熱量全開のギター・ロック・サウンドと菅田将暉(鬼ちゃん)の熱い歌声が日本代表を鼓舞する雰囲気で、サッカー男子W杯アジア最終予選のUAE戦の放送も相まって、6月の発売に先駆けて大きな話題となりました。同じくメディアミックス型のヒット曲では、TVドラマ『カルテット』の主題歌、Doughnuts Hole「おとなの掟」も最終話放送を受け5位に順位を上げています。
一方、フィジカル盤の発売を迎えた楽曲では、フィジカル、ラジオ、ストリーミング/ダウンロード、SNSでバランスよくポイントを獲得したBiSHの「プロミスザスター」にも注目したいと思います。フィジカル主導で売れることが多いアイドル作品にあって、この楽曲はダウンロード/ストリーミングでも9位を獲得。コアファンを超えた幅広いリスナーからの注目度がうかがえます。実際、「プロミスザスター」はパンク~ハードコア色の強かった彼女たちがよりポップの王道へと突き進む契機となった2016年の楽曲「オーケストラ」の延長線上にあり、パンキッシュでありながらメロディやストリングスの存在感が間口の広さを加えています。ハスキーな歌声を持つアイナ・ジ・エンドがTeddyLoidの「TO THE END feat. アイナ・ジ・エンド(BiSH)」に参加するなど、ポップとエッジを横断する雰囲気を武器に、グループは7月の幕張メッセ公演に向けてますます勢いを増しそうです。
また、来週以降のチャートに向けて今から注目しておきたいのは、4月5日にリリースを控える欅坂46の「不協和音」。リリース前ながら登場2週目にして17位とランクを順調に上げています。このチャート動向を支えているのは総合1位の乃木坂46を抑えてトップとなったSNSのポイントで、3rdシングル曲「二人セゾン」でぐっと表現を成熟させた彼女たちが、EDMを基調にした楽曲でふたたびデビュー時を髣髴させる強いメッセージを打ち出したことが話題になった結果と言えるはず。その余波を受け、「不協和音」がランクインする以前の先々週は33位だったデビューシングル曲「サイレントマジョリティー」も24位に順位を上げています。デビュー1周年を目前に控え、「今最も勢いのあるアイドルグループ」となった彼女たちへの関心の高さを感じさせるチャート・アクションです。
■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。